カテゴリー別アーカイブ: 寄稿や記事

雑誌への寄稿や取り上げられた記事、講演録など

時事通信社コメントライナー寄稿

時事通信社の「コメントライナー」1月6日号に、寄稿しました。コメントライナーは、時事通信社が契約購読者に毎朝配信する、署名入り解説記事です。

今回の私の記事は、「若手官僚の不安と不満」です。
内閣人事局の依頼を受け、若手国家公務員の研修講師を務めました。幹部候補育成課程中央研修の係長級と課長補佐級の2課程で、どちらも録画です。
幹部候補研修と言えば、事務次官など先輩が経験談と心構えを話すことが定番ですが、主催者の要望は若手職員の不安と不満に答えてほしいとのことです。
内閣人事局の担当者たちと3カ月にわたり議論して、話の重点を決めました。若手官僚の悩みは、「どのようにしたら良い仕事ができるか」「どのようにしたら官僚としての能力が身に付くか」といったことよりも、次の三つのようです。
・生活と両立しない長時間労働がいつまで続くのか。
・従事している仕事が国家国民の役に立っているのか。
・この仕事で世間に通用する技能が身に付くのか。
優秀な学生が官僚を志望しなくなったことや、若手官僚が次々と辞めていくことが報道されています。その原因には、このような不満と不安もあるのでしょう。そこで、仕事の技術のほかに、三つの不安と不満について、その原因と対応策を述べることにしました。

座学の研修は、しばしば「聞いて終わり」となります。そこで宿題も付けました。「配布した講義骨子を上司に読んでもらい、あなたの意見を述べて、上司と30分間意見交換すること」です。若手官僚たちの悩みは、彼らが努力しただけでは解消されません。上司たちが職場の仕事のやり方を変える必要があるのです。それで、このような仕掛けを組み込みました。
研修録画は今年1月から、係長級と課長補佐級それぞれ約700人ずつが受講します。彼らとともに彼らの上司からどのような反応があるか、心配とともに楽しみです。

コメントライナー目次

2022年1月から、時事総合研究所の「コメントライナー」に寄稿しています。コメントライナーは、時事通信社が契約購読者に毎朝配信する、署名入り解説記事です。官僚の経験を生かして、報道では見過ごされている事実や、報道とは少し違った分析を書くようにしています。

2022年
1月6日「若手官僚の不安と不満
3月1日「管理職の必須知識
4月19日「『コロナ禍』を『コロナ成果』に
6月7日「憲法改正は地方自治の規定から
7月29日「小さな政府論の罪
9月16日「最低賃金決定に見る政治の役割
11月7日「社風をつくる、社風を変える
12月27日「それは首相に質問すること?

2023年
2月13日「人事評価、職場と職員を変える手法
3月24日「首相秘書官の現実と課題
5月11日「「行政文書」は正確か
7月10日「一身にして二生を過ごす
8月10日「マイナカード問題と組織管理
10月12日「役所にも人工知能がやってくる
12月14日「日本型職場の功と罪

2024年
2月22日「工程表のない政治
4月26日「管理職を育てる組織へ
7月4日「転職自由社会が与える衝撃
9月10日「行政改革と縮み思考から卒業を

読売新聞に出ました「首相に直言 秘書官の役割」

8月10日の読売新聞政治面の連載「語る 霞が関」の第3回に、私の発言「首相に直言 秘書官の役割」が載りました。

・・・首相秘書官として心がけたのは、首相に「違う意見がある」ということを伝えることだった。首相は孤独な権力者だ。とてつもなく忙しく、一つの案件に長い時間をかけることはできない。判断を誤れば取り返しがつかない。官僚や議員は首相の意向に反することは言いにくく、情報が偏る。身近にいる首相秘書官が情報を整理し、耳の痛い話を伝えることが重要な役割だと思って務めた・・・

・・・かつては省庁間の縄張り争いや、複数省庁にまたがる課題が置き去りにされることがあった。これが解消されてきたのは省庁改革の一定の成果と言える。
ただ、政治主導はまだ道半ばだ。国民から選ばれた政治家が目指すべき社会像を掲げ、国民を説得しながら政策を前に進めることが政治主導の肝だ。個別の案件の政治判断は、政治主導とは違う・・・

・・・平成の時代以降、官僚に対する国民の評価が落ちたのは、社会環境の変化に適応できなかったからだ。
東日本大震災後、復興庁の前身である被災者生活支援チームのメンバーとして復興に携わった。司令塔として各省庁に仕事を割り振ったが、省庁は生産者やサービス提供者を相手にしていて、被災者と直接向き合うことがほとんどなかった。
被災地だけの問題ではない。子供の貧困や孤立、引きこもりなどの社会問題は行政機関よりも非営利団体の活躍のほうが目立つ。
効率よく公共サービスを提供する行政は一定の役割を終えた。今後は生活に困っている人たちに寄り添うことが大きな課題だ。各府省に分かれている関係部局をまとめ、生活者の暮らしを支援する「生活者省」を設置すべきではないかとの思いをますます強めている。
現役の後輩たちには、目先の課題も重要だが、10年後の国民に、「あのときなぜ取り組まなかったのか」と批判されないような仕事をしてもらいたい・・・

盛りだくさんの内容を、阿部記者がうまく整理してくれました。
なお、紙面では白黒写真ですが、インターネットではカラーでかつ大きい写真です。仕事の時は、こんな顔をしているのですね。

読売新聞「復興脱税」に発言が載りました

7月13日の読売新聞社会面「復興脱税 特需の裏で 下」に、私の発言が載りました。
記事は、福島での除染事業で工事を引き受けた会社の幹部が、下請け会社から多額の接待を受けるだけでなく2億円もの金銭を受け取っていたという事件についてです。

通常の利益のほかに2億円もの利益が出るとは、常識では考えられないことです。どうしたら、公共事業でそれだけの「利益」が出るのか。そしてそれを秘密裏でできるのかが、不思議です。どこにそのからくりがあるのか、役所もゼネコンもそれを明らかにしてほしいです。そうでないと、国民の公共事業に対する疑念はなくなりません。

私の発言は、これらの事業が全額国費でまかなわれ、被災自治体の負担がなかったことについてです。
・・・元復興庁次官の岡本 全勝 氏(66)は、この仕組みが費用を膨張させたと指摘し、「各事業に自治体負担を5%でも入れておけば、市街地整備や道路造成などについてより丁寧な議論が行われ、費用が削減できただろう」と振り返る・・・

ただし、正確には次のように考えるべきだと思います。
1 原発災害での復旧は、加害者である東電と国の責任です。よって、除染経費に(賠償済みの帰還困難区域を除く)、地元負担を求めるのはおかしいです。
2 津波被災地での公共施設復旧については、ほかの災害の例からしても、地元負担を求めて当然です。どの程度なら負担できるかは、検討しなければなりません。
3 原発被災地での公共施設復旧については、1に準ずるのでしょう。復旧以上の工事については、議論の余地があります。

毎日新聞対談に出ました

3月28日の毎日新聞対談「森健の現代をみる」「東日本大震災10年 今後の復興事業の課題は」に出ました。
・・・東日本大震災から10年、インフラなど復興が進む一方、被害の爪痕は各地に残っている。行政はこれまで何ができ、何ができなかったのか。今後の課題は何か。震災発生直後から9年半、復興事業に関わった元復興庁事務次官・岡本全勝さんに、ジャーナリストとして被災地取材を続けている森健さんが聞いた・・・。
森さんとは初対面です。栗原俊雄記者とお二人の的確な質問と構成で、読みやすい内容になったと思います。

指摘されている問題について、いくつか答えました。
人が戻らない点について。
・・・背景には戦後日本の社会通念と社会構造があります。子どもたちは都会に出ていって後継ぎがいない。津波で被災した後、借金してまで商店や工場を続ける気はない。高度成長は地方の農業や漁業、自営業者の子どもが都会に出てサラリーマンになることで支えられてきました。親も子もそれを望んでいた。その通念が変わらない限り過疎問題は解決できません・・・

産業が戻らない点については。
・・・工場の無料貸し出しや設備への補助金、ノウハウの提供など、これまでにないことに踏み切りました。国が直営する企業を作るわけにはいきません。国費で応援するとしても、銀行や投資家などが将来性のある事業に投資をして、産業が栄え雇用の場ができる、というのが望ましい。どこかで線を引かなければなりません。「ここまでは国費ですよ。ここまでは二人三脚ですね。ここからはあなたたちの責任ですね」と・・・