2月6日のNHKニュースによると、去年1年間に都内で発生した振り込め詐欺の被害額は87億円余りで、前年を6億円も、上回っています。金融機関の職員が詐欺だと見抜いて声をかけることで、被害を防いだ例が話題になりますが、他方で、思いとどまらないまま、現金をだまし取られている実態がなまなましく伝えられています。
・・調布市に住む70代の女性は、去年3月、おいをかたる男から「かばんをなくし、現金が必要になった」とオレオレ詐欺の電話を受け、現金400万円をだまし取られました。現金を引き出しに訪れた銀行の窓口では、顔見知りの行員が繰り返し現金の使いみちを確認してきたということです。
女性は、行員がオレオレ詐欺の可能性を疑っていると感じ、とっさに「おいのため」という使いみちを隠し、「一緒に暮らす孫のために家を改修する」とうそをついて現金を引き出したということです。
女性は「振り込め詐欺の手口はよく知っていたし、自分は絶対にだまされないと思っていました。現金を下ろしたときも、まさか自分がだまされているとは思わず、止められないようにと、必死で演技をしていました」と話しています・・
「再チャレンジ」カテゴリーアーカイブ
行政-再チャレンジ
暴力団排除が生む新しい危険
朝日新聞1月29日オピニオン欄、柳原三佳さん(ノンフィクション作家)の発言「車の保険、組員排除は危険」から。
・・自動車保険の約款に、暴力団員と契約しないという条項を加える損保会社が増えています。任意保険に入らないままハンドルを握る組員に事故を起こされたらどうなるのか。被害者救済という観点から、多くの問題があると言わざるを得ません・・
例えば信号待ちで停車中、無保険の組員に追突されてしまったとします・・このケースでは、被害者が直接、保険を使えず自腹を切ることになる組員と交渉することになりますが、それがいかに困難であるかは明白です・・
損保会社が、暴力団による保険金詐欺を防ぎたいという事情も、悪質な運転で事故を引き起こすような組員に保険金を支払いたくないという気持ちも理解できますが、被害者救済のためにも、対人・対物といった賠償保険だけは引き受けるべきです。保険から暴力団を徹底的に排除するのであれば、その前に、組員に免許を与えない、車を売らない、車検も通さないという取り組みをすべきでしょう。順序が逆です・・
3年以内に、半分が辞める会社
厚生労働省の調査で、大学を卒業して就職後、3年以内に仕事を辞めた人の割合は31%で、業種別では宿泊業や飲食サービス業で51%ということを、NHKニュースが伝えていました。すみません、厚労省の基礎資料のページを見つけることができませんでした。
教育・学習支援業が49%、生活関連サービス業・娯楽業が45%です。3分の1の人が、さらに業種によっては半数の人が、3年以内に辞めているということです。
従業員に問題があるのか、会社側に問題があるのか。この数字をみると、会社が若手職員を「使い捨てにしているのか」と、疑いたくなります。正規職員といいながら、期限付きのアルバイトと同じです。これは、本人にとっても、社会にとっても、大きな損失です。
一方、離職率が低かったのは、電気・ガスで9%、鉱業・採石業などで14%、製造業が18%です。「やってみたら、合わなかった」ということはあります。
引きこもり対策
9月18日の朝日新聞オピニオン欄は、「引きこもり1割の町」という表題で、秋田県藤里町の社会福祉協議会事務局長さんのインタビューでした。
「町内の現役世代の1割近くが引きこもり」という実態調査を公表したのです。
・・藤里町は決して、引きこもりが多い町ではありません。注目を集めているのは、引きこもりの実態をここまで調べた市町村が他にないから。他の自治体でも、実は同じぐらいの比率でいるのかもしれません。
引きこもり、というと「部屋から一歩も出られず、家族とさえコミュニケーションできない」と思われがちですが、実際にはそうした人は少数ですし、福祉よりもまずは治療が必要です。私たちが働きかける人々の多くは、そういうイメージでは捉えきれない人です・・
ぜひ、原文をお読みください。
私は、これからの行政の対象は、物ではなく人の関係が課題になると考えています。拙著『新地方自治入門』でも書きましたが、特にそれを強調したのが、拙稿「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」(月刊『地方財務』2007年8月号)です。引きこもりやニートを考え、学校に行かない・行けない若者や会社に属さない人たちに対して、日本の行政が冷たいことに気づきました。「勝ち組」を育てる仕組みが中心で、そこから漏れ落ちた人「負け組」には冷たいのです。
学校になじめず、退学すると、教育委員会も町役場も相手にしてくれません。次に関わるのが警察では、あまりにその間が広すぎます。
記事にも出てきますが、「地域若者サポートステーション」という支援の仕組みがあります。厚労省のサイトの下に概念図が出ています。行政の各機関が民間団体と協力して、一人の人を支えるのです。私は、これからの行政の一つの「かたち」だと考えています。まだあまり知られていないようですが、これから重要な行政分野になるでしょう。
非行少年
9月6日朝日新聞オピニオン欄、「非行少年に寄り添う」。弁護士の多田元さんの発言から。
「少年犯罪は年々、凶悪化しているように見えます」という問に対して。
・・家庭裁判所に殺人罪で送致された少年は戦後のピークだった1961年は396人です。いまは年間40人前後。ここ何年か変わっていないから、データでいうと凶悪化とは言えません。メディアの影響が大きいですね。かつては日常的な事件として報道されていましたが、いまは事件が起こると、その報道で埋め尽くされ、凶悪さが社会に印象づけられています。それが厳罰化を望む声につながっていると思います・・
・・男子高校生が、カッターナイフで同級生の顔面を切りつけた事件がありました。逮捕され、鑑別所に入った少年が、家裁の調査官の面接で「謝りたくない」と話して、反省していないとされました。付添人になって何回目かの面会で「謝るのが怖かった」と話してくれました。「謝って許されて学校に戻ったらもっといじめられると思った」とも。少年はひどいいじめを受けていました。いじめの中心人物をやっつければ逃れられると、切りつけたのです・・