「著作と講演」カテゴリーアーカイブ

連載「公共を創る」6年

公共を創る」の連載が丸6年になり、7年目に入りました。
第1回は、2019年4月25日でした。今年4月17日で第220回になりました。よく6年も続いたものです。月に3回(当初は毎週)、毎回の紙面では4ページ、文字数にして6800字余りです。自分で自分を褒めてやりたいです。いつも同じことを言っていますね。
資料提供など協力をいただいた、たくさんの人に感謝します。右筆さんの毎回の厳しい朱入れがなければ、できませんでした。

こんなに長くかかるはずでは、なかったのですが。全体構想では、もう少しで完結する予定です。「連載「公共を創る」5年

と書いたら、肝冷斎に「石の上にも6年」と評価(?)されました。

立命館大学講義

今日4月25日は、立命館大学法学部「公務行政セミナー」の講師に行ってきました。昨年に引き続き、4回目になります。立命館大学法学部は、公務員育成に力を入れています。約100人の学生が熱心に聞いてくれました。男女比はほぼ半分ずつです。質問も適確なものでした。

私の役割は、私の公務員経験をお話しすることです。私は官僚としては、少々変わった経験をさせてもらいました。それぞれに大変でしたが、やりがいのある仕事でした。学生には、通じたかな。
あわせて、仕事で悩まない方法や、新聞の読み方など、公務員になる準備も話しました。
一人でも多くの学生が、公務員を目指してくれるとうれしいです。

ベトナム国戦略的幹部研修

今日4月22日は、政策研究大学院大学での、ベトナム政府の国戦略的幹部研修講師に行ってきました。今回の対象者は地方政府幹部で、私の講義は「リーダーシップと危機管理」です。19人の方が、熱心に聞いてくださいました。

十分な質疑の時間を取ったのですが、次々と鋭い質問が出て、予定時間を超過しました。予測はできなかったのか、予算確保の方法、塩害に遭った農地の復旧、がれき片付け、保健の問題など。地方政府でそれぞれの分野に責任を持っている人ならではの、質問がありました。
的確な質問が出ると、うれしいですね。私の話が理解されているということですから。

ベトナム政府は、大胆な行政改革に取り組んでいるとのことです。中央省庁の統合と、地方行政単位の統合です。後者は、「省・郡・社」の3層構造から「省・市」と「社」の2層構造に移行し、63ある省と中央直轄市を34(28省+6市)に再編します​。なかなか大胆な行政改革です。
人口は約1億人、面積は約33万平方キロ。日本と似た状況ですから、驚くことではないでしょう。ところで、職員の配置転換、削減はどのようにするのでしょうか。

連載「公共を創る」第220回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第220回「政府の役割の再定義ー国家像を議論する共通基盤」が、発行されました。

政治家の役割として、この国の向かう先を指し示すことを取り上げています。
1980年代には世界有数の豊かさを手に入れ、併せて自由と平等、安全と安心も手にしました。目標を達成したのです。そこで当時も、日本は次に何を目指すべきかが議論されました。
中央省庁改革の方向を決めた「行政改革会議最終報告」(1997年)は、経済成長を達成した後、行き詰まった日本の行政システムを改革するものでした。そこでは行政の仕組みにとどまらず、「この国のかたち」の変革を求めました。省庁改革は実現したのですが、その後の目指すべき日本の姿については、政治家、官僚、識者の間でも議論は深まりませんでした。結局、明確な将来像も国家戦略も持ち得ないままに、現在まで至っています。

そのような議論をせずに、行政改革を続けました。今も、「身を切る改革」などを主張する政治家がいますが、政府を小さくしても、国民が満足する社会は実現できません。私たちが取り組まなければならなかったのは、行政改革を深化させることではなく、目指す将来像の議論であり、その中での行政の役割だったのです。

では、これから日本が目指す国家像は、どのようなものでしょうか。「国民が自由に振る舞う、国家はその条件を整える」という政治哲学では、かつての「強い日本」「豊かな日本」といった、国民が共通に目指す国家目標は、設定が難しくなりました。
石破茂首相が「楽しい日本」を提唱しました。反対意見もあります。目指す国家像は人によって異なるでしょう。

目指す国家像が人によって異なることは当然として、議論する際に前提となる「共通基盤」はあると思います。
その1は、我が国が経済発展を達成したことと、それに伴う国内の諸状況です。
2つめに、国内外の諸条件を、念頭に置かなければなりません。1990年代と現在では、「次の日本の目標」を考える際の内外の条件が大きく変わった、ということです。