カテゴリー別アーカイブ: コメントライナー

コメントライナー寄稿第6回

時事通信社「コメントライナーへの寄稿、第6回「最低賃金決定に見る政治の役割」が16日に配信されました。また、20日にはiJAMPにも掲載されました。今回は、最低賃金を素材に、審議会のあり方と政治の責任を取り上げました。

今年の最低賃金(時給)が決まりました。最高は東京都の1072円、最低は青森県ほか10県の853円です。加重平均では961円です。31円という過去最高の引き上げ額になりましたが、フランスやドイツでは1500円前後で、日本の低さが目立ちます。
給与水準は労使の交渉で決まるものですが、最低賃金は特別な決定過程を取っています。毎年、中央最低賃金審議会が改定の目安を作成し、それを基に各県ごとの地方最低賃金審議会が地域別最低賃金を答申し、各県労働局長が決定します。労働者代表と使用者代表が調整する形です。しかし2007年には、生活保護基準を下回るという変なことになりました。私は「憲法違反ではないか」と書いたことがあります。ドーア教授のコラムにも引用されました。

安倍内閣は「働き方改革実行計画」(2017年)において、「最低賃金については、年率3%程度をめどとして・・・引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す」と決めました。内閣が決めずに、審議会が決めるに際して「外から」注文をつけるのです。おかしな話です。関係者の意見を聞いて、内閣や知事が決めればよいのです。

コメントライナー寄稿第5回

時事通信社「コメントライナーへの寄稿、第5回「小さな政府論の罪」が配信されました。

政治家や報道機関は、「歳出削減、公務員数削減」「小さな政府」を主張します。国民もそれを支持します。予算と職員数の総量規制と「スクラップ・アンド・ビルド原則」の適用がその手法です。
しかし近年、政府の業務は増えています。感染症対策、デジタル化、子どもの貧困対策、地球温暖化対策… 。新しい課題が生まれ、新しい法律がつくられます。仕事は増えるのに、職員数は増えない。すると、残業を増やすか、非正規職員に委ねるか、目立たないところで手を抜くかしかありません。

企業ならもうからない業務はやめるのですが、行政は法律に基づき業務を行っているので、簡単には廃止できません。政治家と国民は総論において「小さい政府」を要求しますが、各論において「この法律を廃止し、業務をやめよ」とは主張しません。それは公務員に委ねられます。ところが、各法律と予算には必ず関係者がいて、廃止や縮小に反対します。

また、企業でも社員削減は必要ですが、企画部門や開発部門で削減を続けた先にあるのは、売り上げの低下でしょう。攻めの部門に人と予算を増やさない企業は衰退します。行政機構は、社会の課題に応えるための組織です。削減だけではだめで、新しい課題に人と予算をつけて取り組まなければなりません。

政治家や報道機関が主張すべきは、「必要な課題と業務に予算と職員を増やせ」でしょう。そして総量規制を続け、削減を主張するなら、具体的に「この業務を廃止縮小せよ」と示すことが必要です。

コメントライナー寄稿第4回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第4回「憲法改正は地方自治の規定から」が配信されました。

制定後70年以上にわたって改正されなかった日本国憲法。世界で最も古い憲法になりました。ようやく国会において、憲法改正の議論が進み始めました。
では、どの条文を改正するのか。憲法第9条は第一の争点ですが、国民の間に大きな隔たりがあり簡単には進まないでしょう。私は、地方公共団体の機構の柔軟化が、意味がありかつ最も早く改正できると考えています。

憲法 第 93 条は、地方公共団体の二元代表制(大統領制)を定めています。私の提案は、二元代表制にするか議院内閣制などどのような機構にするかは、各地方公共団体が選べるようにするということです。
憲法が地方公共団体に二元代表制を義務 付 けたことは不思議です 。中央政府は議院内閣制です。地方自治の先輩であるヨーロッパやアメリカでは、様々な形態が採用されています。議長が市長を兼ねるもの、複数の委員が委員会を作り立法と行政を担うもの、議会が「市管理人」を任命して専門職の人が執行を担うものなどです。

なぜ、二元代表制以外の仕組みを認めるのか。一つは、簡素化です。もう一つは、議会に緊張を持ち込むためです。議院内閣制などにすると多数を占めた勢力は執行を担い、自分たちの主張を実行することになります。議論は緊張感のあるものになると考えられます。
小規模自治体では、二元代表制以外が効果的だと思います。従来通りが良いと考える地方公共団体には影響がありません。よって、改正は容易です。広く議論されることを期待します。