1月18日付の各紙が、2012年の年間の自殺者が3万人を下回ったことを、伝えていました。2011年に比べ、約9%の減少です。1998年に3万人を超えてからなので、14年間3万人を超えていました。このHPでも、毎年、紹介していました。まだまだ、多いことに変わりはありません。自殺は理由が単純ではなく、対策は難しいです。そして、お金とブルドーザーがあればできるものではありません。人と人とのつながりであり、継続した関わりが必要です。
自殺は、社会の状況を反映した指標です。結婚しない人や子どもを作らない人が増えていることも、若者が社会に対する信頼を失っているからだと思います。どのような社会を作るか。私たちの努力が、問われています。
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行政-再チャレンジ
国際的な社会のリスク
1月9日の日経新聞夕刊が、世界経済フォーラム(ダボス会議)が「2013年版グローバル・リスク」をまとめたことを、伝えていました。
この報告書では、経済、環境、地政学、社会、科学の5分野で、それぞれリスク要因を挙げて、その影響の大きさと可能性を数字で表しています。リスク要因としては、慢性的財政赤字、所得格差、地球温暖化、気候変動への対応、テロ、国際ガバナンスの失敗、水や食糧不足、高齢化、宗教対立、重要システムの故障、サイバー攻撃などが挙げられています(報告書p4)。
個人のリスクは各人が予防し、さらに共助や公助で救います。国家内のリスクは、各国政府が責任を持ちます。国境を越えたリスクを、どう予防し管理するか。
そこには、気候変動や伝染病といったそもそも国境のないリスク、テロやサイバー攻撃のように国境を越えるリスク、戦争のように国家が起こすリスク、財政危機や金融危機のように他国に影響を与えるリスク、食糧不足や高齢化といった各国に共通するリスクがあります。そして、科学技術の進歩と経済のグローバル化が、各国を相互依存させ、リスクを拡散しやすくしています。
連載「社会のリスクの変化と行政の役割」では、国際的リスク管理は、ひとまず対象外にしたのですが。
地域包括ケア
第6回復興推進委員会の議論の中で、高橋紘士先生の「地域包括ケア」についてのお話が、勉強になりました。詳しくは資料(特にp2~6)を見ていただくとして、私が理解したことは次の通りです。
「地域」ということは、施設に入れて社会から切り離すのではなく、地域でみんなと一緒に支え合うことです。施設に入れてしまうと、社会から排除し、本人もやる気がなくなってぼけます。集中・排除型でなく、分散・溶け込み型です。
「包括」ということは、介護だけでなく、医療、そしてその前の保健・予防が一体となって支援することです。
さらにその際には、介護保険、病院、医療保険、検診といった「制度による支援」だけでなく、「その下」にインフォーマルな支援が必要です。先生がおっしゃったのは、「公的な制度が成り立つ前提には、親密性が必要である」「公助の前に、互助・共助が必要」ということでした。
互助はどのようにして作るかという点について、「互助は作るものではなく、生まれるものである。生まれるように誘導することだ」という発言にも、納得しました。
ところで、地域包括ケアの趣旨は、介護保険法に定められています。いずれ、「地域包括ケア法」あるいは「基本法」が必要なのでしょうね。
第5条第3項 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない。
パワハラの実態調査
厚生労働省が、12月12日に「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」報告書を公表しました。各紙が伝えていたので、ご覧になった方も多いと思います。
過去3年間にパワハラを受けた人は、25%に上っています。その内容は、精神的な攻撃、過大な要求、人間関係からの切り離し、個の侵害などです。具体的には、ひどい事例が並んでいます。
皆の前で大声で叱責。物をなげつけられる。ミスを皆の前で大声で言われる。就業間際に過大な仕事を毎回押し付ける。一人では無理だとわかっている仕事を一人でやらせる。挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった。プライベートな事を聞いてきたり、相手は既婚者であるにも関わらず独身の私にしつこく交際を迫ったなど(概要版p8)。
そのほかに、過小な要求(従業員全員に聞こえるように、程度の低い仕事を名指しで命じられた。草むしり)もあります。身体的な攻撃(胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げられた)に至っては、犯罪行為でしょう。
8割は上司から部下への行為ですが、部下から上司へが1%あります。
パワハラが発生する職場は、上司と部下のコミュニケーションが少ない職場や、正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場、残業が多い・休みが取り難い職場です。
2011年に労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」相談件数は、約4万6千件。2002年の7倍になっています。新しい職場での人間関係リスクが、認識されるようになったということでしょう。問題がわかれば、手を打つことができます。もっとも、これら家庭や職場の人間関係の問題に対しては、国による即効性のある対策は難しいです。
家庭内暴力、引きこもり、セクハラ、パワハラなど、家庭や職場の問題が、社会の問題だと認識されたということです。私は、これらを「社会関係リスク」としてとらえています。そして、政府と行政が取り組まなければならない、新しいフロンティアです。
小中学生の発達障害
小中学校の通常学級に在籍する生徒のうち、発達障害の可能性のある生徒がや6.5%いることが、文部科学省の調査でわかりました。6日の各紙が伝えています。全国で推計すると約60万人、40人学級だと1クラスに2~3人いることになります。2002年の調査でも6.3%でしたから、ほぼこれくらいいると考えられます。
この子どもたちは、「書く」「聞く」「計算する」の学習に困難を示す学習障害、注意力の欠如や衝動性といった注意欠陥多動性障害、知的発達に遅れのない高機能自閉症などです。なぜか、男子では9%、女子では4%です。
この問題について、これまでどのように対応してきたのでしょうか。また、この子たちは、成人してからどのような暮らしをしているのでしょうか。他人とのコミュニケーションがうまくいかないと、暮らしにくいです