カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第207回

2024年12月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第207回「政府の役割の再定義ー政策の優先順位付けと利害調整」が、発行されました。政治主導がうまくいっていないことについて議論しています。

政治主導へ転換するために、国会での委員会での官僚の答弁機会は減ったのですが、首相や大臣の答弁案を作成する業務は、以前と変わっていません。国会での質疑が、政治家同士の議論になっていないのです。
また、法律案や予算案の与野党への説明も、政治家でなく官僚が担っています。しかも、その際には政治家から官僚に対し時に厳しい要求や追及が行われます。政府提出法案などの内容は、与党の部会で実質的に決定するのですが、これは非公開で行われています。

政治主導がうまくいっていないことの2番目として、政策課題に優先順位をつけることを取り上げます。かつて「官僚主導」と言われた政治過程は、各省官僚と与党各部会がそれぞれの分野を拡大するものでした。しかし経済が停滞すると、どこかを削る必要が出てきました。これは官僚にはできないことです。政治家による利害調整、優先順位付けができていない事例と、うまくいった事例を説明します。

連載「公共を創る」第206回

2024年12月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第206回「政府の役割の再定義ー内閣の政策立案と「官邸主導」」が、発行されました。政治主導がうまくいっていないことについて、「官邸主導」の問題を議論しています。

首相が新しい発想で新しい政策に取り組むことは、重要なことです。しかしその際には、唐突に指示を出すのではなく、しかるべき手順を踏んで政策に作り上げることが必要です。
中曽根康弘内閣の臨時行政改革推進審議会、橋本龍太郎内閣の行政改革会議など、歴代首相は、内閣の方向性を考えるための大きな視野の「知恵袋」を持ち、そこでの議論を通して自らの内閣の方針とその策定過程を国民にも開示してきました。

省庁改革では、重要事項を審議するために「重要政策に関する会議」をつくりました。一般的な審議会では、首相や大臣が外部有識者から成る審議会に審議事項を諮問し、報告を受けます。しかし重要政策に関する会議では、主に首相が議長になって審議を進めるのです。
経済財政諮問会議はその一つで、経済財政政策に関する重要事項について調査審議します。小泉純一郎首相がこの会議を活用し、毎年夏に「骨太の方針」を策定することで、官邸主導の予算編成と政策決定を行いました。
その後も経済財政諮問会議は開かれ、「骨太の方針」はつくられていますが、かつてほど活用されていないようです。

官邸主導の問題の一つは、首相が次々と指示と目玉政策を出すのですが、それぞれの政策の評価がなされないままに、次の政策が提示されることです。
しばしば、首相が記者会見で目玉政策を発表したり、会議の場で指示を出したりする映像が流れます。それは、首相の政治主導ぶりを見せる良い方法ですが、政治主導は指示を出すことだけでなく、それが適切だったか、そして良い成果を生んだかによって判断されなければなりません。

連載「公共を創る」第205回

2024年11月28日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第205回「政府の役割の再定義ー「官邸主導」の問題点」が、発行されました。

第2次安倍晋三内閣は、首相の政治主導が際立ちました。それは「官邸主導」と呼ばれましたが、これまで目指された政治主導とは違っていました。
首相が記者会見や施政方針演説で「唐突に」大きな政策を打ち出すことで、国民への訴求力は高まったと思われます。しかし事前に関係者による討議を経ていないので、その問題点や実現過程について十分な検討がなされていない恐れもあります。そしてその唐突さは、予測が立たないことで、官僚たちを右往左往させたようです。
また、官邸の判断と違う政策を大臣以下の判断では実施できなくなってしまうことから、各省の官僚たちが政策を考えなくなり、「指示待ち」になってしまったともいわれます。

例えば、新型コロナ感染初期の一斉休校も混乱を引き起こしました。
2020年2月に、安倍首相が感染拡大防止のために学校の休校を打ち出しました。この判断は正しかったと思われますが、その唐突さが問題を生じさせました。首相がその方針を表明したのは木曜日の夕方で、休校は翌月曜日からでした。
保育園や学校、学童保育が休みになると、働いているお父さんとお母さんのどちらかが、仕事を休んで面倒を見ることになります。それぞれ、月曜日の仕事の予定が入っていたでしょう。せめて週の前半から、休校の可能性とその理由、実施の際の問題点などを公表しておいてもらえれば、対応策を講じることもできたでしょう。

読売新聞大阪版、防災庁構想

2024年11月26日   岡本全勝

11月25日の読売新聞大阪版減災面「防災庁 切れ目ない支援へ」に、私の発言が載りました。

・・・今後のポイントは新たに担う業務と組織体制だ。元自治官僚で復興庁次官などを務めた岡本全勝氏は、防災庁と現在の復興庁の統合を提案した上で、復興段階の被災地支援を、主要業務の一例として挙げる。「事前の防災・減災対策から発災後の復興に至るまで、切れ目なく対応できるようになるのでは」と指摘する。・・・

コメントライナー寄稿第20回

2024年11月20日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第20回「日本を支えた意識の劣化」が11月18日に配信され、19日にはiJAMPにも転載されました。

最近の電車で座っている人たちは、居眠りをしているか、スマホを操作しているかで、全く周囲に関心がないように見えます。足の悪い人が乗ってきても、席を譲ろうとしません。災害時の日本人の助け合いは、世界が称賛しています。他者への思いやりと共助の精神が弱くなると、安心・安全な社会は壊れます。

資源に恵まれない日本が、世界有数の経済成長を遂げたのは、向上心と勤勉のたまものです。この30年間の経済停滞の大きな理由は、この向上心と積極性の低下でしょう。発展途上時代は「努力すれば暮らしは良くなる」という社会の現実と通念が、国民を勤勉へと駆り立てました。しかし成熟社会になると、向上心や挑戦心は低下したようです。

これまでの日本の強みは、このような他者への信頼と向上心であり、関係資本と文化資本いわゆるソーシャルキャピタルでした。
昨今の無関心の広がりは関係資本の劣化であり、新しいことへ の消極性は文化資本の劣化です。このままでは、先祖から引き継いだ強み を、私たちは子どもたちに引き継ぐことができません。そして日本は 弱くなります。