カテゴリーアーカイブ:社会の見方

世界に売り出せ日本の魅力

2009年11月8日   岡本全勝
嶌信彦著『日本の世界商品力』(2009年、集英社新書)は、これからの日本が伸ばすべき産業を、「クール・ジャパン」という分野で解説しています。
「格好良い日本」「世界があこがれる日本文化」といったらよいでしょうか。
アニメ、漫画、ゲームといったコンテンツ産業だけでなく、ファッション産業、和食産業、観光産業、スポーツ・イベント、小説など。世界で、日本らしさが、高く評価されています。それを伸ばそうという主張です。
寿司や和食は、一部の好き者が食べる、珍しい食べ物ではなくなりました。ポケモンは3兆円を稼いだそうですし、イチロー、松井の活躍、村上春樹の小説なども。
課題は、これらを日本の「主力産業」として育てる戦略です。

価値を生む経済、バブルの経済

2009年11月6日   岡本全勝
今回の国際金融危機が示したことは、実体経済を伴わない金融は、いずれは立ちゆかなくなるということでした。バブル経済の一種だったのです。1980年代後半の日本のバブル経済と比べると、土地を担保にした点は同じです。違ったのは、債券化されより複雑化し、そして世界中に売られたことです。国際金融の規模が、実物経済より大きくなったことは、早くから指摘されていました。
目を歴史に転ずると、もの作りや貿易でリードした国が、金融で儲ける国に「進化」し、そして衰退する例があります。イタリアの都市国家、オランダ、イギリスです、今のアメリカが、その道を歩むのかどうか。
もちろん、金融が悪ではありません。実物を伴わないものは、ゲームであり、いずれ破綻するということです。かつて、金融には「裁定型業務」と「価値創造支援型業務」の二つがあるという、池尾和人教授の主張(2008年9月21日)を紹介しました。
経済が成長するためには、モノなりサービスなり、価値を生まなければなりません。そして、これからの日本は、そのうちの何を伸ばすのか。

近代日本の成功・本人の努力と環境の幸運と

2009年10月29日   岡本全勝
近代日本が驚異的に成功した理由には、日本自身の努力(国民の努力と政府の舵取りが良かったこと)があります。しかし、日本の努力だけでは、こうも成功しなかったのではないかというのが、わたしの考えです。その際の、日本を取り巻く条件(国際的な条件)も、大きかったということです。
戦後の高度成長は、日本の努力だけでなく、競争相手がいなかった、追いかけてくる相手がいなかったことが、大きかったのです。アジア各国はそれぞれの事情で、日本を追いかけることができませんでした。それ故に、日本だけが先進国を追いかける利益を独占しました。1990年代になってアジア各国が追いかけてくるようになると、日本経済の優位性は、弱くなりました。このことは、何度かこのHPで書きました。
もっとすごかったのは、明治維新から日露戦争までです。東洋の島国が30年間で列強と伍するまでになるという、世界の歴史でもまれに見る大成功でした。維新の英雄たちの活躍がなければ、この成功はなかったでしょう。しかし、このときも、国際条件が幸いしました。
アメリカは南北戦争で忙しく、イギリスとフランス、ロシアは、クリミヤ戦争で忙しく、日本にかまっていられなかったのです。あの列強諸国が、侵略の手を控えた時期、19世紀後半に日本は、世界にデビューしたのです。アジア各国は、列強の支配や影響に悩みましたが、日本だけが、違う道を歩むことができました。日本が中国などと比べ、富国強兵・殖産興業につとめたことは、評価されるべきでしょう。しかし、ペリー来航が1800年だったら、どうだったでしょうか。もちろん、アメリカの事情で、そんなことはありえませんでしたが。
近代日本の歴史で、この二つの時期、19世紀後半と20世紀後半の日本の驚異的成功は、日本だけでなく、世界の歴史として記録されるでしょう。しかし、もしその時期が半世紀だけ、前か後にずれていたら、これほどの成功はなかったでしょう。
勝者は成功を自分の功績としたがり、敗者は責任を他者に負いかぶせたがります。真実は、しばしばその中庸にあります。あるいは、視野の外にあります。

近年の日本の経済発展

2009年10月28日   岡本全勝
中井浩之著「グローバル化経済の転換点」(2009年、中公新書)を読みました。今回の国際金融危機と、その背景の国際経済を、わかりやすく簡潔に説明しておられます。一生懸命輸出してお金を貯める「アリの国」と、借金をして輸入をする「キリギリスの国」というわかりやすい表現で、世界貿易と金融の不均衡を解説しておられます。問題は、キリギリスの紙幣で、アリは貯金をしている・金を貸しているということです。詳しくは、本をお読みください。
もっと本格的な類書もあるのでしょうが、新書という大きさが、私たちには読みやすく、ありがたいです。
特に、この20年間の日本、アジア各国、世界の経済成長が、わかりやすく図示されています。その間に、世界の経済は大きく拡大し、特にアジアの発展が著しいです。欧米も、そこそこ伸びています。そして、日本が、伸び悩んでいます。
拙著「新地方自治入門」(2003年)では、驚異的な経済成長で欧米に追いついた日本を背景に、日本の行政を解説しました。その後、アジアの国々が急速に追いついてきて、一方、日本は新たな発展に進むことができませんでした。2010年には、GDP総額で中国に抜かれることは、確実だそうです。もちろん、人口に10倍の差があるので、国民一人当たりの額では、10倍の差があるということですが。「世界第二位」とか「非白人国で唯一成功した国」といった表現は、過去のものになります。
では、日本はどうすればよいか。それは日を改めて、書きましょう。

国際金融危機と政府の役割

2009年10月24日   岡本全勝
昨年9月にいわゆるリーマンショックが起き、世界規模の金融危機が発生しました。そしてそれは、世界同時不況を引き起こしました。100年に一度の危機、あるいは戦後最大の不況といわれるほどの激震でした。対応を誤れば、世界恐慌の恐れがありました。いろんな考察がされていますし、これからも出されるでしょう。
私も官邸で、いろんなことを考えました。
まず、政府の責任、日本政府は何をするべきかです。国際金融という世界は、二つの意味で、政府との関係が難しいです。一つは国際的ということで、それを監視する責任ある組織がありません。国内なら、各国政府の仕事です。もう一つは、市場に対し、どこまで政府が関与するかという問題です。日本政府が提案した内容は、官邸ホームページに載っています。また、世界恐慌を避けるため、政府は各国と協調して、内需拡大策を採りました。
国際金融市場の不安定性に対し、早くから警鐘を鳴らした学者に、スーザン・ストレンジがいます。「カジノ資本主義」や「マッド・マネー」などの著者です。彼女は、「カジノ資本主義」の中で、結末(現状)を導く重要な決定について、次のように書いています。
・・外交の場合は、例えば戦争をするかどうかは、国家(政治)が決める。しかし、通貨システムの場合は、国家(政治)と市場の両方がある。そして、国家が決定する場合、規制などで市場に介入するという「積極的に決定」する場合と、市場に介入しないでなりゆきに任せる「消極的な決定(非決定)」とがある。
市場がグローバルであることと、技術の変化によって、非決定の方が一般的である・・
私は連載「行政構造改革」で、官僚の不作為(第3章二1注41)や、政治の決断の先送り(第3章三2)を取り上げました。