カテゴリー別アーカイブ: 寄稿や記事

雑誌への寄稿や取り上げられた記事、講演録など

日経新聞夕刊コラム第14回

日経新聞夕刊コラム第14回「新人諸君へ」が載りました。
4月、新年度が始まったので、この話題にしました。会社員も学生も、新入生は期待に胸を膨らませていると思います。他方で、ちょっぴりの不安も。私もそうでした。

私は若いときに、2度、出社恐怖症になりました。先輩が相談に乗ってくれて、脱出することができました。
いろんな経験をして、「皆、同じようなことで悩んでいる」「悩みの種は本人にとっては大問題だけど、経験者から見ると大した問題ではない」「相談に乗ってもらうと、乗り越えることができる」とわかりました。それを、『明るい公務員講座』に書きました。

本屋には、たくさんのビジネス書が並んでいます。しかし、意外と若手職員向けのものはありません。初歩的な悩みについては、あまりに基礎すぎて、書かれていないのです。先輩たちは、みんな経験で身につけたことなのです。それを、本にしました。
拙著について「平凡なことしか書いていない」という批評がありますが、その通りです。経験者にとっては当たり前のことを書いたのです。しかし、若手はそのようなことで悩んでいるのです。

何人かの人から、「この本を読んで、救われました」とお便りをいただきました。お役に立てて、うれしいです。
この本は公務員向けに書きましたが、民間企業でも同じです。若手社員だけでなく、彼らを指導する立場の人にも読んでもらっているようです。
どうか、悩んでいる後輩たちの相談に乗ってやってください。「何だ、そんなことに悩んでいるのか」というようなことで、彼ら彼女らは悩んでいるのです。

先月、『明るい公務員講座』の続編『明るい公務員講座 仕事の達人編』を出版しました。こちらも、ご利用ください。

日経新聞夕刊コラム第13回

日経新聞夕刊コラム第13回「帽子」が載りました。前回に引き続き、私生活についてです。
服装は、かっこよい先輩たちを見て、学びました。父親は、勤め人でなかったので。ネクタイの締め方から始めました。
もっとも、私のセンスは悪いらしく、若いときはキョーコさんに叱られてばかりいました。その後は、キョーコさんの指導に従っています。ネクタイの例

スーツでなく上下そろいでない服は、国会議員からもしばしば「どうしたの」と尋ねられました。「いや~、上下そろいで買うお金がなくて」と笑っておきました。今日も、春らしく、明るい上着にしました。
帽子は、若いときから時にかぶっていたのですが、40歳過ぎから毎日かぶるようになりました。「夏は直射日光を避け、冬は寒いので」というのが、聞かれたときの答えです。「ボルサリーノ

紺のスーツは勤め人の基本形です。新人のうちは「とりあえず」紺のスーツが無難です。しかし、いつまでも「考えない」はこまります。「とりあえず紺のスーツ」は、飲み会の際の「とりあえずビール」と同じですね。まあ、趣味と言えばそれまでですが。
第9回の「仕事人間の反省」で、スーツとパジャマとスポーツウエアだけで過ごす勤め人を批判しました。その点にもつながります。制服は、思考停止になります。

ところで、東京では公立の小学校の、高価な制服が話題になっています。生徒に立派な制服を着せるのですから、教職員はお手本となるように、もっと立派な服装あるいは制服を着ておられるのでしょうか。
教育現場に詳しい人に、一般的な学校の先生の服装について、聞きました。
「例えば、スーツに白い運動靴。校内での上履きは運動靴の先生も多いです。子どもたちと一緒に動く関係上 仕方がない面もあるのかもしれませんが。
体育の時間でもないのに、ジャージで一日過ごす先生なども おられます」とのこと。

早いもので、この連載も、もう13回。3か月が過ぎ、折り返しです。

日経新聞夕刊コラム第12回

日経新聞夕刊コラム第12回「フルート」が載りました。今回は、ガラリと趣を変えて、身の回りのものからです。

このホームページの表紙にも、笛吹き中年の似顔絵を使っています。富山時代に、書いてもらいました。
なぜフルートを選んだか。これには、長い調査検討期間がありました。音楽に詳しい人に相談したり。夜更けの酒場で、静かに弾くピアノを聞いて、格好良いと思いました。しかし、記事に書いたような理由で断念。指使いで音がはっきり出る楽器として、管楽器を選びました。
管楽器では、サキソフォン(サックス)が一番簡単なようです。最後に発明されたとのこと。アメリカのクリントン大統領も吹いておられました。ある生演奏の店に連れて行ってもらい、吹かせてもらいました。息を吹き込めば音が出ました。問題は、音が大きくて、どこで練習するかです。河原とか高架下とか?
フルートは少々難しい。でも、「クリントン大統領(のサックス)か、山形由美さん(のフルート)か」。で、フルートにしました。

フルートの話は、『明るい公務員講座 仕事の達人編』にも書きました。とても人様にお聞かせするものではありません。本人が満足していたら良いのでしょう。こんな写真もあります「老人ホームでの演奏」。

吹く機会がないと、どんどん退化します。♯や♭が出てくると、「指使いはどうだったっけ」とです。でも、焦る必要はありません。
お茶は、このホームページに書いているように、藪内家です。お花は、池坊です。これも、その後は休眠中。

日経新聞夕刊コラム第11回

日経新聞夕刊コラム第11回「社会の財産」が載りました。
写真に写せない財産、数字に換算できない財産は、たくさんあります。個人にも、地域にも、社会にも。日本は、信頼に支えられた「強い社会」を持っています。

社会的共通資本は、私の長年の研究対象です。拙著『新地方自治入門』で、住みよい地域を考えた際に、気がつきました。
住みよい町は、社会資本(狭義、インフラや公共施設など)だけでは、できてはいません。目に見えない各種の資本(資産)も重要です。制度資本(教育や医療制度)、関係資本(信頼など)、文化資本(治安、気風など)があって、住みよい町ができます。これらを含めて、広く社会的共通資本(ソーシャル・キャピタル)をつくることを考えるべきです。

残念ながら、政治学や行政学の教科書では、十分に取り上げられていません。写真に写せない、数値で表せないことから、研究対象になりにくいのです。
公共政策論でも、多くは対象は行政の範囲にとどまっています。しかし、ここで取り上げた「社会関係資本」は、行政が法律や予算で作るものではありません。

公共空間を考えた際、その主体は、行政だけでなく、住民、企業、非営利団体もその担い手です。そして、対象も、法律や予算で作る公共施設や制度だけではありません。これまでの行政と行政学は、主体と対象さらには方法において、狭いのです。
東日本大震災 復興が日本を変える』第4章でも、指摘しました。ご関心ある方は、お読みください。
慶應義塾大学での公共政策論でも、論じています。いずれ、本にまとめようと考えています。

日経新聞夕刊コラム第10回

日経新聞夕刊コラム第10回「3.11から7年」が載りました。3月11日を迎える際に、この話題を書かないわけにはいきません。
ここに書きましたが、私にとって7年は早かったです。避難生活を送っておられる方には、長い時間だと思います。

津波被災地は、復興が見えてきました。しかし、原発被災地では、まだ復興が始まったばかりです。国民の皆さんに、それを理解していただきたいのです。また、津波と原発のと違いも。
あの発災直後を知っているかどうかで、大震災への思いは違うでしょう。当時を知らない、公務員の後輩たちにも、原発事故の責任を伝えなければなりません。

原発事故被災地は、放射線量の多さの順に、帰還困難区域、居住制限区域、帰還準備区域と3つに区分しました。特に、帰還困難区域は当分の間帰還できないので、土地と建物については全損賠償し、営業損害賠償のほかに、精神損害と故郷損失賠償も払われました。「戻ることができない」という前提だったのです。
それが、思いのほか放射線量が下がり、一部ですが復興拠点を作り、5年後の帰還を目指しています。当時を知っている人は、想像できなかったと思います。

しかし、復興はまだ道半ばです。関係者の方と一緒に、頑張って参ります。