カテゴリー別アーカイブ: 寄稿や記事

雑誌への寄稿や取り上げられた記事、講演録など

日経新聞夕刊コラム番外編1

日経新聞夕刊コラム「あすへの話題」は、6か月の連載予定のうち、4か月が過ぎました。既に17本が掲載されました。早いものですねえ。
5月3日は祝日なので、夕刊はお休みです。私のコラムもお休みです。で、コラムの執筆に関した話を書きます。

朝日新聞の名物コラム「天声人語」の執筆者の一人は、有田哲文記者です。このホームページでも、紹介しました。
天声人語は、603文字(改行なし)です。私が書いている「あすへの話題」は、改行ありの684字です。天声人語の方が短いのですね。天声人語は、もっと長いと思っていました。それだけ、内容が豊富であり、詰まっているということでしょう。
しかも、有田記者は、書きためずに毎日の勝負とのこと。すごいです。いえ、天声人語と勝負しようと思っているわけではありません(苦笑)。

このコラムを書いていて、思いました。
次のような要素のいずれかを入れることができたら、と考えつつ書いています。
・へえ=読者が知らないこと。
・なるほど=読者に共感を持ってもらえること。
・クスッ=少し笑える話。
そして、岡本全勝ならではの独自性も、必要です。とはいえ、行政の話は「固くて」、夕刊コラムには難しいです。
・ウルウル=涙を誘う話は、そんなにはありませんし、
・季節の話題は、私には期待されていないでしょう。

話の運びとしては、起承転結、序破急も重要ですが、最後の締め(オチ)をどうするか。それが重要です。テーマ(主題)選びとともに、締めに悩んでいます。
これまでの17本をお読みになって、どう感じられたでしょうか。
残りは8本です。乞うご期待。

日経新聞夕刊コラム第17回

日経新聞夕刊コラム第17回「この国のかたち」が載りました。前回に引き続き、日本の行政論について書きました。

「この国のかたち」という表現は、司馬遼太郎さんのことばです。
明治以来、欧米先進国から制度を輸入し全国に広めることが、日本の行政、大学、企業の仕事の仕方でした。「制度輸入、全国均てん」方式です。官僚、大学教授、企業の選ばれた職員が、欧米に留学し最新知識を持ち帰りました。
そして、大成功しました。しかし、先進国に追いついたことで、この手法は役割を終えます。たぶん1970年代から1980年代でしょう。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という表現は、「もうお手本はなくなった」ということを表していたのです。最後に「輸入」した行政制度は、2000年に開始した介護保険制度だと思います。

今回のコラムには書けませんでしたが、ジャパン・アズ・ナンバーワンが成り立ったのは、前にお手本があったこととともに、後ろから追いかけてくる国がいなかったからです。
台湾、韓国、そして中国が、それぞれの国内事情で経済発展が遅れました。これらの国々が経済開発に舵を切り、日本を追いかけてきて、日本の一人勝ちはなくなりました。
もっとも、これらの国々も、後発利益で快進撃を続けている限りは、日本と同じ道を歩むでしょう。すると、いずれ天井に当たります。それを避ける、あるいは突破するためには、新しい産業モデル、社会モデルをつくらなければなりません。
アメリカは、新しい産業に挑戦しています。IT、ハリウッド、バイオなどなど。また、それらを生みだすような「競争社会」です。それらと同じ土俵で競争するのか、別の社会を目指すのか。それも含めて「この国のかたち」をつくらなければなりません。

日経新聞夕刊コラム第16回

日経新聞夕刊コラム第16回「未来との対話」が載りました。今回は官僚らしく、日本の行政論について書きました。もっとも、夕刊のコラムですから、そんな難しい話ではありません。また最近のニュースになっている「事件」についてではなく、もう少し長い時間で考えていることを書きました。

「歴史とは現在と過去との対話である」は、E・H・カー著『歴史とは何か』(邦訳1962年、岩波新書)に出てきます。よく引用される文章です。
「歴史とは現在と過去との絶え間ない対話である」
An unending dialogue between the present and the past.

歴史は機械仕掛けのように進むものではなく、そこに人間の営み・作為が反映されます。社会と暮らしを良くするのか、あるいは悪くするのか。過去は変えることができませんが、現在と未来は変えることができます。
歴史を見る際にも、カーが言うように、客観的事実の羅列でなく、現在の私たちの問題関心に立って、過去を切り取ります。
すると、重要なのは、「現在の問題は何か」「良い点と悪い点は何か。良い点はどのようにしてできたのか、悪い点はどのようにして改良すべきか」を考えることです。それは政治の役割、政治家の役割ですが、それを考えて支えるのが官僚の役割です。

今回のコラムは、社会を良くすることを考えるという官僚の任務、成功した「近代国家形成、豊かな社会実現」、現在の官僚の自信喪失、これからの課題への取り組みの「未来との対話」、具体的例としての「国民生活省構想」を盛り込みました。少々、欲張りすぎましたかね。
国民生活省構想は、何度か書いたことがあります(2012年9月18日の記事)。

東北復興新聞インタビュー、7年を振り返る

東北復興新聞に、私のインタビュー「復興庁は何をしたのか。元事務次官が語る国の”責任”」が載りました。
東北復興新聞は、NPOが作ってくれている、復興支援の情報を集めた新聞(ウエッブサイト)です。
Beyond 2020」は、「今も復興の最前線で活躍する計50人の声を届ける連載」です。その趣旨から、「あれから変わったこと、変わらなかったこと」「私は未来をこう描く」などを50人に問うています。
ウエッブの特性から、文章中の用語に、リンクが張られていて、クリックすると詳しい実情がわかるようになっています。これは便利ですね。

50人の最後が、私だそうです。また、この新聞も、役割を終えたことから、終了するそうです。
長い間、ありがとうございました。

日経新聞夕刊コラム第15回

日経新聞夕刊コラム第15回「新聞の読み方」が載りました。今回は、私の「副業」(本業以外の仕事という意味です)である、大学での講義です。あわせて新聞の読み方と、2つのことを盛り込みました。

大学での講義は、結構な負担です。知っていることと、それを話すこと、さらにそれを理解してもらうことは、違います。しかし、自分の考えを整理する良い機会です。
学生たちに通じているか。毎回それを探りながら、話をしています。うまく伝わっている時は、うれしいし、話が進みます。通じていない場合は、学生が悪いのではなく、話している私の技術が悪いのだと、反省しています。大学院生や専門家が相手なら、どんどん難しい話ができるのですが。

ここに書いた新聞の読み方は、私流です。人それぞれの流儀があるでしょう。
でも、毎朝にその日のニュースの一覧を見ること、解説などはじっくりと読むこと。これらを両立させるためには、ここに書いた「全勝流」が効率的だと考えています。
文中に使った日経新聞の読者データは、「わかる!日経」p14左下です(私の文章では四捨五入してあります)。