「オートファジー」という言葉が、突然ニュースに出てきて、世間に知られることになりました。ノーベル賞とマスコミのおかげです。
ところで、このカタカナ、多くの人は意味を理解できないでしょうね。日本人の多くは、オートは「自動」だと推測します。ファジーは、少々カタカナ英語を知っている人なら、「あいまい」と理解するのではないでしょうか。インターネットで「ファジー」を検索すると、「ファジーとは英語の“fuzzy”からきたカタカナ英語で、英語同様「あいまいな」「ぼやけた」といった意味で使われる」と出てきます。
この言葉は、ギリシャ語から作られた言葉だそうです。英語圏の人も、「Autophagy」と聞いて、細胞内のタンパク質分解機能ととわかる人は、どれくらいいるのでしょうか。
ところが、これを漢字にすると「細胞の自食」で、何となく細胞が自分を食べるんだとわかります。もちろん、正確な理解ではありませんが、少なくとも細胞の話、生理学の話なのだと当たりがつきます。免疫でのマクロファージ(Macrophage)を知っている人もおられるでしょうが、これも「食細胞」と漢字にすると、何となくわかります。
カタカナ英語は勉強したときは理解するのですが、しばらくすると、意味を思い出せないのです。それに比べ、漢字って、すごいですよね。表意文字と表音文字の違いでしょう。
IT用語もカタカナ英語でなく、漢字にしてもらうと、私たちも理解しやすいのですが。ネット、メール、アドレス、ファイル、アップ、サイト、ウインドウ、プロバイダー、サイバー、ラン・・・(2016年10月5日)
カテゴリーアーカイブ:社会の見方
若者の保守化
9月30日の朝日新聞オピニオン欄「若者の与党びいき」から。
平野浩・学習院大学教授の発言
・・・データでは、55年体制時代は年齢層が高いほど自民党支持率が高く、一方で若い層ほど低いという明確な関係がありました。例えば1976年には、50代の自民支持は4割を超えていたのに対し、20代は、どの世代よりも低い、2割弱にとどまっていました。
それが2009年には、20代の自民支持は3割弱に達します。50代は4割とさらに高いですが、支持する政党を答えた人に限ると、自民支持率は50代が57%、20代が58%と僅かに逆転が見られました。衆院比例区での自民党投票率も20代は34%と50代の27%を上回り、70代の38%に次いで高い率を示していました。
今年7月の参院選では、朝日新聞の出口調査で、比例区での自民への投票率は18、19歳は40%、20代は43%に達し、20代は他のどの世代よりも高くなりました・・・
山田昌弘・中央大学教授の発言
・・・若者は現状を打破する政党を支持し、中高年は現状維持の保守を支持する、というのは1980年代までで、今は幻想です。生活満足度の調査では、いまの20代は8割が満足と答える。だから与党に投票するのです。
20代の満足度は、40、50代はおろか70代以上も上回り、全世代で最高です。70年ころまでは一番低かったのと比べると、大きな変化です・・・
・・・横軸に「現状に満足か不満か」、縦軸に「将来に希望があるか悲観的か」という4象限グラフを描きます。現状に不満で未来に希望を持つ人は「革新(ラジカル)」。貧しいが成長に期待が持てた80年代までの若者です。現状に満足で将来に希望がある人は「進歩(リベラル)」。昔の自民党支持者です。現状に満足だが将来に悲観的なのが「保守」。今の日本の若者です。最後が現状に不満で将来にも希望がない「反動」。トランプ現象など右傾化する欧米の若者がここに入ります。
足元を見れば、日本人に最も大切な、安定した人並みの生活への近道は「男性は正社員、女性はその妻になる」。正規雇用は3分の2、非正規が3分の1となり、高度成長期なら誰でもなれた正社員は今や既得権です。私は将来、日本に3分の2と3分の1の分断が起きると思います・・・(2016年10月3日)
目標を立てることができる研究と、目標が経たない研究と
9月28日の朝日新聞オピニオン欄、本庶佑・京都大学名誉教授の「世紀の新薬、未来へ」「狙ってできないブレークスルー たくさん種まきを」から。
・・・政府の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議の議員だったとき、基礎研究の研究費はばらまきだと批判され、むしろ、ばらまかないとだめなんだと言いました。火星にロケットを飛ばすといった実現への計画を立てられるプロジェクトとは全く違うんです・・・
「目標すらわからないと」という問に。
・・・はい。ブレークスルー(飛躍的な進展)はデザインできません。つまり、ねらってできるものではないんです。とくに生命科学では、ある分野でわかったことが考えもしなかった分野とつながって重要な意味を持ってくる、ということもよくあります。どこをどうやったらいいか、だれにもわからない。「ここ掘れワンワン」というわけにはいかないんです。大切なのは、そういうチャンスをなるべく多く作ることです。
政府のプロジェクト施策のように、5年間で何かをやる、というのは間違っています。5年でできるとわかっていることはたいしたことない。種をいっぱいまかないと、どれが芽を出すか、わからないし、芽を出しても、枝が出るか、花が咲くか、さらには実がなるのか。基礎研究には幅広くたくさん投資することです。それが何万倍にもなって返ってきて、税収も増える。リターンは大きいんですから・・・(2016年10月1日)
成功して得たもの失ったもの
朝日新聞9月5日経済面「トヨタ自動車 ベンチャー精神、原点回帰」、豊田章男・トヨタ社長の発言から。
・・・たとえば販売店の経営者の3代目、4代目の方に、「1代目の方がトヨタの販売店をやるときに、何がなくて、何がありましたか」とうかがうと、「あったのは夢と情熱です。それと借金。なかったのは信頼、お客様だったと思います」と。そして今あるのは信頼、実績で、借金もない。なくなったのは夢と情熱なんですね・・・
アジアの発展に負けた大陸アフリカ、社会的共通資本の重要性
朝日新聞8月27日のオピニオン欄は、シルビー・ブリュネルさん・パリ大学教授の「アフリカのいまと未来」でした。
「アフリカは遅れてきた分、格差も少ないと思っていました」との問に。
・・・実際には、アフリカ諸国は1960年代に独立した際、都市や産業化にばかり関心を抱いて、田舎をほったらかしにしてきたのです。その路線は成功しそうに見えました。アフリカは輝かしい可能性に包まれていたのです。「世界のお荷物」となるのはむしろアジアだと、当時は思われました。
幼児死亡率や平均寿命、1人あたり国民総生産(当時)などの指標を総合した場合、70年代に西アフリカのコートジボワールは韓国と、ナイジェリアはインドネシアと、ほぼ同レベルでした。冷戦の影響から韓国は発展せず、コートジボワールこそ希望が持てると世界銀行などは考えていました。
ただ、その冷戦の最前線にいたことこそが、アジアに発展をもたらしたのです。ソ連や中国と向き合った日米は、資本主義社会の結束を強めようと、韓国や台湾、東南アジア諸国に積極的に投資して発展を促しました。貧困の中にあったアジア各国も上昇への道を学び、労働力を改善し、新興産業国から新興国、先進国へと、わずか1世代の間に成長できたのです。特に韓国は、日本の経験から多くを学びました・・・
・・・民主主義の基本は、一人ひとりが平等な1票を持ち、自由に投票できることです。でも、アフリカでは肌の色や出身地域、性別や家族内の役割などで、自らの地位や行動が決まります。極めて不平等な社会で、51%が49%に勝つ西洋型民主主義の原則をここに適用するには、無理があります。
植民地支配から独立したアフリカ諸国は、民主主義を一度も経験しないまま国家を建設せざるを得ませんでした。その結果、強権的な政治が確立され、メディア支配や野党への脅迫が常態化し、選挙が骨抜きにされました。民主主義の名に値する選挙を実施している国はほとんどありません・・・
・・・アフリカで機能するのは、むしろ「長談義」のシステムでしょう。話し合いを延々と続けながらコンセンサスを形成する政治です。
国内のすべての政党や政治勢力、すべての民族がテーブルを囲んで議論をする。時間の制限を設けず、みんなが受け入れられる結論が出るまで話し合う。これが「長談義」です。選挙とは異なる方法です・・・
原文をお読みください。