カテゴリーアーカイブ:社会の見方

性教育の重要性

2022年6月30日   岡本全勝

6月14日の朝日新聞オピニオン欄、助産師・桜井裕子さんのインタビュー「人生のための性教育」から。

――学校の講演やSNSなどで、桜井さんは性について相談を受けてきました。子どもや若者はどんな悩みを持っていますか?
「8~9割は確認したいこと、体のことで、話を聞いてもらってホッとしたかったという感じ。でも1割強は妊娠や性暴力など深刻な内容です。女子の悩みで一番多いのは月経で、『つらい』『バラバラ』などの相談です。毎回3回以上痛み止めが必要なら、婦人科に行った方がいいと言います。痛みの原因は見極めた方がいい。保護者から『それぐらい我慢したら』と言われ、悩んでいる女子は少なくありません」
「男子は自分の性器についての悩みがすごく多い。総じて『小さいとモテない』と思っているようです。人それぞれでいろんな性器があることを説明すると安心するようです」

――日本の学校の性教育は紆余曲折がありました。
「1992年は性教育元年と呼ばれ、改訂された学習指導要領が施行されて小学校から『性』を本格的に教えるようになりました。エイズ予防が背景にあったと思います。私もコンドームの使い方を教えてほしいと要望されましたし、当時は何の制限もかけられていなかったことを覚えています」
「しかし、2003年に当時の都立七生(ななお)養護学校の事件が起きます。在校生同士が性関係を持ったことから教員が知的障害のある生徒向けの独自の性教育プログラムを作りました。性器の部位や名称を入れた歌や人形を使うものでした。が、都議会議員が『不適切』と批判、教育委員会が校長や教員を降格や厳重注意処分にしました。その後、裁判で処分は違法と認定されたものの、以降、性教育が一気に萎縮した。私もある学校で校長から『バッシングされたらどう責任をとるのか』と性交の話を避けるように言われました」

――なぜ性教育で性交の話をしてはいけないのですか。
「学習指導要領には学習内容を制限する『はどめ規定』と呼ばれる規定があり、1998年の改訂で『妊娠の経過は取り扱わない』と明記されました。経緯はわかりませんが、精子や卵子は教えても、性交は原則教えられなくなりました。小学5年の理科では『人の受精に至る過程は取り扱わない』、中学1年の保健体育では、妊娠・出産ができるよう体が成熟することは学びますが、妊娠の経過は扱わないとされています」
「規定ができた当初はそれほど制約を感じませんでしたが、やはり七生養護学校事件を機に統制が厳しくなった。4年前にも東京の区立中学で『性交』『避妊』などの言葉を授業で使ったとして、『不適切』と都議が批判、都教委が指導するということが起こりました。でも区教委は『不適切とは思わない』と反論した。少し風向きが変わってきたなと感じます」
「このところ、PTAからの講演依頼が増えてきました。家庭向けの性教育本なども売れていますが、特に保護者や若い先生の間に性教育が必要だという意識が広がっていると感じます。ただ、はどめ規定は、学校の性教育の大きな足かせであることは間違いない。この規定がなければ堂々と話ができ、子どもの理解も進みます」

――昨年、文部科学省などは「生命(いのち)の安全教育」の教材を作りました。
「性暴力や性被害を予防する教育です。性暴力が社会問題化したことも背景にあるでしょう。一歩前進です。しかし、『プライベートゾーンは他人に見せない』『相手が嫌と言うことはしない』など、禁止・抑制のオンパレード。性について基本的なことを教えていないのに、安全について教え行動制限している。ちぐはぐです」
「文科省は『寝た子を起こすな』論は捨てて、時代や子どもたちの実情にあった教育をすべきです。実態からすれば寝ていないですし、寝ている子には、年齢に合わせた形で科学的な事実を教えてやさしく起こしてほしい。SNSやアダルトビデオで暴力的に起こされるのは危険です」

――そもそも、性教育はなぜ必要なのでしょうか。
「健康、パートナーとの関係、出産――。性に関することは、その人の人生そのものです。性教育は、子どもに正しい情報を伝え、自分で選んで行動するためのもの。子どもたちには『自分の幸せと相手の幸せも考えて。来年の自分に感謝されるような今日を選んでほしい』と伝えています」
「包括的性教育にゴールはありません。自分で選び、決めるという自己決定をしていくための学びで、簡単ではない。だから、失敗しないよう備えることも重要ですが、それよりも自己決定を支えることが大切です。性教育は、子どもが自分の人生や将来のことを考える足がかりなのです」

起業は、組織力より個人の力

2022年6月27日   岡本全勝

6月9日の日経新聞オピニオン欄、村山恵一さんの「起業立国、土台は個の力」から。

・・・日本のベンチャーキャピタル(VC)は独特の歴史を歩んできた。決定打は1987年の日本合同ファイナンス(現ジャフコグループ)の株式店頭登録だと同社出身で日本のキャピタリストの草分けである村口和孝氏は訴える。
起業立国で世界のモデルとなった米国では、投資の主体はキャピタリスト個人だ。ところが日本では、証券会社や銀行が70年代以降に設けた「VC会社」が主役になった。大手のジャフコが公開企業となり、組織的な管理をするVCが業界標準として定着した。
スタートアップは本来、先行きが見通しにくいものなのに、ジャフコでは事業が成功するエビデンス(証拠)探し、審査作業に膨大な労力を割いたという。起業家という個人の柔らかい創造性を企業統治の硬い論理で扱おうとした。
「こちらも個人でないと思い切った判断ができない」。村口氏は会社を辞めて98年に自らファンドをつくる。翌年、投資したのが創業間もないDeNAだった。

4年前、ジャフコは会社組織型からキャピタリスト個人が主軸の体制に転換すると表明したが、日本は世界的に異質なサラリーマンキャピタリストがなお圧倒的だ。事業会社がつくるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)もノンプロを増やしている。村口氏の見立てでは、深い経験のあるキャピタリストは日本にせいぜい100人。「この10倍はほしい」
不足を補うように政府の実行計画は、海外のVCに対する公的資本の投入を盛り込んだ。経団連も世界有数のVC誘致を提言する。幾人か内外のキャピタリストに聞いたが、そう簡単ではない。
最前線で活躍するキャピタリストは自身の才覚を頼りに活動し、投資の成功で巨額の報酬を手にする専門職だ。明快なキャピタルゲイン税制などの仕組みが整わず、思い切った仕事ができるのか不透明な日本は魅力的ではない・・・

企業に対する意識を調査した結果が図で載っています。「事業を始めるのに必要な知識やスキル、経験がある」と回答した割合は、インドが80%超、アメリカが60%超、イギリス、スウェーデン、フランスが約50%、ドイツが約40。日本は約10%です。大企業で勤めることを目標としてきた国民意識、そしてそれで成功してきた経済界が、裏目に出ています。

町工場での外国人労働者

2022年6月26日   岡本全勝

6月13日の朝日新聞夕刊「カモン東大阪、海外の人材」から。

・・・ものづくり大国ニッポン。その大きな拠点が、大阪の東大阪市です。浜名湖ほどの面積に、およそ6千の町工場。工場の集積度は日本ナンバー1です。
東大阪市役所で国籍別の人口推移を見せてもらいました。1980年まではゼロだったベトナムの方が2020年には3千人超えです。ほかの国の方もたくさんいるようです。

ぜったい、町工場で働いている人がいるはず。
私、自転車で巡ります。
まずは「三共製作所」。
創業は1929年。航空機、自動車などの部品をつくる。
この会社、ハンパない。
ベトナム、ネパール、ミャンマー、フランス、ガーナ……。従業員100人のうち6割が、外国のみなさんである。

共生のコツを松本に聞いてみると……。日本語で話し、同じ鍋を囲む。外国人同士でもパーティーを開き、銭湯に行くなど楽しんでいるとのこと。「そもそも、外国人の方が多いので、日本人が外国人の中に入らないと生きていけません、ハハハ」・・・

包摂と介在物

2022年6月25日   岡本全勝

先日「こども食堂3」で、多様性に配慮して共に生きることをインクルージョン(inclusion)と言い、包摂や配慮と訳すことを紹介しました。これを読んだ知人から、次のような指摘が届きました。

昔、鉄鋼会社での私の仕事は、溶けた鉄を固めることでした。そこで出てきたのが「Inclusion」です。「介在物」と訳されていて、主に酸化物で不純物です。介在物があると健全な固体の鉄とはならず、鉄板にした時に割れの起点になったりする厄介物でした。いかに介在物を除去するかが、大きな課題でした。
「所変われば品代わる」で、ここでは「配慮」になるのですね。

インドに日本のカレー店

2022年6月25日   岡本全勝

6月6日の読売新聞「日本の味 アジア開拓…大手飲食業 商品開発 現地好みに」が載っていました。

・・・日本の大手飲食チェーンが海外で新たな市場の開拓を進めている。インドなど日本食レストランの「空白地」だった国のほか、大都市郊外や地方への出店が目立つ。日本食ブームの拡大が追い風となっているが、現地の好みに合った商品開発などきめ細かな対応が成否のカギを握っている・・・

・・・インド・デリー郊外グルグラム。IT企業や多国籍企業の高層ビルが並び、急成長を遂げるインド経済を象徴する場として知られる。
日本のカレー専門店チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」のインド1号店がここにオープンしたのは2020年8月で、「カレーの本場・インドに日本風カレーの専門店ができる」と注目を集めた。日本人駐在員に連れられたインド人スタッフが知人を連れて来店するなど次第に定着し、最も人気のメニューは「チキンカツカレー」(475ルピー=約800円)という。店員のマーシュ・マックスウェルさんは「この店では辛さやトッピングが調整できる。インドの飲食店ではこうした仕組みはないので面白いですね」と話す。
インドでは日本で牛丼店「すき家」を運営するゼンショーホールディングス(HD)も店舗を展開している。牛肉を食べないヒンズー教徒に配慮して、鶏肉や野菜などを使った丼もののメニューを中心に据える。
インドは巨大市場ながら、「自国の食べ物を好む人が多く、保守的な傾向が強い」(飲食業界関係者)とされる。それでも日本食レストランの数は徐々に増え、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると21年6月時点で約130店となった・・・