カテゴリーアーカイブ:社会の見方

消費減税論の7つの問題

2025年4月30日   岡本全勝

4月25日の日経新聞大機小機は、「消費減税論への7つの問い」でした。
「物価高や米関税措置への対策として、「時限的な消費税減税」を求める声がある。時事通信社の4月世論調査では、賛成が68.4%と反対の14.0%を大きく上回った。夏の参議院選挙を前に、この議論は与野党を巻き込んで盛り上がることだろう。消費減税は現実的な選択肢となり得るのか。7つのチェックポイントを考えてみた」として、次の7つが挙げられています。

すこしでも経済の仕組みを理解している人なら、わかることです。このような議論を無視して「減税」を主張することは、国民を馬鹿にしているようにも思えます。

(1)今はインフレである。景気刺激のための減税はインフレを加速する。
「困っている人を助ける」ことが目的ならば受給対象を絞った給付金が適切なのではないか。
(2)今の日本経済は、需要が足りないというよりは供給力不足が問題。
コメが典型的で、作る人が足りなくて値段が上がっている。消費減税という政策は、人手不足という課題に対して全く無力である。
(3)いつから税率を下げるのか。
消費税率を変えるには法改正が必要であり、国会が今すぐ取り掛かったとしても年内実施は容易ではない。
(4)時限的な消費減税を実施する場合は「いつ元に戻すのか」。
(5)消費減税の際には、増税時と同じコストがかかる。
商店は値札を替えねばならず、会計ソフトなども更新することになる。納税する事業者の負担がある。
(6)消費減税によって個人消費が増えるという保証はない。
コロナ禍の際の10万円の給付金さえ、ほとんどは貯蓄に回った。
(7)確実なのは、減税によって国の財政赤字がさらに悪化すること。

日産社外取締役、全員留任

2025年4月27日   岡本全勝

4月4日の朝日新聞「日産社外取締役「全員留任」の波紋 業績不振で社長交代、監督役に「何してきたのか」」から。

・・・日産自動車は、1日にイバン・エスピノーサ新社長が就任し、新体制に移った。同社では今春、前任の内田誠社長や3人の副社長らがそろって退任した。一方、「内田体制」を支えてきた社外取締役は全員が留任の方向だ。経営の監督役である社外取締役のあり方を巡り、議論を呼んでいる・・・

・・・ 一方、取締役会の監督責任については「責任の重大さは理解しているが、新体制を構築して皆さんに判断してもらうことを選択した」と説明。12人の取締役のうち、日産と筆頭株主の仏自動車大手ルノー出身者を除いた8人の社外取締役の全員が留任する方針を明らかにした。
この方針について、企業統治に詳しい牛島信弁護士は「内田社長ひとりに責任を押しつけているように見える。一人も辞めずにどうして改革ができるのか」と批判する。さらに、「業績は一日二日で悪くなったわけではない。社長を代えることもできたのにしなかった」として、取締役会の3分の2を占める社外取締役が監督責任を果たさず、機能していなかったと分析した・・・

・・・一方、社外取締役全員の留任が「ベストではないがベターな判断」とするのは、早稲田大学ビジネススクールの池上重輔教授だ。日産のような世界的企業の取締役に適した人材が見つけにくいことや、経営再建の重責を担わなければいけないことなどから、「辞めたところで人が見つからず、これまでより悪化する可能性もある」と話す。
近年の金融庁などの指針改定で、東証プライム上場企業は独立社外取締役が取締役会の3分の1以上を占めるようにすることが求めらている。そのため、社外取締役の要件を満たす人材が不足しているという・・・

過疎化と東京集中

2025年4月25日   岡本全勝

4月5日の日経新聞夕刊が、「地域おこし協力隊、最多7910人」を伝えていました。総務省の発表で、2024年度の地域おこし協力隊隊員数が7910人で過去最多になったとのことです。2023年度までの5年間に任期を終えた隊員のうち、定住したのは69%だそうです。

他方で、同じ夕刊で、「東京一極集中なぜ止まらない?」も載っていました。
東京への転入超過は、2019年には8万人を超えていました。コロナの影響で2021年には5400人まで減ったのですが、2024年には8万人近くまで増えました。

東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過は、男性が6万3千人、女性が7万2千人です。転居理由は「希望する大学や仕事がある」が5割です。女性は、医療福祉、小売業、飲食店などのサービス業を希望するとのこと。
女性が減る地方では、結婚しにくくなります。20~34歳の未婚者の男女比は、福島、茨城、富山、栃木、福井、静岡、山形県で30%以上の「男性余り」になっています。

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』

2025年4月24日   岡本全勝

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』(2024年、岩波新書)を読みました。勉強になります。アメリカ、フランス、イラン、日本の4か国の「作文」「作文教育」を比較して、文化が違うと「正しい論理」が異なることを示しています。
私は「論理的思考とは何か」という表題にひかれて、「どのようにしたら論理的思考ができるのか」を知りたくて買ったのですが、全く違いました。わかりやすい表現にすると「文化の違いに見る論理の違い」です。論理的思考は、世界で一つではないのです。
著者はアメリカの大学に留学し、小論文を書くのですが、「評点不可能」と突き返されます。どんなに丁寧に書き直しても、同じ評価です。ところが、アメリカ式小論文の構造を知って書き直すと、評価が三段跳びでよくなりました。ここで、求められていること、日本とアメリカの論理の違いを発見します。

第二章は、「「作文の型」と「論理の型」を決める暗黙の規範──四つの領域と四つの論理」と題して、次のように、4つの国の規範と論理を比べます。
経済の論理──アメリカのエッセイと効率性・確実な目的の達成
政治の論理──フランスのディセルタシオンと矛盾の解決・公共の福祉
法技術の論理──イランのエンシャーと真理の保持
社会の論理──日本の感想文と共感

アメリカを経済、フランスを政治、イランを法、日本を社会と表現することには、厳密性や論証に欠けるとの指摘があるかもしれません。しかし、4つの国の論理を表現するには、わかりやすい言葉です。
なお、取り上げるのは作文で、アメリカのエッセイは、日本語の随筆ではなく、英語本義の小論文・試論です。ディセルタシオンは、フランスの小論文。エンシャーもイランで作文の意味ですが、これは求められるものが全く異なっています。
国際社会で活躍する人には、とても参考になると思います。日本の職場で文章を書く際に、「結論から書け」と指導されます。私もそのように心がけました。学校で習った作文と何が違うのか。その参考にもなります。お勧めです。

なお、日本文化論についても考えさせられました。かつて、西欧と日本の生活文化の違いを比較する、日本人論が流行りました。それらは極端に言えば、西欧を「進んだ文化・世界の標準」と見なして、「遅れた・特異な」日本を比較するものでした。この本のように、複数国を比較したものがなかったことに気づきます。また、アジアやアフリカ社会と比較したものも、ほとんどありませんでした。
もちろんこの本も、ほかの欧州、アフリカ、アジア、南アメリカを扱っていません。それは一人の研究者では、無理でしょう。

書店減少対策

2025年4月24日   岡本全勝

4月1日の読売新聞「LEADERS」は、近藤敏貴・トーハン会長の「本屋にチャンス届ける」でした。

出版取次大手トーハンが小型書店の開業をサポートするサービス「HONYAL」(ホンヤル)を始めた。出版物の卸売りを担う取次会社が書店の振興に取り組むのはなぜか。近藤敏貴会長に聞いた。

今、全国の28%の自治体に書店がありません。いろいろな手を打っているのですが、まだ減っています。
でも世界を見ると、韓国やフランスなどでは書店は減っていない。むしろ独立系の個性的な書店が増えています。日本でも同様に、小型でも特色のある書店が増える可能性はあると考えたことがスタートです。調べてみると、実際に増えつつあることもわかりました。
これまで日本で小型書店が作りにくかった責任の一端は我々にもあって、少額取引は採算が合わず、辞退せざるを得なかったのです。ホンヤルではその採算モデルを見直しました。

<ホンヤルは連帯保証人や信認金(取引保証金)は原則不要。取り扱いは注文品のみで配送は週1回。小型書店が参入しやすく、取次会社の配送コストも抑える仕組みとし、2024年10月にサービスを始めた>
最初の導入事例は、10年前から町に本屋がなかった北海道南幌町の「はれっぱえほん館」です。
「はれっぱ」は、子どもの室内遊戯施設がメインで、開設後の1年間で来館者数が21万人を超えました。ファミリー層に認知された場所で、新たに絵本の売り場づくりをお手伝いできてよかったと思います。

<紙の出版物の市場規模は1996年をピークに減少に転じ、書店数も20年間で半減した。経営環境が厳しさを増す中、2019年に中期経営計画を策定。本業改革と事業領域の拡大に乗り出した>
取次事業が赤字になる一番の理由は、配送運賃の高騰を経費削減や売り上げでカバーできていないことです。
その中で本業改革をどうやろうかと、ドイツへ視察に行きました。ドイツは日本と同じように本は定価販売で返品もできるのですが、返品率は10%くらいです。日本は30~40%もあります。
何が違うのかというと、日本では出版社が決めた製作部数があり、それを取次会社が書店に配本しています。
ドイツでは発刊の半年から1年前にカタログを作り、書店はそれを見て発注し、出版社はそれをもとに製作部数を決めます。だから返品率が低いんですよ。
こうしたマーケットイン型に全部するのは無理だとしても、少しずつでも変えるべきじゃないかと。日本の出版流通における「川上思考」を、刊行予定をもとに書店が発注する「川下思考」に変えようというのが本業改革の基本的な考え方です。