カテゴリーアーカイブ:社会の見方

商売と人権

2021年5月7日   岡本全勝

5月1日の朝日新聞夕刊、佐藤暁子さん(弁護士・国際NGO幹部)の「人権とビジネス、企業のあり方は」から。
・・・中国の新疆ウイグル自治区や香港、ミャンマーなどをめぐる人権状況が問題視されるなか、ビジネスのあり方が注目されている。日本企業はどう向き合うべきか。弁護士で、人権NGOでも活動する佐藤暁子さんに聞いた・・・

・・・中国の新疆ウイグル自治区のウイグル人の強制労働に取引先が関わっているとして、豪州の研究機関ASPIが、日本企業の名前を挙げていた。自治区を離れてウイグル人が働く工場が対象だ。佐藤さんらは、名前が挙がった日本の衣料品や電機メーカーなど14社に聞き取り調査し、結果を公表した。
答えなかった1社を除く全13社が指摘に反論した。それでも「強制労働の事実が明確に否定できない限り、即時に取引関係を断ち切るべきだ」と訴えた・・・
・・・中国当局は「人権弾圧」を否定している。一党独裁の国で「異論」は御法度。経営者の発言しだいで巨大市場から締め出されかねない。逆に、中国を支持すれば中国以外の消費者から批判を浴びる可能性がある。
話すだけ損だと考え、沈黙を続ける日本企業は少なくない。「政治的な質問にはノーコメント」「人権問題というより政治的な問題だ」。正面からの回答を避ける経営者が目立つ。

佐藤さんは批判する。
「全く的外れ。がっかりしました。強制労働は国際的な人権上の問題であって、『政治的』だから何も言わない、という話ではない。説明しないことは特定の民族への人権侵害の現状追認になってしまう」
米国のパタゴニア、欧州のH&Mなどは、サプライチェーン(供給網)において新疆ウイグル自治区から綿花など素材の調達をやめると表明している。「疑わしきは使わず」だ。
「企業は社会の重要な構成員として、力を持つ。材料の調達から生産、販売など一連の過程で人権の尊重を徹底すれば、多くの人権侵害を避け、また救済もできます」
「経営者は、市民社会に対して自らの価値観や哲学を含めて説明責任を果たしてほしい。そうしなければ、世界の投資家や消費者から批判を浴びることにつながるでしょう」・・・
この項続く

寓話。安値競争を続けると

2021年5月4日   岡本全勝

この20年間、日本では賃金が上がっていません。このホームページでも、新聞記事などを紹介しています。「低い日本の賃金」「日本は貧しい国
次のような、例え話を考えました。

ある島に、10軒の商店がありました。それぞれに10人の社員を雇っています。そこに、安さを売り物に、A社が進出してきました。
A社は機械化と作業の簡素化で、アルバイトでも仕事ができるようにしました。同じ品物が、従来の店より安く買えるようになりました。100人の住民は喜んで、A社の品物を買うようになりました。
売れなくなった10軒の店は、次々と商売を縮小し、社員を解雇しました。解雇された住民は、A社のアルバイトになりました。収入が減るので、安いA社で買い物をすることが増えました。A社は、ますます事業を拡大しました。

で、A社は栄えたか。そのようには、なりませんでした。
その後、売れなくなりました。10軒の商店がつぶれ、100人の住民がみんなアルバイトになりました。貧しくなって、物が買えなくなったのです。
この例え話は、コンビニにも、ファストフード店にも、当てはまります。

特ダネの記録、高知県庁闇融資事件

2021年5月4日   岡本全勝

朝日新聞ウエッブ論座、依光隆明・朝日新聞諏訪支局長の「高知県庁「闇融資」事件 載せていいのか、悩みに悩んだ高知新聞 武器は紙面、エネルギーは読者の応援」(4月29日掲載)を紹介します。

・・・ Kさんのことを考え、何度も夜眠れなくなったことを覚えている。
2001年5月10日、高知県警は決裁ラインにいた高知県庁の副知事から班長まで5人を背任容疑で逮捕した。Kさんは商工労働部長として容疑に関わっていた。連行されるとき、捜査員と一緒に自宅から出たKさんと目が合った。Kさんは覚悟を決めたかのように小さくうなずいた、ように見えた。

彼らが手を染めたのは民間企業への融資である。議会に知らせず、庁内ですらマル秘にして、本来は県信用保証協会に預けておく預託金から予算を流用していた。その額、実に12億円。しかもほぼ全額が焦げ付き、予算にぽっかり穴を空けている。なぜそんなことをしたのか。大きな理由は相手方への恐れだった。
当時、高知県では部落解放同盟の力が強大だった。融資の相手方は、その幹部が関わる縫製企業。求められるまま県は公的資金を注入し、あげく予算の違法流用まで行っていた。闇の中で公金を流すこの行為を、高知新聞は「闇融資」と名付けた。闇から闇への闇融資である。

逮捕された県庁マン5人の誰ひとりとして自分の懐にカネを入れていない。これも県職員の仕事だと信じ、ときには上から言われるままに動いていた。典型がKさんだったように思う。気さくでまじめ、文人肌の善人だった。まじめで組織に忠実だからこそ部長にまで上り詰めたのかもしれない。彼なりに仕事を全うした代償が逮捕・起訴だった。副知事、課長とともに実刑判決を下され、刑務所に収監された。築き上げた社会的地位も、経済的安定もどん底に落ちた。
追い込んだ先駆けは高知新聞である。善良な県庁マンをそこまで追い込んでいいのか。自分が彼の立場だったらどうしたのか。上司や周りに逆らえたのか。甘いと言われれば甘いのだが、逮捕前後にはそんなことをよく考えた。予算に穴が空いていればいつか露見する、高知新聞が報道してもしなくても一緒だ。いや、露見を防いだ可能性もある。なにせ彼らは後付けの理屈をつくるプロなのだ。などなど、いろんなことを自問自答した・・・

詳しくは原文をお読みください。このほかにも、「特ダネの記録」があります。

これでも日本語、NHK

2021年5月3日   岡本全勝

いつもの「カタカナ語やアルファベット語批判」です。今回は、NHKです。
日本放送協会ウエッブサイト(すみません、これもカタカナ語です)の「ビジネスパーソンこそPTAに」(4月23日掲載)を、読者から教えてもらいました。読んでもらうとわかりますが、カタカナ語の氾濫です。

冒頭に、次のように、記事の要点が掲げられています。要点だと思いますが、記事では「アジェンダ」と記載されています。

本日のアジェンダ
運営はダイバーシティ
ビジョン・ミッションの共有を
ICT化でサステイナブルに
キャリアアップの道も
システムのアップデートが鍵

これらを、日本語では表現できないのでしょうか。日本語より、英語(らしきカタカナ)が格好良いと思っているのでしょうか。
また、言葉としても不正確でしょう。アジェンダ(agenda)は、会議で論ずる議題の一覧です。ここに表記されているのは議題ではなく、要点です。
記事の最後には、「コンクルージョン」も出てきます。「結論」ではダメなのでしょうか。文字数も多くなり、「簡潔に」の原則にも反しています。
新聞記者は「記事を書く際には、中学生でもわかるように」と指導されていると、聞いたことがあります。
放送協会内では、このような文章が問題にならないのでしょうか。

「こんなに違うドイツと日本の学校」

2021年5月3日   岡本全勝

和辻龍著『こんなに違う!?ドイツと日本の学校 ~「自由」と「自律」と「自己責任」を育むドイツの学校教育の秘密』(2020年、産業能率大学出版部)が、勉強になりました。
内容は、表題の通りです。著者は、ドイツの工科大学に留学し、同時にギムナジウム(日本の小学5年生から高校3年生までが通う学校)に生徒として通う経験をしました。そこで体験した日本と異なる教育の姿と、その背景にある考え方「この国のかたち」を描いています。

知識を教え、一定の型にはめる日本の教育。それに対し、考えることを身につけさせるドイツの教育。
明治以来の日本の教育手法は、日本国民の教育水準を引き上げ、集団への順応と優秀な会社員を作ることに成功しました。しかし、型にはまりたくない人にとっては窮屈な学校であり、社会をつくりました。そして、自分で考えることが少ない人を作りました。
ちなみに、著者は和辻哲郎さんのひ孫だそうです。
参考「ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか