カテゴリーアーカイブ:社会の見方

古代スラヴ語

2021年3月9日   岡本全勝

服部文昭著『古代スラヴ語の世界史』(2020年、白水社)を読みました。去年、何かの拍子で買ってあったものです。古代教会スラヴ語とも呼ばれるようです。
古代スラヴ語と言いますが、古代にスラヴ人が話していた言葉ではありません。教会から始まった書き言葉です。このあたりが、ややこしいです。
私は「古代のスラヴ語が、どのようにして記録され、読解されたのだろう」と思って、この本を買ったのですが。話されていた古代スラヴ口語は、残っていません。

古代スラヴ文語は、キリスト教会や王国の支配者によって支えられ、民族間で伝えられ、滅んでいきます。ローマ教会、フランク教会、ギリシャ正教の3つどもえのスラヴ人争奪、各民族の支配者の思惑、フランク王国と東ローマ帝国との勢力争いに、この文語が翻弄されるのです。
9世紀に、スラヴ語を書き記すために、グラゴール文字が発明されます。なかなか書きにくい絵文字のような字体です。その後、ギリシャ語を基にしたキリル文字が導入されます。ロシア語はそれを引き継いでいます。スラヴ人でも、西方の国はローマ字表記になっています。このあたりも、政治に翻弄された歴史によるものです。
この本も、「世界史」と銘打っています。その点は、興味深かったです。

「花粉症と人類」

2021年3月6日   岡本全勝

小塩海平著『花粉症と人類』(2021年、岩波新書)を読みました。花粉症が「発見」され、どのような社会問題となったかの解説です。
花粉症の知人によると、今年は症状がきついそうです。私も、3年ほど前から毎年この時期に目がかゆくなり、鼻が詰まります。「明日香村は杉ばかりだ。そこで育ったのだから、花粉症にはならない」と言っていたのですが・・・

この本は、勉強になりました。
花粉症は大昔からあったようですが、イギリスで18世紀に流行し(発覚し)、原因から「枯草熱」(干草熱。花粉によるアレルギー)とわかりました。
ついでアメリカで、19世紀後半に「ブタクサ熱」が大流行します。この頃は、先進国の病、それも上流階級がなる病気とされたようです。ちなみに、ブタクサとセイタカアワダチソウは似ていますが、別物です。
そして日本の杉花粉症です。世界3大花粉症だそうです。1980年代後半から、爆発的に増加しました。平成になってからの病気なのですね。プロ野球の田淵幸一選手が、花粉症で引退したことを、初めて知りました。

人類は誕生以来、花粉とは付き合ってきました。干し草、ブタクサ、杉が増えたので、花粉症ができたといわれますが、縄文時代から弥生時代の方が、杉花粉がたくさん飛んでいたらしいです。環境の変化によって花粉症が増えたといわれますが、詳しい仕組みはわかりません。
この本を読んでも、よくわかりません。
杉花粉以外のアレルギーもあります。なぜ、杉花粉症が多いのか。花粉の数なら、日本では稲、ヨーロッパでは小麦がもっと多いと思います。
個人差はなぜか、そして年を取ってから突然なぜ発症するのか。
明日香村で杉に囲まれた過ごしていた子どもの時や、杉が多いと思われる徳島や富山で過ごした青年と壮年期にはなんともなく、60歳を超えた東京でなぜ発症するのか。
わからないことだらけです。

G7で日本だけが平均賃金が下がった

2021年3月2日   岡本全勝

2月24日の日経新聞夕刊「変わる給料(上)今年の労使交渉」に、びっくりする図が載っています。「G7で日本だけが平均賃金が下がった」、2000年から2019年の増減率です。
OECDの調査によるものだそうですが。この10年間に、他の6か国は40%~70%の増加なのに対し、日本だけがマイナスです。

日本経済は、1991年にバブル経済が崩壊し、長期デフレに悩みました。2000年以降は景気は回復しました。リーマン・ショックもありましたが、それはG7各国に共通です。
日本の伸び率が低いのならまだしも、他国の賃金が1.5倍になっているときに、日本は減っているのです。
この理由は、日本経済全体の停滞とともに、労働者に着目すると、賃金の低い非正規労働者の増加によるものと考えられます。

アトキンソンさん。日本人の検証なしでの思いこみ

2021年3月1日   岡本全勝

2月23日の朝日新聞スポーツ欄、デービッド・アトキンソン氏「世界一寛容な日本、願望に近い」から。

・・・日本人は思い込みや俗説が多い。専門家に確認しない、検証しない。厳しく言えば、プロ意識が低い面があることは共通しています。それは寛容の一環かも知れませんが。
例えば、東京五輪が日本経済の起爆剤になるというのも、俗説。エビを食べて長寿にあやかるのと同じ。数週間のイベントがGDP550兆円の日本経済に大きな影響を与えるはずがありません。
五輪で観光客が増えるというのも、何の根拠もない思い込み。インバウンドが増えたのは5年前からですが、リオデジャネイロで五輪があるからと、開催の5年前にブラジルに行った日本人が多くなった事実はないです。自分たちがやらないのに、なぜ外国人がやると思うのか。
過去の大会では、その年には海外からの需要が増えるが、ほとんどがマスコミ関係。翌年はよくない。2012年に開催したロンドンだけ増えましたが、これは五輪に合わせて観光対策をしたから。五輪だけの影響ではありません。

日本の決定的な問題は、クリティカルシンキング(批判的思考法)が十分にできていないこと。これは、仮説を立てて、ロジックを分解し、データで検証し、結論を導き出すもの。
大学の問題が大きい。クリティカルシンキングができるようになるのは大学生の年齢。人間というものは勝手な思い込みをする生き物なので、それをなくすため大学教育が発達した。
大学の4年間、先生とのやりとりで、思い込みで発言したら、根拠はなんですか? 評価に客観性はありますか?と聞いて答えさせる。日本の大学はそれが十分できていない。
だから日本は事後対応しかできず、いつも後手に回る。事前に仮説をたてて議論しても、受け入れられないのです。予想はできるのに、何も手を打たない。
重ねていいますが、東京五輪はやっても、やらなくても、日本経済には中長期的にはさしたる影響はありません・・・

上野誠著「万葉集講義」

2021年2月27日   岡本全勝

上野誠著『万葉集講義』(2020年、中公新書)が、わかりやすかったです。書評欄で取り上げられているの見て、読みました。万葉集は大学生の頃、読み始めたのですが、途中で挫折しました。本棚の隅に、岩波の古典体系が寝ています。

上野先生の解説を読んで、なるほど万葉集とはこのようなものなのだ、このように読むのかと、理解できました。「令和」の原典ということから、万葉集は脚光を浴びています。またその前から、解説書はたくさん出ています。それぞれに特徴があるのでしょうが。
上野先生の主張は、次の4点に集約され、それがこの本の構成になっています。
・東アジア漢字文化圏の文学
・宮廷の文学
・律令官人の文学
・京と地方をつなぐ文学

お勧めです。いずれ時間ができたら、万葉集そのものに挑戦しましょう。