カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第180回

2024年3月14日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第180回「政府の役割の再定義ー管理職、どう育てるか?」が、発行されました。第178回から、官僚の育成の見直しを議論しています。今回は、管理職の育成についてです。

会社員の間では「管理職は罰ゲーム」という言葉が、はやっているようです。管理職になると責任が重くなる割には給与は増えず、やりがいも感じられないため、管理職になりたくない人が増えているのです。学校では、教頭や校長になりたくない人がいて、管理職試験を受けないことは、かなり前から話題になっていました。近年では、校長や教頭から、一般の教員に戻る制度もできています。

この背景には、次のようなことがあります。
・日本の職場では、管理職と非管理職の違いを目立たせないようにしてきた。戦後民主主義の一つの表れです。
・職員と一緒に汗を流すことが、よい管理職と考えられてきた。
・部下に任せるのが、よい管理職と考えられてきた。

この連載で既に指摘したように、それでは生産性が上がらず、管理職には管理職の仕事が求められるようになったのです。
管理職が仕事の管理、部下の管理をせず、企業で不正が起きています。

日経新聞社説に取り上げられました。

2024年3月11日   岡本全勝

今日は13年目の、3.11でした。日経新聞の社説「東北の復興支え次の震災に生かせ」に、私の発言を取り上げてもらいました。

・・・能登の復興で生かすべき東北の教訓は持続性の高い街づくりだ。観光などで民間投資を呼び込める地域産業のあり方と、人口減少を考慮したコンパクトな街づくりを構想することである。
宮城県女川町は居住地を高台に移し、港周辺で若い世代を中心に観光の街づくりを進めている。当初は住民が流出し、20年分の人口減少が数年で一気に進んだ。その後は観光地として投資や移住が増え、人口減は鈍化した。街の持続性は高まったといえよう。

東北の復興に携わった岡本全勝・元復興次官は「街の将来を担う若者のいる市街地や中心集落は残すべきだが、高齢者がほとんどの小さな集落は集約することもやむを得ない」と提言する。東北には300を超える集落移転の事例があり、参考にしてほしい。
東北では人口の見積もりが甘く、防潮堤が守る地区やかさ上げした土地に空き地が目立つ。自治体は住民をとどめようと復興を急ぐが、当初は戻りたいと考えた住民も冷静に将来を考える段階になると心境を変えがちだ。丁寧に住民の意向を確かめ、長期的な視点で街づくりを考えたい・・・

連載「公共を創る」第179回

2024年3月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第179回「政府の役割の再定義ー公務員の「身分」を巡る考察」が、発行されました。前回では、職務の専門性について議論しました。そこには、政策分野の専門性とともに、どの分野にも共通する定型的な専門性があることを指摘しました。
今回は、原点に戻って、公務員と民間企業の会社員や非営利団体の職員との違いを考えてみます。

国家公務員と地方公務員は採用と法的身分に特徴があります。国家公務員法は「身分」という言葉も使っています。また企業活動から隔離することがうたわれています。しかし、民営化や民間委託が進むことで、公務員と会社員の業務がさほど異なったものではないことが明らかになりました。また、非常勤職員や任期付き任用職員が増えました。民間企業に勤めながら非常勤職員として採用されている人もいます。逆に、企業や非営利団体に派遣される公務員も増えています。
公務員への労働基本権の一律制限も、おかしなことです。企画部門や調査統計部門の職員がストをしても、国民生活に直ちに重大な支障がありません。コロナ禍で分かったことは、保育所、介護施設、学童保育施設職員がストをしたら、大きな影響があります。電気、ガス、通信、金融が止まると生活と経済活動に支障を来します。公務員だからという規制ではなく、業務に応じた規制をすべきです。

公務員と民間人を分ける考えは、公私二元論に引きずられた、古い思想です。

朝日新聞、論壇時評で取り上げられました

2024年2月29日   岡本全勝

今朝2月29日の朝日新聞「論壇時評」、「能登地震から考える 人口減少、持続可能な社会とは」で、宇野重規・東大教授が、先日のヤフーニュースでの発言を取り上げてくださいした。ありがとうございます。

・・・復興庁の元事務次官である岡本全勝の「能登地震の復興は東日本に学べ」も考えさせられる(〈3〉)。東日本大震災からの復興に約10年にわたり取り組んだ岡本は、「地元から離れたくない」という住民の気持ちと、現実の生活環境の水準との間でいかに折り合いをつけるかがポイントだとする。その際、「市街地」「中心集落」「周辺集落」を区別し、それぞれの持続可能性を考慮した上で、ある程度の選択と集中も必要だという。街を復旧したものの住民が戻らなかったことがあった東日本の経験も踏まえ、住民の議論と合意によって復興計画を策定してほしいとする・・・

〈3〉小川匡則「『能登地震の復興は東日本に学べ』元復興庁・岡本全勝さんの提言 町を元に戻しても人は戻らず」(Yahoo!ニュース オリジナル 特集、2月9日)*

コメントライナー寄稿第16回

2024年2月27日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第16回「工程表のない政治」が2月22日に配信され、27日のiJAMPにも転載されました。
今回は、昨年秋に、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税を取り上げ、政治手法のあり方を議論しました。

首相が政策を打ち出す際には、「突然に」と「議論を経て」の二種類があります。前者は、国民が想定していない政策を打ち出すことで、首相の指導力を見せる演出効果があります。後者は、首相が課題と方向を提示しますが、議論を積み重ね、最後に首相が決断します。

民主主義は有権者の意見に基づく政治であり、その意見を集約する手続きを経る仕組みです。審議会や政党内、議会での議論を通じて、国民に争点を示していく過程が重要です。これによって、すべての国民が賛成しないまでも、国民の間に納得が生じます。難しい課題であるほど、国民の間には意見の相違があります。
首相は突然に指導力を見せることにではなく、国民に納得してもらうためにこそ、戦略を考える必要があります。中曽根行革では、「工程表」という言葉が使われました。

首相の役割は、政治課題を選び、解決していくことです。人を動かして、それを実現することが腕の見せ所です。政治力とは、人を動かすことです。
首相が打ち出す政策には、全体の目標と体系が必要です。各政策に工程表が必要なのと同様に、首相が目指す日本に向けての工程表が必要です。