カテゴリーアーカイブ:社会の見方

宇宙の大きさ

2022年8月2日   岡本全勝

7月19日の読売新聞1面コラム「編集手帳」から。

・・・天文学を学ぼうとすると最初に太陽系の話が出てくる。地球と太陽の距離は、1億5000万キロ・メートル。大きすぎてピンとこない。日常の尺度で考えてみる
◆地球から太陽までの旅行を空想してみた。電卓をたたくと、時速300キロ・メートルの新幹線で57年程度、時速900キロ・メートルのジェット機なら19年程度かかると答えが出た。これらに比べると、光の速さは桁違いだと実感してしまう。太陽の光が地球に届くまで、わずか8分19秒だ
◆秒速30万キロ・メートルの光速でも、46億年を要する。想像を超える彼方に浮かんだ星々の撮影に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が成功した・・・

太陽まで新幹線で57年、ジェット機で19年かかるのですか。分かりやすい尺度です。

人への投資

2022年7月29日   岡本全勝

7月20日の読売新聞解説欄、倉貫浩一・編集委員「新しい資本主義 実行計画 人への投資 賃上げ促す」から。
・・・政府は6月に発表した新しい資本主義の実行計画で、成長と分配の好循環を生み出すため「人への投資」を強化する方針を決めた。企業に研修や教育の投資額や男女間の待遇格差などの情報開示を求め、人材を成長の原動力と位置付ける人的資本経営を浸透させる狙いがある。賃上げと経済成長につながる施策となるのか。課題を探った・・・

・・・政府は6月下旬に人的資本の開示についての指針案を発表した。「人材育成」「多様性」「コンプライアンス(法令順守)」などの項目を挙げ、研修時間や費用、新規雇用者数や従業員の離職率、定着率などの開示例を示した。金融庁の金融審議会も「人材育成方針」や「社内環境の整備方針」について、有価証券報告書の開示項目にするとし、女性管理職比率、男女間の賃金格差などを「企業価値を判断するのに必要な項目」と位置付けた・・・
・・・従来、企業は、教育や研修にかかるコストを「費用」と捉えてきたが、今後は、「投資」と位置付け、業績向上のため、新製品やサービスを生み出す優秀な人材を増やすことが重要になる。人的資本関連の情報は市場関係者の投資判断材料となるため、企業は情報開示と目標の達成を迫られることになる。
海外では欧州委員会(EC)や米証券取引委員会(SEC)などが企業に人的資本関連の情報開示を求める動きが先行している・・・

・・・また、目標を達成するため、能力や成果を重視して報酬や昇進を決める「ジョブ型」と言われる人事制度の導入も進めている。目指す役職や役割に必要な能力を明示し、足りない部分は従業員が社内研修制度で補ってキャリアアップを目指す。年功序列で給与水準が上がるのではなく、より自助努力が必要になる仕組みだ・・・
・・・人的資本経営を重視する企業は、経営の成果に結びつく人材育成戦略が求められることになる。ジョブ型の人事制度は、こうした目的に合致しているが、新卒の学生を一括採用して社内で経験を積ませて育成する従来型の人事制度との融合が課題だ。デジタル関連などの高い技術や知識を持つ従業員と、様々な職種をこなすゼネラリストとして働く従業員の待遇が二極化する可能性がある・・・

『信長が見た戦国京都』

2022年7月27日   岡本全勝

河内将芳著『信長が見た戦国京都』(2020年、法蔵館文庫)を紹介します。
私たちは、京都の街並みというと、平安京を基礎にして碁盤の目のような町ができあがり、建物は建て変わっても、今日まで続いているように思ってしまいます。平安京の西側・右京は早々と荒れてしまったとは聞きますが、あまり想像ができません。

この本は、織田信長が初めて上洛したとき(1559年)に、京の町はどのような姿になっていたかから始まります。平安京から、鎌倉時代、室町時代、そして応仁の乱以降、どのような変遷を経たかを描きます。
平安京が衰退したあと、応仁の乱などが京の町の縮小に輪をかけます。上京と下京の小さな町、現在の上京区と下京区よりはるかに小さな町が、自衛のための門や堀などを持ってできあがります。
度重なる焼き打ちなどにも遭いますが、復興します。それだけの財力と住民の組織があったのです。そして、それらに支えられた日蓮宗の大寺院が建ち並んでいました。建築だけを見ていては、なぜそのような町ができたのかは分かりません。政治、経済、地域、社会から見た中世の京都です。良く分析した良著です。

なぜ、信長は本能寺に泊まったか。武装集団を泊めるだけの宿泊施設はなく、信長は自分の居城を京都に持ちません。多くの武士は、上洛して民家を借り上げ(接収)したり、大きな施設であった寺を借ります。相手にとっては迷惑な話です。逆らえば、えらい目に遭います。金で解決するか、言うことを聞くかです。

インターネット・プラットフォーマー、情報操作の危険

2022年7月26日   岡本全勝

7月8日の読売新聞「岐路の資本主義」、村井純・慶応大教授の「デジタル時代の情報危機」から。

・・・インターネットを使うようになって30〜40年たったが、最初は学術界やネットを作った人間のためのものだった。その頃はごくわずかな人しか使っていなかった。当時から「(次世代のネットとされる)ウェブ3」や「(ネット上の仮想空間)メタバース」のような構想はあったが、利用者が少なかったので夢物語だった。
今はほとんどの人がネットを使うようになった。ネットはメディアの役割も担うようになり、そこに近づきつつある。現在は米グーグルの検索サービスや巨大IT企業のSNSが媒介して情報を届けたり、利用者と双方向のコミュニケーションができたりしている。
サービス上では、誹謗中傷やフェイク(偽)ニュースなどが流通しているという課題があるが、過渡期だと思う。
プラットフォーマーは、利用者の要望に沿って対応する。それはやるべきことだし、実際に自主的に進めてきた。
しかし、もう一つのアプローチとして、私たちが新たに何を作るべきかを考えないといけない。本質的には、情報の提供者と受益者(利用者)がどういう関係にあるべきかを追求していくことが一番大事だ・・・

・・・こうしたネットの課題を解決するのに、行き着くところは国際標準化だ。コンテンツと広告の関係に課題を感じる人たちが参加し、プラットフォームの構造を変える標準化の議論を進める必要がある。
こうしたネット上の標準化に向けては、日本企業の参加意識が薄かった。ネットは地球全体で一つの空間なので、日本が自分のこととして参加すべきだし、同じように考えている世界中の人と力を合わせた方が良い。プラットフォームの今のあり方に問題があるとすれば、標準化に参加するべきだ。現状に問題意識を持っている人はいっぱいいるので、そういう人たちと手を組んで、直していかなければならない・・・
・・・標準化に向けては、日本だけのガラパゴスではなくて、世界中で受け入れられることを念頭におく必要がある。
私は50年後のネットはどうなるか、というような会議に参加することが多い。参加者はみんな、信頼や倫理が大事だと言う。信頼と倫理で質の高い文化を持つ日本に対する期待はすごく大きい。日本人が精度の高いサービスやシステムを作ることや、災害時に助け合うことが知られているからだ。
私は日本でなければできない可能性があると楽観的に考えているし、日本が貢献すべき領域だと思う。この議論はあちこちで熟しているので、関係者で合意ができればそう遠くないうちに先に進むだろう。3〜5年で新しい世界ができても全然不思議ではない。

過去のインターネットの発展には、常に複数の岐路があり、修正しながら進んできた。地上がインターネットで覆われ、すべての人が使うという、理想として掲げてきたことはすべて実現している。衛星でインターネットがつながるようになり、山の奥まであらゆることがデジタルデータを通じた「知」として合成されていく。そのときに、情報に対する考え方が大きく発展するのではないか。
私たちは自分の考え方や生き方を守りつつ、発展していくことから目をそらさず、言いたいことを言い、問題があれば解決策を提案し一緒にやる。こういうことができる雰囲気ができていくのが、これからの社会ではないかと思う・・・

オンライン取材の背景

2022年7月25日   岡本全勝

7月16日の朝日新聞「メディア空間考」、浜田陽太郎記者の「同調圧力は米にも? ビル・ゲイツ氏とのマスク談議」から。本筋でないところを紹介します。

・・・6月中旬、米マイクロソフト創業者で、社会貢献活動家のビル・ゲイツ氏(66)に、オンラインでインタビューした・・・
・・・オンライン越しのゲイツ氏は瀟洒なオフィスのテーブルの向こう側に座っていて、かなり距離があった。背後には大きな窓。逆光になるので表情は陰になる。「あちゃー」と思ったが、声はちゃんと聞こえた・・・

・・・さて今回、私は自宅の寝室兼書斎から取材した。後ほど先方から送られたスクリーンショットに映っていたのは私のでっかい顔、背後には量販店で買ったカーテンと家庭用エアコン。世界屈指の富豪が、一介の記者が日々寝起きしている部屋のインテリアを見ながら話していたのか。不思議な気分だった・・・