「著作と講演」カテゴリーアーカイブ

講義「復興とまちづくり」

今日6月26日は、市町村アカデミーで「復興とまちづくり」を講義しました。これは「人口減少時代の都市計画」の一コマです。
ほかの先生とは少々変わっているのですが、東日本大震災の経験を元に話しました。人口減少下での本格的な町の復旧としては、初めてのことでした。公共インフラと住宅を復旧しただけでは、町のにぎわいは戻りませんでした。そして、元に戻すと無駄が生じました。
私の経験は大災害からの復興ですが、各地では緩慢な減少と消滅が起きています。その参考になると思います。

私はこの仕事に携わった当初、「白地に絵を描くので、自由に町をつくることができる」「関係者が腕を振るえる、めったにない機会だ」と思いました。かつて人口が増加した時代に、大都市周辺に「ニュータウン」をつくったことを思い浮かべたのです。しかし実際は、全く違いました。
1 制約条件が厳しいのです。平野は少なく、また町役場にも絵を描ける人材はいません。
2 かつてのニュータウンは「ベッドタウン」で、住まいをつくったのです。町をつくったのではありません。勤め先も買い物も、鉄道に乗って出かけていけば良かったのです。
3 小さな集落を個別に復旧することは、くらし勝手も良くなく(商店、学校、病院がない)、近い将来に消滅することが見込まれます。それなら、集約したほうが、良かったと反省しています。
朝日新聞オピニオン欄「人口減時代の防災・復興」に載りました」「ヤフーニュースでの発言「能登地震の復興は東日本に学べ」」「復興事業の教訓、集落の集約」「復興事業の教訓、人口の減少

コメントライナー寄稿第23回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第23回「日本の政治はなぜつまらないのか」が6月19日に配信され、24日にはiJAMPにも転載されました。

毎日、報道機関が政治情勢を伝えます。でも、内容は面白くないと思いませんか。政治家や報道機関は熱意を持って語りますが、多くの国民は関心を持たずにやり過ごしているようです。はっきり言って、日本の政治と政治報道はつまらないのです。

政治とは、意見の異なる人たちが対決と協議をして、結論を導く過程です。ところが日本では、自民党と官僚が「密室」で政策を決めてしまい、その過程が国民に見えません。国会では、質問は事前に通告され、官僚が用意した資料をもとに閣僚は回答します。しばしば「激しい論戦が…」と報じられますが、ほとんどの場合、結果は見えています。
民主主義は、国民という観客の興味を引きつけ支持を得ることが必要で、そのためには演技も必要になります。ところが、そのような場面が少ないのです。

政治家が、夢のような演説や公約をすることもありますが、たいてい実現手法も財源も示されず、願望の総花的な一覧表に近いものです。国民は、その非現実性を見抜いています。「改革」を主張しても、具体的に何を切り落とすのかを示しません。しかし、痛みのない改革はあり得ません。国民は訊きたいのです。「どこを切るのですか」「減税の財源はどこにあるのですか」「赤字国債で将来の国民にツケを回すのですか」と。報道機関も、質問してください。

立命館大学講義2

立命館大学講義」の続きです。出席した学生からの感想文と質問に目を通し、回答を大学に送りました。100人近くの学生、それも多くの人は長文で書いています。全てに目を通すのに、時間がかかりました。

私の伝えたかったことが学生に伝わっていて、うれしかったです。そのほか、次の話が多くの学生に響いたようです。
・公務員に必要な3つの資質(体の健康、心の健康、人付き合い)
・新聞を読むことの意味(ニュースを知るのではなく、たくさんあるニュースの中から重要度を知る、興味のないニュースを知る、解説に意味がある)

次のような感想もありました。少し改変して載せておきます。
「公務員とは事務室で机に向かっているだけと思っていたのに、違うのですね」「公務員の仕事に対する印象がすっかり変わりました」「より一層、公務員になりたくなりました」
「言われたことだけをするのではなく、何か付加価値をつけることの重要性を知りました。今やっているアルバイトでも実践します」
「アルバイト先で店長から叱られ、やめたいと思うことことがありますが、それも精神力を鍛える訓練の場と思って頑張ってみます」
「出社恐怖症になったという話が印象に残りました」

連載「公共を創る」目次9

目次8」から続く。「目次1」「目次2」「目次3「目次4」目次5」「目次6」「目次7」「全体の構成」「執筆の趣旨」『地方行政』「日誌のページへ

6月26日 226政府の役割の再定義ー政治家と官僚の関係
7月3日 227政府の役割の再定義ー官僚の意見を聞かない「政治主導」
7月10日 228政府の役割の再定義ー異論に耳を傾けることの大切さ
7月17日 229政府の役割の再定義ー英・独に学ぶ官僚の中立性確保
8月7日 230政府の役割の再定義ー上司・部下の関係と公務員のやりがい
8月21日 231政府の役割の再定義ー遅過ぎる質問通告、多過ぎる質問主意書
8月28日 232政府の役割の再定義ー「やりがい」低下の原因
9月4日 233政府の役割の再定義ー首相を支える事務秘書官の仕事
9月11日 234政府の役割の再定義ー「内閣官僚」の育成を
9月18日 235政府の役割の再定義ー現在の政党の機能不全
10月2日 236政府の役割の再定義ー成熟社会における対立・亀裂
10月9日 237政府の役割の再定義ー官僚の使い方
10月16日 238政府の役割の再定義ー議員と官僚、公的な「組織と組織」の関係に
11月6日 239政府の役割の再定義ー制度改革では実現していない政党間の政策競争
11月13日 240政府の役割の再定義ー新自由主義的改革の功罪
11月20日 241政府の役割の再定義ー行革の成功に伴う負の遺産
12月11日 242政府の役割の再定義ー
12月18日 243政府の役割の再定義ー
12月25日 244政府の役割の再定義ー
(2026年)
1月8日 245政府の役割の再定義ー
1月15日 246政府の役割の再定義ー
1月22日 247政府の役割の再定義ー

連載「公共を創る」第225回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第225回「政府の役割の再定義ー政治家に求められる能力」が、発行されました。政治家による政策議論について、国会が本来期待される機能を果たしていないことを指摘しています。

社会では、絶えず問題が生まれます。それを、「誰がどのように、そしてどの方向に解決するか」。家族と親族、企業、地域社会、中間団体、宗教、慈善活動やNPO、そして地方議会、国会、行政、司法のうち、誰がまずは責任を引き受け、誰と誰が発言し行動するのか。誰も引き受けない場合、あるいは意見の対立が解消しない場合は、最終的に誰が解決するのか。国によって、解決する主体、あるいは解決することを期待される主体が異なり、またそれら主体の力関係が違います。
同じ近代民主主義国、資本主義自由経済国家であっても、英国、フランス、ドイツ、米国、そして日本は、よってきた歴史と社会が異なり、「国のかたち」が違います。これを考えるのに役立つ書物が、近藤和彦著「イギリス史10講」(2013年、岩波新書)です。英国では、議会が解決の場であるだけでなく、主体になるようです。この本については、このホームページで、たくさんの論点に分けて紹介しました。「覇権国家イギリスを作った仕組み」~「覇権国家イギリスを作った仕組み、9」。番外も「覇権国家イギリスを作った仕組み、12

日本の国会においては、異なる意見や利害を議論して調整することが少ないと指摘しました。では、どこで調整しているのでしょうか。実態として、日本では、内閣、その中でも各省の官僚機構が解決主体として働くものと期待されているようです。
官僚に求められる能力と現実の問題について述べたので、政治家に求められる資質についても書いておきました。

これで、「政治の役割」のうち、「政治主導の在り方」を終えて、次回からは「政治家と官僚の関係」に入ります。