カテゴリーアーカイブ:社会の見方

落としたスマホが戻る日本

2019年12月11日   岡本全勝

12月6日の朝日新聞夕刊スポーツ欄に、「スマホ戻り、作戦通りスパート 福岡国際マラソン優勝、エルマハジューブ・ダザ」が載っていました。

・・・1日にあった第73回福岡国際マラソンは、初出場のエルマハジューブ・ダザ(モロッコ)が2時間7分10秒の好タイムで初優勝を果たした。来年の東京五輪のメダル候補に躍り出た28歳は「日本のことがすごく好きになったよ。また僕の走りを見てほしい」。快走の背景には、日本人の親切さがあったという・・・

・・・大会2日前の夜。コーチのエルムサウイ・ムスタファさん(49)は、1人で福岡市内のスポーツバーで酒を飲んでいたが、スマートフォンを店に忘れたままホテルへ帰ってしまった。翌朝起きると、手元にないことに気づき、「絶望的な気持ちになったんだ」と頭を抱えた。

連絡先だけではない。そのスマホには、ダザの練習メニューや食事メニュー、福岡のコースの特徴やレース中の注意点など詳細なデータが入っていたのだ。
あきらめかけていたが、交番へ向かう前にホテルのフロントに確認すると、「こちらですか?」。スマホが届いていた。バーのテーブルに置いていたホテルのルームキーを覚えていた店員が届けてくれたようで、「信じられなかった。日本人はなんて親切なんだと、感激したよ」。

ダザも一安心できたのは言うまでもない。大会では、作戦通りに30キロ過ぎにスパートをかけて飛び出し、ぶっちぎりの優勝を果たした。「スマホがなかったら違う作戦を立てていたかもしれない。もっとハードな展開になっていた」とムスタファコーチ。優勝を決めた後、2人はぎゅっと抱き合った・・・

落としたスマホが、戻ってくる。世界200カ国の中で、そのような国はいくつあるでしょうか。この治安の良さ、親切心は、大事にしたいです。
もっとも、海外に行くと、落としたら戻ってこないことを、忘れないでください。プロにかかると、ロックはすぐに解除されるので、落としたスマホは直ちに転売されるそうです。

学歴が評価されない日本、高学歴が減る

2019年12月10日   岡本全勝

12月8日の日経新聞1面トップ「チャートは語る」は、「博士生かせぬ日本企業 取得者10年で16%減」でした。
・・・世界は新たな「学歴社会」に突入している。経営の第一線やデジタル分野では高度な知識や技能の証明が求められ、修士・博士号の取得が加速する。主な国では過去10年で博士号の取得者が急増したのと対照的に、日本は1割以上減った。専門性よりも人柄を重視する雇用慣行を維持したままでは、世界の人材獲得競争に取り残されかねない・・・

少子化の影響ではありません。4年制大学の入学者は、増えているのです。多くの人が4大卒で満足し、大学院まで進まないのです。その背景には、企業や社会が大学院卒を求めていないことがあります。その基礎に、大学での教育に専門性を期待していないことがあります。

日本の企業は、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待しているようです。採用面接の際に、「大学でどのような学問をしたか」ではなく、「学生時代に一番力を入れたことは何ですか」と問うのだそうです。学生の答は、サークル活動とバイト経験です。
学問に励まない学生、卒業生という「製品」に品質保証をしない大学、大学に学問を求めない企業。三者のなれ合い構造です。そしてそれを当然と思っている国民も、同罪です。「企業の採用面接に見る日本型雇用

詳しくは記事を読んでいただくとして。グラフがいくつか付いています。諸外国との比較が一目瞭然です。

と書いていたら、12月5日の朝日新聞オピニオン欄に、ジョセフ・M・ヤング、駐日アメリカ臨時代理大使が「減る日本人の米留学 関心高め同盟の土台に」をかいておられました。
・・・日本への米国人留学生数が増える一方、米国へ留学する日本人が激減しているのだ。1997年に約4万7千人いた日本人留学生は昨年、約1万8千人となった・・・

中根千枝先生「タテ社会と現代日本」

2019年12月9日   岡本全勝

中根千枝先生の新著『タテ社会と現代日本』(2019年、講談社現代新書)を読みました。『タテ社会の人間関係』(1967年)は半世紀にわたるベストセラーなので、読まれた方も多いでしょう。「紹介

新著は、タテ社会から現代日本を読み解いたものです。
タテ社会では、参加者は全面的な参加を要求されます。それが、長時間労働を生みます。契約や資格によって参加していないので、長くその組織にいる者が上位に来ます。それが、新参者へのいじめ、非正規雇用問題を生みます。家族という小集団が、家庭内虐待問題を生んでいることなど、ハッとさせられる指摘が並んでいます。

『タテ社会の人間関係』は1967年、昭和42年の出版です。東京オリンピックが昭和39年、大阪万博は45年です。高度経済成長の前半期でした。それから半世紀、日本社会は大きく変貌しました。しかし、場を重視するタテ社会という、日本社会の基本構造は変わっていないようです。
いま、連載「公共を創る」で、社会の文化資本、この国のかたちを書いているところです。中根先生の本も、引用しています。この項続く

ネット社会でも共有されない情報

2019年12月8日   岡本全勝

12月4日の朝日新聞オピニオン欄、今年のノーベル化学賞受賞者、吉野彰さんのインタビューに、興味深い話が載っています。
「ネット社会が進み、情報を共有しやすくなっていますしね」との問いかけに。先生は、「ぼくは逆だと思う」と否定しておられます。

・・・表面的な情報はみんなが共有しているけど、肝心の情報は意外とつかめていないんですよね・・・情報を出す側は差し障りのない情報は出すけど、ひそかに自分で考えているアイデアなんて、絶対に出さないですよね。もし出すとしたら、夜の席でワインを傾けながらでしょう・・・
原文をお読みください。

立派な新国立競技場、でもその周囲は

2019年12月5日   岡本全勝

2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新しい国立競技場が完成しました。当初の案が変更になり、代案が採用されました。なかなか立派な施設のようです。例えば「読売新聞」。

ところで、写真を見て残念なことがあります。競技場は立派なのですが、すぐ隣にビルが建っているのです。このような巨大な記念碑的施設は、周りの景観も重要ですよね。
観客が写真を撮るときに、よけいな建物が入ってしまいます。それは、総理官邸も同様です。

「木と緑にあふれた杜のスタジアム」と言うようですが、周囲に木は少ないようです。
面積が二倍になったとのこと。その影響もあったのかもしれません。