カテゴリーアーカイブ:社会の見方

政府の政策PDCA

2022年1月15日   岡本全勝

1月4日の日経新聞オピニオン欄、上杉素直・コメンテーターの「賢い支出へPDCA回せ コロナ対策で見えた欠落」から。

・・・この2年、日本の政策運営にはいくつもの疑問符がついた。先の読めないパンデミックに対処するのはたしかに難しい。だが、四半期ベースで2度もマイナス成長に陥った21年は残念ながら、同じ災禍からの回復をたどる米欧の国々との差が歴然とした。
なぜ彼我の差はついたのか。人々の価値観に視点を当てた仲田泰祐東大准教授の研究は興味深い。「経済をもう少し回すこと」と「感染をもう少し抑制すること」は一定条件下でトレードオフの関係になる。そして、そのバランスをいかにとるかは社会の価値観を反映するのだそうだ。
そんな前提で「コロナ死者数を1人減少させるためにどの程度の経済的犠牲を払いたいか」を試算すると、日本は約20億円に届く。米国の約1億円、英国の約0.5億円より高い(21年12月3日付日本経済新聞朝刊「経済教室」)。何十倍の違いを知ると、日本経済の低迷が必然とも受け取れる。

行政の構造問題も絡む。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に経済学者を代表して参加した小林慶一郎慶大教授は縦割りの弊害が根っこにあると指摘する。自分たちの内輪の論理にこだわってさまざまな対策に取り組む厚生労働省は典型という。
そこに公衆衛生や医療の課題と経済活動への影響をトータルで捉える視点は生まれない。小林氏は「感染が増えても経済を回そうとは言いにくかった」と振り返る。結果としてコロナ死を減らすことに偏重し、膨大なコストを費やしたという反省は、仲田氏の分析とも重なり合ってくる・・・

・・・もう一つの不安はより深刻かもしれない。「C(点検)」は十分なのかという問いだ。
会計検査院が先の報告で取り上げたのは、19~20年度に予算が措置された5つのコロナ対策だ。総額77兆円が各省庁の854の事業へ投じられた。ところが、検査院がその使われ方を分析できたのは770事業にとどまる。
事業によってはコロナ対策とそれ以外の予算が混ざってしまい、使われ方を分別して調べることができないらしい。裏を返せば、コロナ対策と銘打った歳出が最終的にどう使われたかについて、全体図は示せていない。「C(点検)」が不完全なら、「A(改善)」だって期待しにくい。

いま学ぶべき先例は11年の東日本大震災への対応だろう。3月11日の震災発生から3カ月余りで基本法を成立させ、復興にまつわる歳出と歳入を複数年にまたがってパッケージで管理する仕組みを整えた。収支の全体像が明確になり、復興を我がことと捉える土台になったのではないか。

政府がまとめた22年度予算案はいわば新たな「P(計画)」。過去最大の中身は適切か、21年度補正予算と連なる「16カ月予算」の効果は見込めるか、国会などでしっかり論じてもらいたい。
そして併せて、国の政策を研ぎ澄ます検証プロセスや仕掛けづくりにも目をやりたい。そうした土台があってこそ、財政の賢さが育まれていくのではないか・・・

人間の二つの思考方法

2022年1月14日   岡本全勝

2021年12月30日の日経新聞経済教室、鳥海不二夫・東京大学教授の「「情報的健康」目指す仕組みを データから社会を読む」に、人間の二つの思考方法についてわかりやすい説明がありました。

システム1は、暗黙的システムと呼ばれ、無意識かつ自動的に判断を行う仕組みです。直感的な好き嫌いで、情報を判断します。動物的といえます。面白い情報や好きな情報を選びます。
これに対しシステム2は、明示的システムであり、数値などを精査して判断する、合理的な仕組みです。あらゆる情報をじっくり考えて意思決定をします。ただしシステム2は脳に負荷をかけるので、通常私たちはシステム1をつかって生活しています。

バラスの取れた食事がよいと知っていながら、甘い高カロリーのお菓子を食べてしまいます。深酒はいけないと考えつつ、飲み過ぎます。インターネットでサーフィンをするときも、同じです。

富裕層の数

2022年1月12日   岡本全勝

1月3日の日経新聞「どこ吹くコロナ、新富裕層台頭」に、国内富裕層の保有資産規模と世帯数が、図になって載っていました。野村総合研究所の調べ、2019年の数値だそうです。
それによると、富裕層の区分、世帯数、純金融資産保有額は、次の通りです。
超富裕層、5億円以上。8.7万世帯、97兆円
富裕層、1億円以上5億円未満。124万世帯、236兆円
準富裕層、5千万円以上1億円未満。341.8万世帯、255兆円
アッパーマス層、3千万円以上5千万円未満。712.1万世帯、310兆円
マス層、3千万円未満。4215.7万世帯、656兆円

世界では、100万ドル(1億1千万円)以上の金融資産を持つ富裕層は2080万人。
国別では、アメリカに次いで日本が多いのだそうです。ドイツ、中国、フランスなどに比べはるかに多いようです。

真鍋淑郎さん、他人を気にしすぎる日本

2022年1月11日   岡本全勝

2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんの記者会見(10月5日)から(朝日新聞ウエッブサイト

記者 日本からアメリカに国籍を変えた主な理由は?

真鍋 面白い質問です。日本では人々はいつも他人を邪魔しないようお互いに気遣っています。
彼らはとても調和的な関係を作っています。日本人が仲がいいのはそれが主な理由です。ほかの人のことを考え、邪魔になることをしないようにします。日本で「はい」「いいえ」と答える形の質問があるとき、「はい」は必ずしも「はい」を意味しません。「いいえ」の可能性もあります。(会場から笑い)
なぜそう言うかというと、彼らは他人の気持ちを傷つけたくないからです。だから他人を邪魔するようなことをしたくないのです。

アメリカでは自分のしたいようにできます。他人がどう感じるかも気にする必要がありません。実を言うと、他人を傷つけたくありませんが、同時に他人を観察したくもありません。何を考えているか解明したいとも思いません。私のような研究者にとっては、アメリカでの生活は素晴らしいです。
アメリカでは自分の研究のために好きなことをすることができます。私の上司は、私がやりたいことを何でもさせてくれる大らかな人で、実際のところ、彼はすべてのコンピュータの予算を確保してくれました。
私は人生で一度も研究計画書を書いたことがありませんでした。自分の使いたいコンピュータをすべて手に入れ、やりたいことを何でもできました。それが日本に帰りたくない一つの理由です。なぜなら、私は他の人と調和的に生活することができないからです。(会場から笑い)

新聞を毎日読む人は20代3%

2022年1月9日   岡本全勝

12月28日の朝日新聞経済欄コラム経済気象台、「新聞読者の少子化」から。

・・・「20代以下4%」。ある電機メーカーの社内報が「新聞を毎日読んでいるか」を社員に尋ねた結果だ。30代12%、40代23%、50代30%、60代42%とつづく。
新聞通信調査会が先月発表した「メディアに関する全国世論調査」の結果では、「新聞を毎日読む」人は20代3%、30代9%、40代21%、50代42%、60代58%だった。
両者を比較すると前者は50、60代の値が後者より十数ポイントも低いが、いずれにせよ日本の若者が新聞を読まないのは事実のようだ。
全国調査は2008年が初回で、新聞を読む人の割合は全世代とも年々減少傾向にある。読まない人が歳を取ると読み始めるわけではない。10年後に30代の値が3%以下になることも予見される。新聞読者の「少子化」は深刻だ。
朗報は20代の49%、30代の68%がインターネットのニュースは毎日読むと回答したことか。興味関心に合う記事を「スマートニュース」などキュレーションアプリで取捨選択し、スマホで読む様子が調査結果からうかがえる・・・

新聞社が読者開拓に失敗していることが分かります。ニュースを見るだけなら、インターネットやテレビの方が早いです。新聞の長所、すなわち、世界中のニュースを編集してくれること、それによって何が起こっているのか何が重要なニュースかが分かること、関心事以外のニュースも目に入ること、専門家による解説が載っていることなどを、若い人に説明しなければなりません。
かつてのように、競争相手のメディアがない時代ではありません。インターネットに流れる若者を新聞購読に誘導するように、各社が販売促進に努力しているようには見えないのです。