カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ロシア、プーチン体制を支持する中産階級

2022年9月13日   岡本全勝

9月5日の日経新聞夕刊に、斉藤徹弥・編集委員の「長期化するウクライナ侵攻 ロシアの社会構造にも一因」が載っていました。

・・・ロシアがウクライナに侵攻して半年たちました。戦争が長期化する一因にプーチン大統領を支えるロシアの社会構造があります。一般に中産階級は民主化を志向するとされますが、ロシアの中産階級は必ずしもそうではないようです。

旧ソ連や中東欧の中産階級について分析した米国の政治学者ブリン・ローゼンフェルド氏は著書「独裁的な中産階級」で、ロシアのような非民主主義国では、国営企業や公務員など国営部門で働く中産階級は独裁を支持する傾向にあることを明らかにしました。
ロシアでは中産階級の6割が国営部門で働いています。民主国家なら民主化の要になるはずの中産階級がプーチン体制を支えている構図です。歴史社会学の立場からロシアを研究する鶴見太郎・東大准教授は「仮にプーチン氏が交代しても、同じような人物を求める社会構造になっている」と指摘します。
これはソ連崩壊後の30年で形成されました。大統領への信頼度は議会と同様に低迷していましたが、プーチン氏が強権的な体質を強めるにつれ、皮肉にも信頼度は高まってきました・・・

・・・鶴見氏はロシアの社会構造も、欧米諸国と同様なグローバル社会につながる層とローカル社会に生きる層の対立とみます。ローカルな人々による反グローバリズムの動きは、欧米ではトランプ現象などのポピュリズム(大衆迎合主義)を生み、ロシアのような権威主義国では独裁を支えているという見方です。
グローバル社会は一定の条件がそろえば誰でも参入できる普遍的なものです。しかし、途上国などは条件をそろえにくい場合があり、結果的に排除された人々が別の社会を形成すれば二極化してしまいます。
ポピュリズムも独裁も、処方箋はグローバル社会の普遍原則を守りつつ、排除につながらないよう工夫していくことという鶴見氏。「グローバル社会の構造を根気強く少しずつ変えていかなければならない。1世代、2世代で変わる話ではない」としています・・・

ウェブ版の記事には、より詳しい話が載っています。

般若心経「ぎゃてい、ぎゃてい」

2022年9月12日   岡本全勝

9月9日の肝冷斎に、「般若心経」の最後の「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提娑婆賀」(ぎゃてい、ぎゃてい、はらぎゃてい、はらそうぎゃてい、ぼじそわか)が載っていました。
仏式の葬式や法事の際にお坊さんが唱えられるのを聞いて、子どもの頃から、不思議な言葉だなあと思っていました。日本語にはない響きです。

で、インターネットで調べてみました。マントラの一つ。
意味は、「行こう、行こう、真実の世界に行こう、みんなで共に行き、仏の悟りを成就しよう」。サンスクリット語を漢訳せず、漢字で音写したもので、漢字に意味はないとのこと。
マントラは、サンスクリットで「文字」「言葉」を意味する。真言と漢訳され、大乗仏教、特に密教では仏に対する讃歌や祈りを象徴的に表現した短い言葉を指すとのことです。

子どもの頃に、家族で奈良薬師寺に初詣に行ったことがあります。高田好胤さんが、堂内で法話をしてくださり、最後に、みんなで合唱させられました。
それが、「行こう行こう幸せの国に行こう。みんなで行こう」というようなものでした(記憶は不確かです)。声が小さいと、再度合唱させられました。みんなの大きな声が、堂内に響き渡りました。そして、お参りした功徳があったような気がしました。これだったんですね、納得しました。

日本社会の意識がつくる孤立する家族

2022年9月12日   岡本全勝

9月5日の朝日新聞文化欄「元首相銃撃 いま問われるもの」、岡野八代・同志社大学教授の「家族が負う、政治が放棄した責任」から。

安倍晋三元首相への銃撃事件を起こした山上徹也容疑者は、家庭環境への不満や孤立感をSNSにつづっていた。ケア労働と家族の関係に詳しい政治学者の岡野八代・同志社大大学院教授は、事件の背景に「子育ての責任は家族が負う」という日本の家族観があると指摘する。

――事件の背景には「閉じられた家族」の問題があると主張されています。どのような意味ですか。
まず伝えたいことがあります。日本では事件が起きたとき、その社会的背景について言及すると、「容疑者を擁護している」との批判がでてきます。しかし、個人の罪を司法が裁くことと、その背景にある問題を論じることはまったく別です。社会的背景を考えることは市民一人ひとりの重要な責任ですし、政治家には政治的責任について考える義務があると思います。

日本では家族のことは家族任せとし、他の家族にはなるべく介入しない社会が築かれてきました。報道を見ると、山上容疑者の母親は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の活動にのめり込み、子どもたちの世話もできなくなった。それなのに、家族は固く閉ざされ、外からの支援が受けられなかった。家族は、子どもや高齢者といった社会で最も弱い人を抱える集団であることも多い。その家族に対し、すべて自分たちで責任をとれというのは、政治のありかたとしていびつです。

――自己責任論が子育てに対する家族の責任を強めることになるのですか。
未成年は経済的に誰かに依存して養育・教育されるので、自己責任論は例外なく家族責任を重視することになります。山上容疑者は、家族の外に支援を求めることができず、孤立を深めた。彼は崩壊した家族や、母親が作った負債に責任などとれないわけです。
自己責任論の問題は、本来とることができない責任を個人にとらせようとすることです。彼一人が思い詰めることのないよう、学費の支払いや悩みを聞くような社会的支援があるべきでしたが、国は責任を放棄していた。自己責任論には政治責任を免除する効果があり、それこそが問題の核心です。

日本の研究力低下の原因

2022年9月11日   岡本全勝

9月1日の日経新聞夕刊、私のリーダー論、橋本和仁・科学技術振興機構理事長の「政府と研究つなぐ」から。

ー科学技術政策に関わってきた経験から、日本の研究力の世界的な地位が低下した原因は何だと思いますか?

「国際競争力が低下しているのは事実でしょう。しかしちまたで言われているほどひどい状況ではないと思います・・・
・・・なぜ低下しているのか、いくつもの要因がありますが、根本的な原因はバブル経済が崩壊して以降、全体的な国家戦略が欠如していたことです。高度経済成長の時代が終わり、皆が努力すれば社会が良くなる時代が終わった段階で、科学技術も含め新たな戦略を描きませんでした。

英国やドイツは一度地位が低下して、それを食い止めるためにもがき苦しんだ結果、今があると思います。基本的にはずっと成長している米国や急成長している中国と日本を比較しても仕方ありません。欧州では科学技術予算はそれほど増えていませんが、努力や工夫で地位を維持しています・・・」

政治と宗教、統一教会問題

2022年9月10日   岡本全勝

日経新聞は、8月31日から「旧統一教会と政治」を連載しました。
統一教会については、さまざまな問題が指摘されています。一時は、オウム真理教などとともに報道もされたのですが、近年は取り上げられなかったように思います。

連載第4回(9月4日)の見出しは「「宗教=タブー」からの脱却」です。
戦後日本では、戦前の反省や憲法での規定により、宗教は政治や言論界では触れられなくなりました。「政教分離」の一言で片付けられてきたように思います。
他方で、家庭を破壊してしまうような活動、心の世界ではなく経済活動が優先されているような活動もあるようです。オウム真理教は、社会秩序を破壊するような活動にまで至りました。

宗教や心の問題は、安易に政治が関与すべきものではありません。それを前提としつつ、今回の事件をきっかけに、社会に問題を引き起こす事態や個人の生活を破壊するような事態については、信教の自由として保護すべきものではないことを議論してもらいたいです。