カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ロボットは労働者の仕事を奪うか

2022年2月2日   岡本全勝

1月25日の日経新聞オピニオン欄イギリス・エコノミスト誌の転載は、「「ロボットが雇用を奪う」は誤りか」でした。

「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が世界を襲った当初、失業率が急上昇した。米国では、2020年4月に大恐慌期以来初めて14%を超えた。高い失業率が長期化するとみる向きが多かったが、その予測は現実にはならなかった。
富裕な先進国を中心とした経済協力開発機構(OECD)加盟国の失業率は入手可能な最新のデータによると、21年11月時点でパンデミック前に比べてわずかに上昇したにすぎない。直近の実数ではパンデミック前と大差ない可能性がある。ロボットは労働者の味方なのか、それとも敵なのかー。先進国における労働市場の回復は、経済学者たちにとって、この経済学上の根本的な問いに対する答えを再検討するきっかけになっている」として、次のようなことが述べられています。

長年、「ロボットが人間から仕事を奪う」と言われてきました。しかし、人工知能と機械学習がもたらす雇用革命にあるといわれながら、2019年の先進国の就業率が過去最高水準になったこと。ロボットの利用が最も進んでいるとされる日本と韓国の失業率が最も低いこと。ロボットによる自動化が失業増加を招いている証拠はほとんど見つからず、人手不足の状態にあること。

どうやら、人工知能や機械化を進める企業は、新しい製品や分野に手を広げ、さらに経済規模を拡大しているようです。同じ製造過程で同じ量の製品を作っているなら、機械化によって雇用者数は減るでしょう。しかし、経営も経済も動いているのです。
経営はコストカット(経費削減)だけでなく、新製品と新分野への拡大もあり、後者のない企業は衰退するでしょう。

ツイッターの匿名利用

2022年2月2日   岡本全勝

世間という同調圧力」の続きです。1月25日の読売新聞「「世間」が生み出す同調圧力」には、興味深い図表がついています。
ツイッターの匿名利用率の各国比較です。総務省の2014年版情報通信白書第4章の「図表4-3-1-16 Twitterの実名・匿名利用の割合」です。

それによると、匿名利用者の割合は、アメリカ36%、イギリス31%、フランス45%、韓国32%などに比べ、日本は75%です。
日本は突出して高いのです。これも、世間を気にすることの反映のようです。

なお、「図表4-3-1-17 SNSの実名公開における抵抗感」では、「やや抵抗感がある」「抵抗感がある」の合計が、日本だけが66%です。これも他の国が33%から47%であることに比べ高いのです。

世間という同調圧力

2022年2月1日   岡本全勝

1月25日の読売新聞くらし面「今を語る」は、佐藤直樹・九州工業大名誉教授の「「世間」が生み出す同調圧力」でした。

・・・推奨されてはいるが、強制されているわけでも義務でもないのに、ほとんどの人が常時マスクをつけて生活をしています。
なぜか。感染防止意識が強いだけではありません。日本には「法のルール」の前に「世間のルール」が存在し、この「世間」が同調圧力を生み出しているからです。
日本では多くの人が、「世間に迷惑をかけないことが大切だ」と刷り込まれて育てられます。だから、政府や自治体による強制力のない要請であっても、空気を読んで、自主的に従います・・・

・・・長い歴史を持つ世間では、「友引の日に葬式はしない」など、たくさんのルールが作られてきました。それがたとえ合理的な根拠のないものであったとしても、多くの人は律義にこれらを守ることで秩序を維持してきました。しかし、やっかいなことに「世間のルール」は明文化されていませんし、その輪郭もはっきりしていません。

地域のつながりが減少し、目に見えない仮想化した世間では、何が批判されるのかもわからない。過度にお互いの心中を察し、「空気を読め」と要求されます。
共感過剰シンドローム(症候群)と呼んでいます。会議で周囲と違う意見が言えない、終業時間になっても同僚が仕事をしていれば帰宅しにくい。「自分は自分、他人は他人」と考えることができません。
逆に、空気を読まず、ルールに従わない人は「迷惑な人」であり、バッシングしても構わないという心理を正当化しやすくなります。異論や少数意見を許さない、息苦しい同調圧力が生まれます。コロナ禍で、「感染よりも世間の目が怖い」という声を耳にした人も多いのではないでしょうか・・・

佐藤先生とその先達になる阿部謹也先生の著作は、私も参考にしています。連載「公共を創る」にも引用しています。

家族は幸せの象徴ではない

2022年1月31日   岡本全勝

加害者家族への批判」への続きです。阿部恭子さんへのインタビュー「「家族神話」の正体とは」から。

・・・あるとき、40代の女性の相談を受けた。「20代の娘が化粧品を万引きして逮捕された。お金は自由に使わせていたのに、理由がわからない」
話を聞くと、女性は貧しかった自分よりも幸せになってほしいと、娘に幼い頃から習い事やダイエットを強要していた。過度な期待による重圧が娘の万引きの一因になっていた。
女性は当初それを虐待とは認識していなかった。阿部さんと対話を重ねるうち、育て方の問題に気づき、娘とともにカウンセリングに通うようになった・・・

・・・伝統的な家族観が加害者家族の生きづらさにつながっていると阿部さんはみる。家族は幸せの象徴、もめ事は恥。そんな価値観は型にはまった幻想だという意味で「家族神話」と呼ぶ。
神話は、加害者の更生を担う司法の場にも蔓延している。
公判では加害者の罪を軽くするための情状証人として家族が呼ばれることが多い。子を虐待していた事実に気づいていない親、過剰な依存関係にある配偶者。そうした人たちが監督を約束しても、結局果たせないという現実を何度も見てきた。
「『家族がいれば安心』という神話をうのみにし、家族が本当に更生の支え手になれるのか、という検討はほとんどなされない。実際は家族こそが要因で、家族と離れる選択が更生につながる人もいるのに」・・・

・・・そもそも被害者側と加害者側の線引きは簡単ではない。法務省によると、19年に容疑者が検挙された殺人事件約900件のうち、54%が家族間で起きた。家族間の殺人では、加害者家族でもあり被害者遺族にもなる。
近年、虐待やDVといった家庭内暴力も犯罪として広く認知されるようになった。阿部さんは「誰もが事件の関係者になりうる時代だ」と指摘する。
世間体、空気感、同調圧力。家族神話はそう言い換えることもできる。それらを生み出すのは多くの場合、社会の多数派だと阿部さんは言う。
「今日の被害者が、明日の加害者かもしれない。家族神話からの脱却が、誰にとっても寛容な社会への一歩になる」・・・

なお、阿部さんは、1月7日の読売新聞「加害者家族のそばに…中傷から守る 支援10年超」にも出ておられます。

加害者家族への批判

2022年1月30日   岡本全勝

少し古くなりましたが、1月8日の朝日新聞夕刊、加害者家族を支援するNPO法人代表の阿部恭子さんへのインタビュー「「家族神話」の正体とは」から。

・・・家族こそが人を幸せにする。犯罪加害者の家族の支援に取り組んできた阿部恭子さん(44)は、それを幻想だと断じる。日本の伝統的な「家族神話」が、多くの人たちを苦しめるのを見てきた。阿部さんは問いかける。「家族って、そんなに大事ですか」・・・

・・・あなたの家族が罪を犯して逮捕されたら、どうなるだろう。
社会から向けられる憎悪は加害者本人にとどまらない。「なぜ止められなかったのか」「家族も同罪」。ネット上では家族への批判が渦巻き、名前や自宅をさらす投稿もあふれる。転居や転職を余儀なくされ、自殺してしまう人さえいる。
連帯責任論が今も根強く残っている」。多くの加害者家族を支援してきた阿部さんは、家族が誹謗中傷にさらされる原因をこう分析する。
日本では、子が何歳になっていても親が監督責任を問われる風潮が強い。大阪府吹田市で2019年、交番が襲撃され、男性巡査が重傷を負った事件では当時33歳の男が逮捕された。大手メディア役員だった父親は謝罪コメントを出し、辞職した・・・

・・・連帯で犯罪を抑止できるという考え方が前提だが、阿部さんは「逆効果だ」と言い切る。
連帯責任を求める社会では、家族は問題を隠そうとして孤立しがちだ。責任を家族が肩代わりし、本人への援助を続ける。それは本人の自立を妨げ、むしろ犯罪を助長しかねない。
「家族に責任がある場合もあるし、加害者への厳しい姿勢は必要だ。でも、家族への中傷は反論しづらい相手を利用してうっぷんを晴らしているだけ。社会の未熟さを表している」・・・