カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第173回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第173回「政府の役割の再定義ー成熟社会において官僚に求められる能力とは」が、発行されました。
第171回から、これまでの官僚に求められた能力を解説しています。その中で、「変な能力」についても説明しています。「理不尽なことに耐える能力」「滅私奉公」などです。

次に、官僚を支えた心理を説明します。給料が驚くほど高かったわけでもないのに、私生活を犠牲にして長時間労働に耐えたのです。志を持ってこの職業を選んでいますが、志だけで長い職業人生を続けることはできません。彼らを支えたのは、やりがいだったと思います。社会をよくすることが目に見えたことであり、それに伴う社会的評価です。

次に、これから必要とされる能力について解説します。

連載「公共を創る」第172回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第172回「政府の役割の再定義ー官僚に求められる「交渉能力」とは」が、発行されました。

これまでの官僚に求められた能力について説明しています。前回から、官僚が国家全体の利益を考えず、自身の属する省庁や局の利益を優先することがあった点について論じています。
官僚はそれぞれの政策分野での専門家です。しかし、社会や国家全体を忘れて専門分野の利益拡大に力を注ぐことがあったのです。省庁の幹部候補生(上級職。現在の総合職)を育成する際、省内(業界や専門機関を含んでいました)ではさまざまな分野を経験させるのに、省外に出して幅広い視野を身に付けさせることはしませんでした。

官僚には、理解力と説明力という「頭の良さ」とともに、交渉力もあります。官僚は実務家ですから、必ず折衝の相手がいます。折衝には、自らの考えを相手に理解してもら
わなければならない場面だけでなく、相手からの提案や依頼を断ったり後回しにしたりする場面があります。その際には自説を述べるだけでなく、相手に納得してもらう必要があるのです。

このほかにも、官僚に求められた「変な能力」があります。例えば、理不尽なことに耐える能力です。時に、国会議員に無理難題を吹っ掛けられたり、与野党に対する説明の場で厳しい追及に遭ったりするのです。

年内はこれで終わり、新年は1月11日号からです。

連載「公共を創る」第171回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第171回「政府の役割の再定義ーその変化を巡る考察」が、発行されました。前回から、成熟社会での官僚のあり方を議論しています。まずは、官僚に求められる能力の変化です。

これまでの官僚の役割は、日本を豊かにするために産業を振興し、行政サービスを充実させることでした。そのために、新しい政策や制度を導入し、必要な資源を配分してそれらを実現させることでした。その手法として、欧米の制度を理解し、日本の実情に合うように加工すること、それを関係者に訴えて実現することでした。
これらを遂行するための能力は特別なものではなく、理解力と説明力です。しかし、これまで求められた理解力には、偏りがあったようです。官僚の多くは、技官などを除くと東大をはじめとする法学部出身者が占めてきました。

そして、新しい政策を考える際に情報源を外国に取ったので、外国語の能力が重要でした。また、関係業界からの情報も重要で、それらとの付き合いも必要でした。

官僚は各省に採用され、その分野の専門家として育成されました。しかし、その専門性にも問題がありました。省内では、短い期間で移動を繰り返し、例えば局単位での専門家としては育てられませんでした。他方で、関係業界や学会は身内ですが、省外とは排他的な所管争いをしました。

連載「公共を創る」第170回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第170回「政府の役割の再定義ー官僚の人事政策─その現状」が、発行されました。

日本社会の変化を背景に、第157回から官僚の役割について議論してきました。根底には、発展期から成熟期へという社会の大きな変化に、政府も官僚も対応できていないという問題意識があります。しかし、これからの官僚はどうあるべきかについては、十分に議論されてきませんでした。今回からは、行政と官僚の役割の変化に応じて、官僚の仕事をどのように変えればよいか、また官僚をどのように育成すべきなのかについて検討します。

官僚をどのように採用して、どのように育成し、選抜するのか。これについて、制度はもちろんありますが、雇い主である政府の考えを明らかにした人事政策は、最近までなかったように思います。役所の仕事はどうあるべきかについても、共通した方針が示されていたとは思えません。
その原因は、それを考える人事管理部門が重視されなかったせいですが、さらに言えば、人事政策を考える必要がなかったことにあると考えます。
採用後の人事は各省に委ねられ、そして各省には人事政策の専門家がいなかったのです。

連載「公共を創る」目次7

目次6」から続く。「目次1」「目次2」「目次3「目次4」目次5
全体の構成」「執筆の趣旨」『地方行政』「日誌のページへ

12月7日 170政府の役割の再定義ー官僚の人事政策─その現状
12月14日 171政府の役割の再定義ー官僚に求められる能力─その変化を巡る考察
12月21日 172政府の役割の再定義ー官僚に求められる「交渉能力」とは
(2024年)
1月11日 173政府の役割の再定義ー成熟社会において官僚に求められる能力とは
1月18日 174政府の役割の再定義ー課題解決型思考と構想力
1月25日 175政府の役割の再定義ー官僚の職場を巡る課題─その解決に向けて
2月1日 176政府の役割の再定義ー官僚の長時間労働を減らす三つの方法
2月8日 177政府の役割の再定義ー官僚の「やりがい」を巡る考察
2月15日 178政府の役割の再定義ー職員育成の見直しに向けて
3月7日 179政府の役割の再定義ー公務員の「身分」を巡る考察
3月14日 180政府の役割の再定義ー管理職、どう育てるか?
3月21日 181政府の役割の再定義ー管理職が果たすべき「役割」とは?
4月4日 182政府の役割の再定義ー幹部官僚の職責
4月18日 183政府の役割の再定義ー「蟻と鷹の目」で見た幹部官僚の職責
4月25日 184政府の役割の再定義ー戦後日本の転換点を巡る思索
5月9日 185政府の役割の再定義ー広く日本の在り方を考える必要性
5月16日 186政府の役割の再定義ー幹部官僚としての心構え
5月23日 187政府の役割の再定義ー震災復興、政治主導の在り方と官僚の仕事
6月13日 188政府の役割の再定義ー重ねた被災地訪問と信頼関係の醸成
6月20日 189政府の役割の再定義ー原発事故への対応と復興庁の発足
6月27日 190政府の役割の再定義ー復興庁の「社風」と「これまでにない危機」への心構え
7月4日 191政府の役割の再定義ー幹部官僚の自覚と教育訓練
7月11日 192政府の役割の再定義ー行政組織のパラドックス
7月18日 193政府の役割の再定義ー日本全体の中長期的な課題と対策の検討を
8月1日 194政府の役割の再定義ー幹部官僚に必要な能力と企業幹部との違い
8月8日 195政府の役割の再定義ー官僚への信頼を取り戻すには
8月29日 196政府の役割の再定義ー転換を迫られる公務員の人事政策
9月5日 197政府の役割の再定義ー成熟社会の到来と変化する国のかたち
9月12日 198政府の役割の再定義ー官僚という職業を選んでもらうために
目次8へ続く」