雇用が個人や社会にとって重要なのは、それが安心の要にあるからです。雇用が安心の要にあるということを教えてもらったのは、宮本太郎北大教授(当時)です。
麻生政権の安心社会実現会議で、「安心と活力の日本へ」という報告書をまとめました。その報告のポイントは、安心の中心には雇用があり、その回りに、子育て、教育、健康、老後があるというものです。私は、安心と聞くと、健康保険や介護保険と年金、そして生活保護制度を思い浮かべていました。しかし、それらの中心に、雇用があるのです。日本社会が安定しているのも、安全安心な社会だといわれるのも、失業率が低いこととともに、労働者が安心して働けることと、そこそこ満足できているからです。それが、個人や家庭の安心にもなっています。
国家の視点からは、経済成長やGDPが重視されます。確かに、豊かさは重要な指標です。また経済成長によって、失業率は低下します。しかし、GDPが大きくても、貧富の差が大きくては、社会は安定しません(そのほかに、政治的・社会的自由と平等も、近代社会の安定には必要です)。生産や消費の数値より、個人にとっては雇用が重要なのです。欧米のように失業率が上がり、また近年の日本のように若者が非正規雇用に追いやられると、個人や家族そして社会の安心は保つことができません。社会の安定にとって、そして個人の安心にとって、雇用が大きな要素です。
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仮想通貨ビットコイン
「ビットコイン」という言葉を目にした方も、多いでしょう。ニュースやインターネットで、話題を集めています。これは、インターネット上に作られた「仮想通貨」です。実際に使われています。
わかりやすい解説が、日経新聞電子版に載っています(ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨。12月29日)。
なぜ、急速に広がっているのか。ビットコインは、金融機関を介さず、少ない手数料ですばやく送金できます。また、キプロスでは、金融危機の際に、政府が銀行預金への課税を決めると、ビットコインが資産の逃げ場になりました。
ビットコインは、通常の電子マネーやプリペイドカードとは違います。日銀金融研究所によると(1)発行体がない(2)発行時の払い込みがない(3)特定の資産による裏付けがないの3点で、従来の電子マネーとは大きく違うのだそうです。
日銀や政府といった、責任ある主体が発行しているのではありません。それでも通用するのは、皆がそれを通貨だと信じているからです。もっとも、その点では、紙幣も同じです。紙切れを、1万円や千円の価値があると信じているのですから。
しかし、通貨発行権は国家の重要な権限でした。実際には、中央銀行である日銀に委託しています。そして、金融政策として通貨の総量を管理しています。各国政府と離れて流通する通貨が巨額になった場合、金融政策や管理にどのような影響を与えるのでしょうか。
さらに、匿名であるので、犯罪に利用されているとも指摘されています。それらを含めて、インターネットが「主権国家」を掘り崩す例です。
住宅、立て替えでなく改修して資産価値維持を
日経新聞12月29日「戦略2014、そこが知りたい」は、和田勇・積水ハウス会長でした。
来年4月の消費増税を前に、住宅メーカーの業績は好調で、積水ハウスは過去最高の利益の見込みです。もっとも、国内の住宅市場は、人口減などで長期的には縮小しています。2012年度の新設住宅着工戸数は89.3万戸で、1996年度に比べ約半分になっています。
「今後、住宅市場の鍵を握るのは何か」という質問に対して。
・・中古住宅の活用だ。今、日本の住宅への累積投資額はおよそ850兆円にのぼる。ただ、資産として残っているのは350兆円程度しかない。それは、25年とか30年くらいの家を壊してしまっているからだ。500兆円もの国富がなくなっている計算になる。スクラップ・アンド・ビルドの時代は終わらさなければならない。
米国では、投資した金額以上の資産価値を維持している。日本に必要なのは、きちんとリフォームをして、その家が20年、30年経っても売却されるときに価値がゼロにならない仕組みをつくること。そうしたとき、住宅メーカーにとっても、新たな巨大市場が姿を現す・・
ところで、積水ハウスのCM(少年と犬)って、泣かせますよ。私は、テレビでは見たことがないのですが。
アメリカ型組織・人事と日本型組織・人事。3
才能があり意欲があって、常に上のポストを狙う人にとっては、アメリカ型の雇用制度が良いでしょう。しかし、そうでない普通の人にとっては、日本型雇用制度が安心できます。
ところで日本型では、労働者は職場で、仕事に関する知識と技能を身につけます。会社の方も、将来を見越して、若い職員に技能を身につけさせ、先輩や上司も指導します。大部屋で、皆と一緒に仕事をすることで、学びます。私も、そうして経験と技能を、身につけてきました。正直言って、職場外での研修より、職場での見よう見まねの方が、有用でした。
アメリカ型では、どのようにして、労働者は技能を身につけるのでしょうか。同僚や上司は、最も重要な技能は他人や部下には教えない、教えるとライバルになるから、と聞いたことがあります。すると、自ら技能を磨き、新しいポストに挑戦しない限り、ずーっと同じポストで仕事内容も給料も変わらず、昇進しないことになります。
それに比べると、日本型は、多くの労働者にとって、ありがたい仕組みです。職場で仕事を教えてもらって、技能を身につけ、昇進させてもらえるのですから。
アメリカ型組織・人事と日本型組織・人事。2
ということで、専門家に教えてもらって、清家篤著『雇用再生ー持続可能な働き方を考える』(2013年、NHKブックス)を読みました。わかりやすく、勉強になります。こんなに内容のある本が、1,000円+消費税で買えるのです。お勧めです。
今の日本では、働く人の9割が、企業に雇われている雇用者です。かつて原稿を書くために調べた頃は、8割でした。さらに進んでいます。農業や自営の商店主などが、廃業しているのでしょう。
雇用の状況やあり方は、その国の政治、社会、会社、そして家族と本人にとって、重要な関心事です。労働力は、経済学では生産要素の一つですが、そのほかの要素と違って、簡単に切り捨て(解雇し)たり、短時間に養成できません。それぞれの労働者にとって、死活問題であり、労働者をお金やモノのように扱うことはできないのです。またそれぞれに能力が異なり、リンゴが高くなったらミカンを代わりに買う、というように取り替えるわけには、いきません。社長から見れば、私もあなたもたくさんいる従業員の一人かもしれませんが、私やあなたそして家族にとって、突然の解雇や処遇(例えば勤務地、経験のない業務)の変更は、人生設計を狂わせます。
そして、前回書いたように、いきなり企業の雇用制度を変えても、社会の仕組みや各人の意識が変わらないと、うまく行きません。今ある仕組みは、それなりに合理性があって続いており、またそれぞれの制度が、お互いに連関しています。
この本では、日本の雇用制度の特徴である、新採一括採用、終身雇用、社内での人材育成、年功賃金、定年退職、退職金制度などに、どのような意味があるか、どうして続いているかを、わかりやすく解説しています。
もちろん、批判されているように、この日本型雇用制度にも欠点があります。従業員を守るために、若者が非正規雇用に追いやられ、労働力の調整弁にされたこと。正規職員と非正規職員の格差。正規職員に求められる超勤などでワークライフバランスが難しいこと・・。
繰り返しになりますが、アメリカ型と日本型のどちらが優れているかではなく、それぞれに長所短所があります。そしてそれぞれの雇用制度(採用と解雇、給与、昇進、職員教育)は、国民の意識や社会の仕組みに深く組み込まれていて、簡単には部分的な改変は難しいのです。革命的な改革も難しいです。では、どのようにして、問題を解決していくか。詳しくは、本をお読みください。