カテゴリーアーカイブ:社会の見方

国際交流の成功事例・JETプログラム

2010年10月2日   岡本全勝

10月1日朝日新聞オピニオン欄、ウィリアム・ブリアー元アメリカ国務省日本部長の発言「日本を広める第3の波」から。
・・グローバル化がますます進む今日の日本に欠かせない国際交流事業がある。JETプログラムという、米国人青年らによる小中学、高校での英語補助学習などを通して、日本の若者に国際社会の窓を開けるユニークかつ大胆な実験だ。最近、このプログラムが政府の事業仕分けの見直しの対象にされているようだが、JETこそ日本政府が最も成功し、どの国もつくり得なかった対市民外交の一つであると強調したい。
JETを通じて米国、その他の先進英語圏などから参加した多くの若者たちは、日本を好きになり、日本語を話し、日本人や文化を理解してきた。この若者たちは米欧世界における日本研究の「第3の波」をもたらしている、と私は言いたい。
米国における第1波は、19世紀後半にあった。米国人美術収集家たちが日本美術商と協力し合い、ボストン美術館やワシントンのフーリア美術館に優れた日本コレクションを収蔵した。日本の美と文化は米国人を魅了し、最初の日本研究を打ち立てた。
第2波は、悲劇的な第2次大戦の結果として出てきた。戦時中、米政府は主に日本人捕虜の尋問のため、何千人もの日本語話者を育てた。多くは戦後、米国に戻り、新たな興味を抱いて日本研究に取り組んだ・・
1987年に始まったJETは第3の波を引き起こし、新たな世代を生んでいる。JETを卒業した米国青年たちは、以前とは全く異なった日本および日本人観を持って帰国する。多くは日本に好感を持ち、米国内でそれを伝える重要な役割を果たしている・・
米国のフルブライト基金や英国のローズ奨学金もあるが、日本はJETこそ政府の国際教育事業の最大の成功事例と誇るべきである・・
JETプログラムについては、こちらをご覧下さい。

日本の競争相手は欧米から中韓へ

2010年10月2日   岡本全勝

10月1日朝日新聞オピニオン欄「円高、怖くない」から。
野口悠紀雄さんは、名目為替レートは1995年以来の円高だが、日米の物価上昇率の違いを調整した実質円ドルレートでは円安であることを指摘し、
・・今でも実質レートで見れば、適正水準に比べかなりの円安です。この程度の円高で悲鳴を上げているようでは、日本の輸出産業の競争力はかなり落ちているといえます。すでに「輸出立国」という経済モデルが崩壊しているのです。輸出立国モデルが崩れた後に日本が目指すべきモデルは何か。それはITや先端的金融など生産性の高いサービス産業を中核とした経済だと考えます。
米国では1995年から2009年の間に、製造業の雇用者数が約540万人減少した一方で、サービス産業は約1,820万人も増えました。特に、「金融」「ビジネスサービス」「教育・健康」など付加価値の高いサービス産業3部門での雇用の増加は1,057万人にも上りました。人材が製造業からサービス産業にシフトしたわけです・・
政府がやるべきことは、競争力を失った輸出産業の生き残りを為替介入などで助けることではない。円高によって工場の海外移転が進み、国内雇用が失われるのは不可避です・・むしろ、ITや金融分野で有能な人材を育成するための支援が必要です・・

加護野忠男さんの発言から
・・企業の元気を奪っているさまざまな規制を取り除いてほしい。真っ先に手をつけるべきなのは、企業経営を監視するコーポレートガバナンス(企業統治)の制度です・・二つ目は、労働時間や残業についての規制緩和です・・
私の主張は少数意見かもしれませんが、そこまで言うのは、競争相手が変わったからです。90年代までは欧米企業がライバルで、日本は「働き過ぎだ」と批判されました。欧米は労働時間短縮に熱心だったので、日本は規制を強化しても戦えました。
いまや競争相手は中国や韓国と言っていい。中韓の企業は経営判断が速いし、政府も多方面から企業を支えています。現場の働きようも尋常ではありません。欧米と競争した時代の規制を維持していたら、日本は勝てません・・
詳しくは、原文をお読み下さい。

日本は本当に不安な時代か

2010年9月30日   岡本全勝

読売新聞9月30日夕刊健康欄、内田樹さんのインタビューから。
「日本中が不安や閉塞感に覆われているように思います」との問に対し、
・・いつの時代でも将来への不安はあったと思います。バブルのころのほうが僕は不安でした・・60年安保のころには、日本は戦争に巻き込まれるんじゃないかという不安があった。それに比べると、今の不安は大したことはありません。
・・今の日本は、未来の予見可能性がきわめて高い。他国からの侵略や内乱、通貨の暴落などの可能性はほとんどない。戦後65年で今ほど変化の幅や選択肢が限られている時代、言い換えると社会システムが安定している時代はない。不安というより、退屈です。それは安定の代償です。

「日本は今も世界第2位の経済大国なのに、豊かさを実感できません」との問に対しては、
・・これだけ豊かでまだ足りないというのは、貪欲です。世界に類のないほど安全で、環境に恵まれ、平和な国になったことを評価すべきです。持っていないものを数え上げる人間と、持っているものを数え上げる人間では、行動の姿勢が違います。あれがない、これがないと不満を言う人間は、誰かが何とかしてくれるのを待っている・・

「どんな社会を目指すべきですか」との問に対しては、
・・先進国はいずれどこも経済成長が止まり、人口が減ります。日本が少し先を行っているだけです。右肩上がりの成長が終わっても、日本には十分余力があるので、資源をうまく回せば住みよい国をつくれる。みんながそこそこ幸福に生きるにはどうしたらいいかが、国家目標になります。
この問題を解決した先行事例がないから、みんな不安になっていますが、日本は世界の先頭を行っているのだから、モデルがないのは当然です。世界の範となるモデルを構築するトップランナーだという国民的合意ができれば、不安も閉塞感も吹っ飛びます・・
詳しくは原文をお読み下さい。夕刊とインターネット版では、少し内容が違うようです。

人類の繁栄、地球からの収奪

2010年9月27日   岡本全勝

9月24日朝日新聞、連載「いきものがたり」は、人類の現代の繁栄が、いかに自然を「収奪」しているかを、数字で示していました。
2010年の人口は69億人、これは1970年の約2倍です。2050年には91億人になります。穀物需要は22億トンで、1970年の2倍です。人口がこの40年間で2倍になったのですから、当然です。食糧増産のために、灌漑耕地面積が、1970年の1億7千万ヘクタールから、2008年には3億ヘクタールになりました。取水量は、2010年で4,400立方キロで、20世紀初頭の8倍だそうです。湖や川から、水がなくなっています。
1965年のエネルギー消費は、原油換算で40億トン。2008年には110億トンです。50年間で、約3倍になっています。

優等生化する新入社員

2010年9月16日   岡本全勝

日経新聞9月16日の夕刊が、興味深い写真を載せていました。1面の連載です。1986年の日本航空の入社式と、今年の入社式の写真です。今年の女子の新入社員は、みんなが黒のスーツ、白のシャツ、黒の靴、髪型まで一緒なのです。制服かと間違います。たぶん、化粧の仕方も同じなのでしょうね。それに対し、86年の彼女たちは、さまざまな服装をしています。びっくりします。
採用が厳しくなったからでしょうが、ものの見事に画一化され、個性を封印しています。個性の豊かさや多種多様な人材といったスローガンは、何だったのでしょうか。「多種多様な人材を求めない企業と、個性を表に出せない新入社員。そこから組織の活力は生まれてくるのだろうか」と、記事は解説しています。
日本社会のあり方を考えさせる、見事な写真と記事でした。