カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第59回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第59回「日本は大転換期―教育に税金を使わない日本」が、発行されました。
成熟社会になった日本の問題のうち、学校教育について議論しています。前回までで、高学歴化が生んだ問題、近代化手法の限界、学校外の子育て機能の低下について指摘しました。今回は、その他の問題について取り上げました。

日本は教育熱心だと思われていますが、教育にかける公費が少ないこと、満足度が低い子ども、制服が象徴する一律平等・個性抑圧・大勢同調の思想などです。

日本の発展を支えた労働慣行と教育。そして達成した「一億総中流」。この中流意識が、次への努力をおろそかにしたと、私は考えています。中流を目指すことはよかったのですが、そこで安住したことが次の発展を止めたのです。

連載「公共を創る」執筆状況

連載「公共を創る 新たな行政の役割」、定例の執筆状況報告です。
苦労の
末、第3章1(2)その3の1を完成させて、編集長に提出しました。毎週連載には、夏休みがないことを思い知りました。反省。

「その3」は、成熟社会の問題のうち、私生活の変化を取り上げます。一気に書き上げることはできず、その3分の1をまず仕上げました。「家族の形の変化」です。単身世帯の増加、結婚しない人の増加、子どもの減少、夫婦の関係の変化など。平成の間に、大きく変わりました。
関係する書物や新聞報道はたくさんあり、毎日目にしていることです。しかし、それを成熟社会の問題として整理しようとすると、苦労しました。毎度のことです。編集長と相談して、4回分に分割しました。これで、10月が乗り切れます。

目次を見たら、「日本は大転換期」が長々と続いています。こんな予定ではなかったんですが。目次の付け方を、まちがったかな。

先日、ある町長から「楽しみに読んでますよ。時代の変化を知らない職員たちに読ませています」と、応援をいただきました。「早く本にしてくださいよ」とも。
ありがとうございます。若い人たちからは、「なに、古いこと言っているの」と言われそうですが。

連載「公共を創る」第58回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第58回「日本は大転換期―学校外の子育て機能の低下」が、発行されました。
高く評価された日本の教育制度が、成熟社会になって機能不全を起こしています。近代化手法の問題の一つは、理想をだけを教えることです。立派な国民を育てるために、理想的な生き方を教えます。これはよいことなのですが、理想から漏れ落ちる子どももいます。それへの対応、つまずいた際の安全網の教育が不十分なのです。かつては、それらは家庭や地域に任されていました。

成熟社会の教育問題の3つめは、学校外での教育機能の低下です。子どもの貧困、児童虐待、不登校、いじめ、非行など、これらの対応を教員に求めるのは無理があります。かつて、家族、地域社会が守り教えてくれたことが、できなくなったのです。

ここから見えることは、子どもを教育の対象としてみるのではなく、子育てとしてみることの必要性です。一人では生きていけない子どもを養育することと、一人前に育てることです。学校教育は、そのごく一部でしかありません。

連載「公共を創る」第57回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第57回「日本は大転換期―成熟社会で見えた教育の問題と限界」が、発行されました。
成熟社会日本の問題。労働の次に、教育について議論します。労働が人の生き方と社会の形を表すものとすれば、教育は子どもや次世代の社会への期待を表しています。それが、日本人と日本社会を再生産します。

日本型雇用慣行と共に日本の教育も、日本の驚異的発展を支えた仕組みとして高い評価を得ていました。しかし雇用と同じように、教育も今やさまざまな問題を抱え、批判にさらされるようになりました。それは、発展途上社会に適合した教育の仕組みが、成熟社会ではうまく機能しなくなったからです。

成熟社会での教育の問題。その1は、高学歴化が生んだ問題を取り上げます。
みんなの憧れだった高等教育。高校進学率は1970年代に9割を超え、大学進学率は平成元年の25%から令和元年には54%と急上昇しました。では、みんなが幸せになったか。そうはなりませんでした。
大卒がエリートではなくなり、かつては高卒の人が就いていた職に、就かざるを得なくなりました。他方で、学歴競争はさらに激化しました。

成熟社会の教育の問題。その2は、近代化手法の問題です。
近代化の過程で効率的だった、集団で一律の教育を行うこと、知識を詰め込むことが、成熟社会では弊害を生むようになりました。

連載「公共を創る」第56回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第56回「日本は大転換期―成熟社会で浮き彫りになった労働の問題」が、発行されました。
成熟社会日本の問題、今回は労働について議論します。

日本にのみ特殊と言われている「メンバーシップ型雇用慣行」。これが、発展途上時代には効果を発揮しました。
ところが、何度か紹介したように、日本の労働者の勤労意欲は先進諸国でも低いのです。私は、その理由が、メンバーシップ型雇用慣行にあると考えています。
その他に、労働者の甘え、生産性の低さなども、その原因はここにあります。
これは、40年間サラリーマンをして、30年間管理職をした経験による結論です。

どうすれば、この問題を解決できるか。その答えは、管理職と従業員を区別すること、そして、管理職に管理職の仕事をさせることです。

参考「ジョブ型雇用、日本への導入」「テレワークで見えた日本型職場の弱点」「階統制組織と平等的組織