カテゴリーアーカイブ:社会の見方

頑張れ浅川さん。国際機関での日本の貢献

2011年1月27日   岡本全勝

今日の朝刊に、財務省の浅川雅嗣副財務官が、OECDの租税委員会議長に就任することが載っていました。国際的な税制ルールづくりの場だそうです。国際機関で日本政府や日本人が活躍するのは、うれしいですね。
浅川さんとは、麻生内閣の秘書官として、一緒に仕事をしました。アメリカ発の世界同時不況に際し、日本政府がIMFに1千億ドル(約10兆円)の融資をし、中小国の資金繰りを助けたのは、その時の話です。国際金融の話は、私には新鮮で、たくさんのことを教えてもらいました。今朝、携帯電話にお祝いのメールを打ったら、夕方にパリから返事が来ました。

日本人の活躍とともに、このようなニュースが記事になることが、うれしいです。読者の関心がないのか、書く能力を持った記者が少ないのか、それを理解できる編集長がいないのか。このような記事は、めったにお目にかかれません。また、解説がないと、ほとんどの読者はわからないのではないでしょうか。
たぶん、それを書ける記者を、養成していないのだと思います。かつて書きましたが、日本の新聞やニュースの国内閉鎖性は、世界でも珍しいと思います。1億人の市場、日本(その国)だけで通じる日本語(言葉)、英語でなくてもできる大学教育。これを満たしている国は、日本くらいでしょう。フランス語やドイツ語、ロシア語は、1国だけではありません。エリートと財界人が、外国語(英語)なしで仕事ができる数少ない国なのです。
先に述べた1千億ドルの融資についても、総理記者会見の際に質問をした記者は、一人もいませんでした。また、大きな記事にならなかったので、ほとんどの日本人は知りません。そしてそれがどのような効果を持ったかも、記事になっていません。
日本が国際社会で貢献するには、輸出や援助も一つのバロメーターですが、このような国際経済対策やルールづくりも重要です。そして、それを理解して記事にできる記者を養成することも、必要ですね。次は、浅川議長の活躍を伝える記事を、期待しましょう。

街の姿、日本らしさとは

2011年1月23日   岡本全勝

22日の日経新聞夕刊に、陣内秀信教授のインタビュー、「都市の華やぎ、本物か。街の姿は人の営み」が載っていました。
・・東京では高層ビルの建設が今も続く。都市の活力は健在なのか。陣内さんは懐疑的である・・
「製造業がダメなら次は金融や不動産業だというやり方では、街は魅力的にはなりません。なんだか外国のブランドばかり目立つようになったという印象です」
「日本は明治維新以降、欧米に学び、追い越すことに傾注してきました。戦後はものすごいパワーで復興し、東京オリンピックや大阪万博で都市を改造し、右肩上がりの成長を成し遂げました。しかし今どうしてよいかわからず、右往左往しているのです」
「40年近く付き合ってきて、イタリアはしたたかだなと思いますね。都市の魅力とは何かという概念がローマの時代からあるんです。絶えず危機意識を持って、都市の在り方を着々と変えてきました。戦後、ミラノやトリノなどの大都市を中心に成長しましたが、1973年の石油ショックが転機でした。中規模の都市が見直されて主役になったのです。優れたファッションやデザインによって高付加価値の製品を生む家族経営が各地域でのしてきて、80年代の成長を支えました」
確かに、街の姿が、その国と地域の「生き様」を表しているのでしょうね。日本は、かつての日本の姿を脱ぎ、欧米化することで発展してきました。そして日本らしさは、どんどん消えつつあります。私は「新地方自治入門」で、絵はがきになる街の風景がないことを指摘しました。京都タワーの上から写真を撮っても、もう京都らしい風景はないのです。日本を紹介する写真は、お寺か神社のような点でしかないのです。
先日、中国の経済発展は素晴らしいが、中国らしさはどこにあるのかと書きました(2010年12月27日の記事)。中国でも同じことを感じました。和魂洋才といった言葉も、聞かれなくなりました。畳の暮らしや和食など、日本らしさが残っている分野もありますが。

円の実力

2011年1月22日   岡本全勝

今日1月22日の朝日新聞経済面に、「円の実力横ばい。2010年、資源国が上昇トップ3」という記事が出ていました。NHKニュースなどで毎日伝えられるのは、円とドルの為替レート(ドルに対する円の価値)がほとんどです。この半年間は、円がドルに対し急速に値上がりし、経済への影響が議論されています。
しかし、日本が取引をしているのは、アメリカだけではなく、世界中の国々と取引をしています。そこで、アメリカ・ドル以外の通貨との為替レートを含め、貿易額を勘案して加重平均するのが、「実効為替レート」です。さらに、通貨の実力は物価変動にも左右されるので、それを調整したのが「実質実効レート」です。詳しくは、記事や解説書を読んでください。
国際決済銀行(BIS)が発表した数値では、2010年の円の実質実効レートは、前年に比べ0.9%の上昇でしかありません。ドルに対しては7%、ユーロに対しては12%値上がりしたのですが、他の国の通貨に対しては値下がりしたのです。例えば、オーストラリア・ドルに対しては9%値下がりしています。
多くの海外取引が、ドル立てて契約されているので、円ドル相場は大きな影響を持っていますが、日本経済・円の実力となると、この実質実効レートが意味を持ちます。
昨年値上がりしたのが、南アフリカ(ランド)、ブラジル(レアル)、オーストラリア(ドル)などで、これらは15~14%も上昇しています。中国(人民元)が-0.6%、アメリカ(ドル)が-4.4%、ユーロが-8%です。
ちなみに、記事によると、2005年を100として円の実質実効レートは、2010年は101.2で、ほぼ横ばいです。強くも弱くもなっていないと言うことですね。長期的な変化は、日本銀行のホームページ(統計データのページ、主要指標グラフの為替)でも見ることができます。日銀のグラフを見ると、ドルに対する円の実力と、世界全体に対する円の実力の違いが良くわかります。毎日のニュースだけでは、わからないものですね。
NHKの定時のニュースの最後で、円ドル為替相場や日経平均、ニューヨーク株式市場が伝えられるようになったのは、いつごろからでしょうか。私が子供の時は、定時のニュース放送では伝えられませんでした。日本が国際化したことの、一つの表れでしょう。昨年、NHKに問い合わせたのですが、「記録が残っていないので、わかりません」との答えでした。

産業別従事者数の推移

2011年1月11日   岡本全勝

1月10日の日経新聞経済面「三度目の軌跡、データで見る」に、わかりやすいグラフが出ていました。1950年代から現在までの、産業別従事者数の推移です。
農林業が、1,500万人から260万人に大きく低下しました。製造業は、700万人から増加し、1964年に農林業を抜きました。1992年には 1,569万人とピークに達し、その後減少し、約3分の2の1,000万人程度にまで減っています。建設業は200万人から、経済成長とともに増加しまし たが、最も多かったのはバブル崩壊後の公共事業拡大期です。1997年に685万人に達しましたが、その後は公共事業の削減もあり、500万人程度に減っ ています。
卸・小売業、飲食店は、700万人程度から増加し、1996年に1,463万人と製造業を抜きました。その後、少し減っています。医療・福祉は600万人で、建設業を抜きました。
このように言葉で書くとわかりにくいですが、記事に出ているグラフはわかりやすいです。日本経済や産業の移り変わりが、一目瞭然です。

社会の制度・インフラの輸出

2011年1月10日   岡本全勝

1月9日の朝日新聞経済欄で、韓国がカンボジアやラオスで、証券取引所の売り込みをしていることを伝えていました。市場経済の重要なインフラである証券取引の仕組みを、教えるのです。
新興国にとって、もの作りを輸入するだけでなく、経済や社会の制度・インフラを輸入することも重要です。日本も明治以来、たくさんの制度を欧米から輸入しました。典型が、法律や行政の仕組みです。
日本も先進国になったので、アジアなどの新興国のお手伝いをすることが、期待されています。法務省が、カンボジアなどでの法整備に協力していることが有名です(参考文献、松尾弘著『良い統治と法の支配-開発法学の挑戦』(2009年、日本評論社)など)。また、JICA(国際協力機構)が、いろんな技術援助をしています。
少し視野を転じて、先進国を含めた世界への社会インフラの貢献となると、あまり思いつきません。かつて、日本が先進国に「輸出」した法律の例として、迷惑メール防止法を教えてもらったことがあります。アメリカの国会議員が、日本に勉強に来たのです。他に、何かありますかね。