「連載「公共を創る」」カテゴリーアーカイブ

連載「公共を創る」第86回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第86回「社会の課題の変化―自由な社会で重要な他人とのつながり」が、発行されました。前回に続き、引きこもりが増えた背景として、生きづらい社会について説明しています。

他人から干渉されない自由は楽しいものですが、他方で、自分で選ばなければならないという「つらさ」も伴っています。しかも、何でも自由に手に入るものではなく、自らの力量や努力によって制約があります。うまくいかないときに、自由は重荷になります。
さらに日本では、「世間の目」という縛りがあります。自由な行動を世間が許さないのです。「我が道を行く人」にとっては負担ではありませんが、「繊細さん」にはつらいことです。

人とのつながり、社会での居場所が、孤立を防ぎます。しかしそれは、待っていても与えられるものではなく、自分でつくらなければなりません。各種の中間集団は、その機会を提供します。血縁、地縁、社縁などが薄れたいま、社会での新しいつながりをつくる必要があります。
他方で、孤独や孤立に悩む人に相談窓口をつくること、その人たちを発見して支援することも重要です。

連載「公共を創る」第85回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第85回「社会の課題の変化―増える引きこもりに居場所の確保を」が、発行されました。前回に続き、孤立の具体例として、引きこもりを説明しています。
彼ら彼女らの内面は、他者からはわかりません。私の読んだ本や見聞から、孤立問題として説明しました。
どのような原因で、引きこもりが起きるのか。本人は、何に困っているのか。何が救いになるのか。そのような状態に追い込む日本社会の「欠点」などを説明しました。
学校や会社などでうまくいかなくなり、居場所がなくなって、引きこもりになるようです。相談できる人がいないことで、一人で悩みます。学校や会社以外の逃げ場、複数の居場所があれば、引きこもりは防げます。

NHKウエッブサイトに、「つらくても相談なんてできないよ 13歳僕の叫び」(6月28日掲載)が載っていました。合わせてお読みください。

連載「公共を創る」第84回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第84回「社会の課題の変化―成熟社会が生みだした孤独と孤立」が、発行されました。

本稿では、成熟社会になって生まれて新しいリスク、人間らしい生き方への被害を、格差と孤立として整理しています。
前回まで、格差について説明したので、今回から孤立について説明します。

一人で暮らすことは自由であり楽しいことです。しかし、さみしさを感じると孤独になります。他者とのつながりが薄くなった場合です。
それがひどくなると、孤立になります。一人で悩んだり、助けを求めることができない場合です。一人暮らしでなくても、引きこもりになると孤立です。
孤立や孤独の問題は、近年「発見」されたものですが、最近でも、若年介護者(ヤングケアラー)が「見つかり」ました。

連載「公共を創る」執筆状況報告

恒例の、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の執筆状況報告です。続きを書き上げ、右筆たちに提出しました。第4章1(2)「新しい不安への対応」のうち、「変わる安心提供の手法」についてです。

格差と孤立といった、社会生活の新しく生まれている不安は、これまでの政策では効果が少ないです。失業対策では、非正規雇用格差は是正されません。引きこもり、社会保障給付では、自立につながりません。これまでに書いてきた、これら新しい不安への対策について、何が変わるかを整理しました。

もう一つは、私が提唱している「生活省構想」です。
行政の主要な課題が、インフラやサービス提供から、生活の不安に変わっています。政府も、孤立など社会生活問題に取り組んでいますが、バラバラです。これらを、一つの省にしようというものです。
これまでの省庁は、生産者や提供者側でした。これれに対抗して、生活者を軸にした省をつくって、国民に政策をわかりやすく提示し、また行政の変化を象徴したいのです。

先月に7月掲載分を書き上げたときは、余裕だったのですが。時間はあっという間に過ぎます。遂に追い込まれて、早朝の頭のさえている時間帯と、夜のビールを控えて夕食後に執筆しました。事前のめどでは、今回は分量も少ないはずでしたが、どんどん膨らんで。書き終えると、400字詰め原稿用紙で60枚にもなりました。
ひとまず、右筆たちに提出して、ほっとしています。右筆さん、よろしくお願いします。

ところが、この余裕がくせ者なのです。「まだ時間があるわ」と思っているうちに、時間が過ぎていきます。たぶん来月の今頃も、「追い込まれています」と同じことをぼやいているでしょう。そうならないように、ぼちぼちと次の執筆に取りかかりましょう。

連載「公共を創る」第83回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第83回「社会の課題の変化―格差縮小へ正規雇用増と最低賃金引き上げ」が、発行されました。

現在の非正規雇用格差を放置すると、社会の不安が高まり、亀裂が入るでしょう。早急に対応しなければなりません。主な手法は、同一労働同一賃金の実現と、最低賃金の引き上げでしょう。
先進諸国の中で、日本の賃金は低いのです。マクドナルドのビッグマックの価格は、アメリカ590円、イギリス493円に対し、日本は390円です。タイの443円、韓国の428円よりも安いのです。喜んでいてはいけません。(原材料費などが大きく違わないとすると)それだけ労働者の時給が低いと言うことです。

本来、労働者を守るのは労働組合の任務です。しかし、正社員から構成される労働組合は既得権を守るために、非正規社員との格差是正に反対することもあるとのことです。知人の社長が、ぼやいていました。