カテゴリーアーカイブ:社会の見方

如月の望月に桜は咲いたか2

2025年4月14日   岡本全勝

如月の望月に桜は咲いたか」の続きです。
友人の古文の先生に聞いてみました。次のような回答をもらいました。なるほど、写実の世界ではなく、願望の世界なのですね。

・・・西行は、この歌を少なくとも、亡くなる三年前には詠んだようです。
西行が亡くなったのが1190年2月16日、この歌へのコメントが載せられている歌合せの記述があり、それは1187年のものらしいです。西行の切なる願いが歌われたものととらえられます。

そして、2月15日は、釈迦入滅の日とされている日だということが大きいのではないかと思われます。出家をした西行がお釈迦様にあやかってと思うのは想像に難くないです。
また、春は1月、2月、3月で、2月15日は、春のど真ん中。中秋の名月も秋のど真ん中、旧暦8月15日、かぐや姫もこの日に月の都に帰ったのだろうと思わせます。

実際の山桜の咲き誇る状態とは別に、お釈迦様にあやかり、春のど真ん中にあの世に行きたいという西行の心が詠まれていると考えるのはいかがでしょうか・・・

宗教と霊性と

2025年4月14日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞文化欄「無宗教でなぜ占い?見いだした価値 スピリチュアリティで「自分」肯定」から。

・・・日本人は無宗教と言われる。統計数理研究所の国民性調査で「信仰や信心」をもっていると答えた人は18年で26%だった。特定の宗教を信じていると職場や学校で公言する人も少ない。
しかし、それでも初詣には行き、葬式では手を合わせる。宗教と意識はされないが、科学的ではない占いやパワースポットを信じる人もいる・・・

・・・宗教学者の岡本亮輔さんは、宗教を信仰、所属、実践という三つの面から分析する。神道であれば、地域社会といった所属や、初詣などの実践も含んでいる。信仰の面からのみ宗教を捉えることは適当ではないという。
宗教学では占いや瞑想(めいそう)法などを「スピリチュアリティ」という分野として、考察の対象とする。「かつての宗教は、教団という共同体への所属で信者に安心感を与える面もあったが、スピリチュアリティは所属の要素を限りなく減らし実践に特化した宗教と言える」
宗教学者の伊藤雅之さんによると「サラダバー型宗教」とも表現されるという。伝統的な宗教は、教義の体系をパッケージとしてそのまま受け入れることを信者に求めた。しかし、身体の実践に特化するヨガなど、宗教のうち好きなところだけを選び取ることが好まれるようになった・・・

・・・占いやヨガ、瞑想、パワースポット巡りなどさまざまな実践を含むスピリチュアリティに通底するのは、「大自然や守護霊、内なる自分など、不可視の存在と神秘的なつながりを得て自己を高められるような体験」だと伊藤さんは説明する・・・
・・・なぜそうまでして人は宗教的な何かを信じるのだろう。岡本さんは「宗教」がなくならない理由として、自分がコントロールできないことへの不安を解消したいからだと説明する。その最たるものは死だ。「合理的なものでは軽減できない不安に応える非合理的な機能を宗教は担ってきた。人間に根源的な不安がなくならない限り宗教はなくならない」・・・

完璧を求めない社会

2025年4月13日   岡本全勝

4月13日から、大阪・関西万博が開催されます。報道機関が大きく報道しています。私は、準備の遅れについてが、興味深かったです。

NHKウェッブ「大阪・関西万博 きょう開会式 あす開幕 準備の遅れなど課題も」(4月12日)が次のように伝えています。
・・・海外パビリオンについては、参加国がみずから建設する42のパビリオンのうち、ネパールは、内装工事などが進んでおらず、開幕に間に合わない見通しであることが関係者への取材で分かっています。協会が建設するなどしたそのほかのタイプの海外パビリオンについても、数か国で準備が遅れていると見られています・・・

関係者は困っているでしょう。
かつてなら、少しでも遅れれば、あるいは欠陥があると、上司は部下を叱責し、自らの責任を重く感じました。社会も大騒ぎしました。「準備で遅れが出たら、徹夜をしてでも、期日までには間に合わせる」。これを、日本の長所だと、自慢にもしていました。
しかし今回は、かつてのように大騒ぎせず、淡々と受け止めているのではないでしょうか。労働者や資材の不足は、いくら徹夜してもどうにもなりません。
もちろん期日に間に合うこと、完璧に準備ができることが望ましいです。でも、展覧会で少々遅れが出ても、世の中にそんなに悪影響を与えませんよね。

日本社会にあった「過度に完璧を求めること」「間に合わせるために、精神主義で頑張ること」が緩和されるのはよいことです。
日本が成熟社会に入ったことの現れかもしれません。ただし、命に関わることについては、こんな悠長なことを言ってはこまります。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で見られたように、全ての患者に完全な医療を提供することも不可能です。どこかで折り合いをつける必要があります。

如月の望月に桜は咲いたか

2025年4月12日   岡本全勝

4月7日の朝日新聞「月刊データジャーナリズム」「京の花見1200年、地球が分かる」が載っていました。
・・・古文書や日記には「桜が満開」「花見をした」といった記録が残り、京都の桜は満開日が1200年余にわたって断続的に確認できる世界で最も長い花のデータとされます・・・
・・・大阪公立大の青野靖之准教授(農業気象学)は、京都でヤマザクラがいつ満開になったのかのデータを1990年ごろから集めている。史書や日記から日付がわかる記録を探し、812年から今年まで1200年余りのうち、837年分の満開日を特定した・・・
・・・青野さんがまとめたデータを分析すると、満開日は4月中旬が多く、最も遅かったのは1323年の5月4日だった。それが、1820年代ごろからどんどん早くなり、近年は毎年のように記録を更新。これまでに最も早かったのは2023年3月25日で、次が21年3月26日だった・・・

ついている図表を見ると、江戸時代までは、平均では元日から100日以降に咲いています。もちろん、早い年も遅い年もありますが。
西行法師が、「願わくは花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」と読んだ如月の望月は、旧暦の2月15日の満月、新暦だと3月半ばから下旬ですよね。これだと、如月の望月のころは、桜は咲いてないのでは。
「弥生の望月のころ」では、駄目だったのかなあ。

国立西洋美術館、梶光夫さんの西洋七宝展

2025年4月11日   岡本全勝

先日の休日に、上野の博物館をハシゴしてきました。桜も見頃で、大変な人出でした。

一つは、国立西洋美術館です。サンディエゴ美術館所蔵の西洋絵画展です。なかなかよいものを、集めています。元をたどると、中世・近世の西洋の寺院や金持ちが持っていたものが、売りに出されたり取られたりして流失した後、美術館に入ったのでしょう。

別に、「梶コレクション展―色彩の宝石、エマーユの美」もやっていたので、どんなものか見ました。エマーユとは、西洋の七宝です。きれいな、細かく手の込んだ作品が、たくさん並んでいました。梶光夫さんが一人で集められたとのこと。

ん? 梶光夫さんとは、聞いたことがある名前だなあ。「青春の城下町」の梶光夫さんと同名。若い人はこの歌を知らないでしょうが、私が子どもの頃に流行った歌です。昭和39年、東京オリンピックの年です。
私の好きな歌の一つです。♪流れる雲よ城山に 登れば見える君の家 灯りが窓にともるまで 見つめていたっけ会いたくて~。歌詞も旋律もよいですねえ。
梶さんは歌手をやめて、宝石商を継がれたと聞いていました。家に帰ってインターネットで調べたら、やはり同じ人でした。

と書いていたら、11日付けの日経新聞文化欄にご本人が書いておられました。
東京芸術大学美術館の「相国寺展」もよいですよ。