11月23日の日経新聞「日曜に考える」は「生殖補助医療、どう法整備」でした。夫婦間の不妊治療(人工授精、体外受精)は、親子関係に問題を生みませんが、第三者が関わると難しい問題が起きます。夫婦以外の人からの精子や卵子の提供、代理出産です。問題が多いので法律で禁止するという案もありますが、子供を望む親がたくさんいるので、反対も多いでしょう。そして、隠れて行う人や海外に行って行う人が出てきます。
第三者が関わった場合、誰を親と認めるのか。ここから法律の世界に入ります。親子関係を定める必要があるのです。精子を提供してもらった場合、父親はその男性か、生んだ女性の夫か。卵子を提供してもらった場合、母親は卵子を提供した女性か、生んだ女性か。代理母出産をした場合、母親は誰か。提供者をわからないままに、提供を受けた夫婦の子供にするのが、子供の幸せのような気もしますが、親を知りたいと思う子供の声にどう答えるか。
医療技術が進歩したから、出てきた問題です。現行の民法は、想定してません。どれが正しいという問題ではないので、答えを出すのは難しいです。
「臓器移植を進める際に、何をもって死と認定するか」を決めるときもそうでした。役所(官僚)が検討して、答えを出すことができるテーマではありません。論点は整理できますが、政治が決めなければなりません。倫理を政治がどう扱うか。政治や行政を論じる際の重要なテーマだと思うのですが。教科書には、出てこないようですね。
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坂根社長。日本企業、ボトムアップと現場の強さ
日経新聞「私の履歴書」11月は、坂根正弘・元コマツ社長です。11月21日の「現地化の限界」から。
・・2度目の米国駐在は、日本企業と米国企業の強みと弱みを見極める貴重な機会だった。日本企業には米国流の経営を見習って改めるべき点も多いが、逆に「日本のほうが文句なく優れている」と感じた部分もある。それは生産現場の能力の高さだ。
当時交流のあった社外の米国人の一人に、デトロイト・ディーゼル社のペンスケ会長がいた。弁舌さわやかで指導力に富んだ米国産業界で著名な人物だったが、その彼が「どんな優れた経営者もQCDの問題は解決できない」と漏らしたことがある。
QCDとは、クオリティー(品質)、コスト(費用)、デリバリー(納期)の頭文字で、製造現場の実力を測る最も重要な指標だ。ところがペンスケ会長によると、経営トップがいくら旗を振っても、それだけではQCDは改善しない。現場がやる気を出して、地道な努力を日々重ねることが絶対条件。その意味で「ボトムアップの弱い米国企業には限界がある」というのが、彼の嘆きだった・・
アメリカの会社で、坂根社長は、日本人をできる限り減らして、米国人に置き換える方針をとります。しかし、ただ一つ「これだけは現地化が難しい」と感じた職種があります。生産技術者です。アメリカでは、新機種の設計を手がける開発技術者と、工場の設備企画や改善を進める生産技術者の間にステータスの違いがあって、前者が後者より上なのです。だから優れた技術者が、工場に行きたがらないのだそうです。それに対して、日本の多くの大手メーカーでは、開発と生産が対等の立場で協力します。坂根社長の自信は、コマツを回復に導きます。詳しくは原文をお読みください。
カラオケの隆盛
11月24日の日経新聞経済欄に、林三郎・第一興商社長のインタビュー「カラオケから見る消費」が載っていました。カラオケボックスを運営している会社です。記事の主たる内容からは、ずれますが、興味深かった点を紹介します。
「少子高齢化でアルコール離れも進んでいます。カラオケ市場への影響はどうですか」という問いに。
・・夜の生活を楽しむナイトマーケットは年々着実に縮小している。全体的に酒を飲まなくなっているほか、当社がカラオケ機器を提供しているスナックやバーなどの経営者の高齢化が進み、廃業も増えている。このためカラオケ参加人口は2013年が4710万人で、直近のピークである1995年に比べると2割減少している・・人は酒を飲まなくなったとはいえ、どこかで発散する場所が必要なわけで、手軽なレジャーの場として安定需要が見込める・・確かに若者人口は減っているが、最近はシニアや家族連れの利用が増えている。ファミリーが利用したり、高齢者が歌の練習をしたり、昼間の需要が盛り上がっている・・
イデオロギーが持つ怖さ
読売新聞「編集委員が迫る」11月7日は、佐瀬昌盛・防衛大学校名誉教授の「冷戦終結25年」でした。戦後日本で、マルクス主義が大きな影響力を持ったことについて。先生は、1961年のベルリンの壁建設開始直後に、ベルリンに留学されました。
・・ベルリン留学から帰り、NATOの研究を志したところ、学界からは白眼視された。NATOは米帝国主義の組織だから研究すること自体がけしからん、というわけだ。防衛大学校の教官に決まると、既に決まっていたある出版社の全集の執筆者から外された。
世界は東西冷戦だったが、日本は国内で冷戦を戦ったと言える。西欧諸国にもマルクス主義者はいたが少数派だった。知識人が二分されたのは、日本だけだ。
知識人の中で中道という考え方は人気がなかった。冷戦が終わりマルクス主義の権威は地に落ちたが、相変わらず白黒の二分法の考えで、中道嫌いは今も続いている。中道とは左右を足して2で割った考えではなく、それ自体の独立した価値がある。言い換えれば、人間性の洞察に基づく健全な常識のことだ。21世紀にこそ、中道が根づいて欲しい・・
被災地町長の増税への考え方
須田善明・宮城県女川町長のブログから。女川町は津波によって、町の中心部が壊滅しました。現在、土地のかさ上げや山を切り取って、まちづくりをしています。まさに、町全体の作り替えです。11月4日、総理官邸で開かれた消費税増税のための意見聴取に出席された際の発言です。
・・今回私が呼ばれたのは被災地の視点から、ということだと思うが、まず断っておくのは、当然ながら、私の意見は被災地の民意や被災自治体の首長の考えを代弁するものではなく、あくまで故郷復興に行政トップとして携わる一政治家としてのものである。
また、国家的な視点で行われるべきであり、その際に「被災地がこうだから」というようなことが議論の中核に挟まれることは望ましいとは考えない。ご配慮いただくのはありがたいが、誤解を恐れずに言えば、大震災での被災者は全国民の1%くらいの割合である。
但し、福島の方々については最後までしっかりしたケアが当然。こうしたことを除いての残りの99%、つまり国家全体というマクロな視点で行われるべきものであると考える。「被災者がこうだから」というようなことは別の場での議論であろう・・
・・関係して被災地の復興や経済状況等に若干触れる。
「税が上がれば被災者は大変ではないか?」と言えば大変なのは日本全国どこでも一緒で同じ。増税して喜ぶ方がいたら会ってみたいものである。
そういう中で、本町では震災から二年が経った時に介護保険料の基準額を2割以上引き上げた。町の介護保険会計が破たんしないよう、そうせざるを得なかった。町議会でも相当な議論をいただいたが、最終的に日本共産党所属以外の議員の方には賛成をいただいた。同様に、東松島市では、南三陸町もそうだったと思うが、国保の保険料を15%程度引き上げた。
被災後の状況ではあっても、パブリック(サービス)の母体となる制度をきちっと維持していかなくては、その提供すらできなくなる、という判断だった。被災地ですら、そのような判断を今の状況の中でやっている、ということを申し上げておきたい・・