カテゴリーアーカイブ:社会の見方

古典を並べただけでは文学史ではない

2026年7月28日   岡本全勝

間違っていたら、ごめんなさい。
「文学史」とか「××文学入門」と銘打っているのですが、中身は古典や有名な小説の羅列だと思うことはありませんか。「思想史」「哲学史」も同様です。哲学者や思想家の著作を並べただけ、というものが多いと思います。それはそれで意味があるのでしょうが、それでは「文学全集(簡略版)」、「思想家著作(概要)一覧」ですよね。

歴史学だと、各年の事実を羅列した年表や年代記です。それも歴史学の一つでしょうが、読んでも面白くないです。そして何より、「一枚に簡潔にまとめよ」と言われても、羅列ではそれを要約できません。
何が起きたか、何をしたかではなく、思想家や小説家が、置かれた条件の中で何をやったか、何をしようとしたのかを知りたいです。さらに、社会にどのような影響を与えたかです。

もう一つは、支配者の行動を記録しただけでは、歴史や政治史になりません。哲学者の著作を紹介しても、その時代の思想史とは言えないでしょう。庶民が何を考えていたかを無視しては、思想史にならないと思います。

ジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲン著「アメリカを作った思想 ――500年の歴史」(2021年、ちくま学芸文庫)を読みながら、考えました。この本については、別途紹介したいと思います(いろいろ忙しくて・・・)。

電子書籍より紙で読む方が記憶に残る

2026年7月28日   岡本全勝

7月14日の朝日新聞「紙で読むと、脳のコスパ良い? 東大グループ、漫画で電子版と比較実験」から。

・・・同じ漫画の作品でも電子書籍で読むより、紙で読む方が脳の余計な活動をおさえられる「省エネ化」に役立つようだ。東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)らの研究グループが、脳活動を調べられるfMRIという機器を使い確かめた。グループは「社会的に文書の電子化が進み、デジタル教科書の導入などが検討されているが、知的活動や教育における紙の価値を再認識してほしい」としている。
同じ文章を読むにも、紙とパソコン画面で記憶や理解に違いが生じ、紙で読んだ方が読解テストや内容要約の成績がよかったという海外の報告がある。デジタルの文書は画面が瞬時に切り替わるなど、視覚的にも触覚的にも空間的な手がかりが欠け、記憶に残りにくいと考えられるが、脳で実際にどう働いているかはわかっていなかった。

研究グループは、首都圏の大学生・大学院生25人に、読んだことがない漫画を紙とデジタルで読んでもらう実験を試みた。
漫画の内容は男女2人が主人公のラブコメディーで、1話の前半と後半を男女別の視点で描く「ザッピングストーリー」と呼ばれる形式の作品。実験の参加者は、前半を紙かタブレット端末で、後半はすべてfMRI内でゴーグル型の装置で読んでもらう。その後、漫画の内容に関する問題の答えを4択から選んでもらい、反応時間や脳の活動を分析した。
問題は、前半だけ読んで答えられる「問題A群」と、前半と後半を両方読まないと答えられない「問題B群」がある。前半と後半は基本的には同じストーリーだが、主人公2人の視点が違うため、B群の解答には前半と後半の情報をうまく重ね合わせる必要があり、脳への負担が大きい。

実験の結果、前半をタブレットで読んだ場合にB群の解答時間は、A群の解答時間より1秒以上長く、統計上明確な差が出た。前半を紙で読んだ場合の解答時間は、A群とB群の間で差はなかった。
fMRIで脳活動を見ると、漫画の後半を読んでいるとき、前半をタブレットで読んだ場合は左脳の言語機能にかかわる領域(言語野)が強く活動しているが、前半を紙で読んだ場合はほとんど活動していなかった。つまり、前半を紙で読むと内容を理解しやすく、後半に脳の活動を節約できたとみられるという。

酒井さんは「タブレットだとタップ1回で画面が一瞬で変わり、すぐに次の情報が来るのに対し、紙を自然な動作でめくるわずか1秒ほどの間に、前の情報を咀嚼(そしゃく)して次のページに向かうことが内容の理解に大切ではないか」と指摘。「紙の本だとどのあたりを読んでいるかが感覚的につかみやすく、全体の長い文脈の中で主人公の発言などがどう位置づけられるかを頭の中で再構成しやすいことも考えられる」と話す・・・

日本の役所と郵便の素晴らしさ

2026年7月27日   岡本全勝

先日、アメリカの郵便事情を書きました。
戸籍関係の書類が必要なので、明日香村役場に郵便で申請しました。速達にしようかと思いましたが、レターパックライトが同じ早さ、インターネットで追跡できるとのことで、返信用も同封して、送りました。その追跡結果です。こんなに早いのです。経済指標には現れませんが、日本の貴重な財産ですね。

高円寺から明日香まで
7月21日11:16 杉並局引き受け
7月22日9:30 役場に配達

役場はすぐに処理してくれたらしく

明日香から高円寺まで
7月23日18:31 橿原局引き受け
7月24日11:58 我が家に配達

紙おむつがゴミの1割に

2026年7月26日   岡本全勝

7月6日の日経新聞に「少子化でも増える紙おむつゴミ 高齢化で2050年に一般廃棄物の1割超」が載っていました。記事を読んで、東日本大震災を思い出しました。避難所に支援物資を送ったのですが、「おむつが足らない」と要請が来ました。「たくさん送っているじゃないか」と言ったら、「子ども用でなく大人用です」と叱られました。

・・・紙おむつごみが増え続けている。子供の数が減る一方、高齢化で大人用の需要が急増しているためだ。2050年には一般ごみに占める割合が現在の倍以上の1割超になる。焼却や埋め立てに頼る処理に限界が近づくなか、資源として循環させる仕組みづくりが急務になっている。

紙おむつ市場の主役は子供から高齢者に移っている。日本衛生材料工業連合会によると、子供用の生産量は17年の159億枚をピークに減少し、25年には71億枚となった。一方で大人用は78億枚から105億枚へ増えた。23年に大人用が逆転した。
大人用紙おむつは子供用よりサイズが大きく重い。一般的な高齢者の排せつ物量で計算すると1日当たりの使用後重量は計1キログラムを超え、子供用の2.5倍以上に膨らむ。
環境省によると、使用済み紙おむつの廃棄量は23年度に216万トンと一般廃棄物全体の5.5%を占めた。50年度には最大で12.7%にあたる277万トンまで膨らむ見通しだ。

自治体は紙おむつの処理に頭を抱える。素材に高吸水性樹脂(SAP)を使うため燃えにくく、焼却時に炉内温度を不安定にする。排せつ物に含まれる塩分などが設備の劣化を招く要因にもなり、焼却炉の維持管理費や更新費用の増加につながりやすい。
焼却後の灰は最終処分場に埋め立てられるが、その容量にも限りがある。住民の理解を得るのが難しく、新たな処分場の整備は容易ではない。
解決策として期待されるのがリサイクルだ。大崎町と隣の志布志市は紙おむつ国内最大手のユニ・チャームと連携し、紙おむつごみを新品の原料として再利用する「水平リサイクル」に取り組んでいる。
大崎町のリサイクルセンターに運ばれた家庭の紙おむつごみは破砕・洗浄機で細かく砕かれ、汚れが取り除かれた後にパルプ、プラスチック、SAPに分離される。さらにパルプはオゾン処理設備で殺菌、漂白、脱臭を同時に施す。茶色がかった繊維は数時間で細菌が検出できないレベルまで除去された白い再生パルプへと生まれ変わる。現在は回収量に応じて週2回ペースで再生を繰り返している。
再生したパルプなどは再び紙おむつ工場へ出荷される。

ただ、全国では依然として焼却処分が主流だ。環境省の23年調査では、回答した自治体の約9割が紙おむつを分別回収していなかった。環境省は施設整備への補助などで後押しし、30年度までに150自治体でリサイクルの導入・検討を進める目標を掲げる。23年度の実施自治体は21にとどまる・・・

孤立しやすくなり、カウンセリングが必要とされるように

2026年7月24日   岡本全勝

7月5日の読売新聞「あすへの考」、東畑開人・臨床心理士の「カウンセリング 心のケア、人生の山越えるまで…」「人々が孤立しやすくなった結果、社会的に必要とされるように」から。
・・・様々な悩みであふれ、ストレスの多い現代社会。人生の苦難に直面するなかで、ある日突然、自身のメンタルが崩れてしまったり、身近な人が心の不調を抱えたりすることがあるかもしれない。
こうした「心の非常事態」に向き合うのが臨床心理士や公認心理師だ。どちらの資格も持ち、2026年の新書大賞を受賞した「カウンセリングとは何か 変化するということ」の著者でもある東畑開人さんは、約20年にわたり人々が抱える様々な悩みや葛藤に耳を傾けてきた。主宰する東京のカウンセリングルームを訪ね、現代を生き抜くヒントを聞いた・・・

夜眠れず、会社に出勤できない。ある日、子どもが学校に行けなくなる。この先どうしたらいいのだろうか――。
悩みを抱え、生活が危機に陥ったり、人生に行き詰まったりした時、人はカウンセリングを訪れます。病院や学校、役所など、様々な現場で働く心理士の同僚と話すと「ケアする体制が整うほど利用者が増える」などの現実を耳にします。近年、心のケアを必要とする場は増えていると感じます。
背景には、日本社会の構造変化があります。昔は地域や近所などコミュニティーの圧力が強く、いわゆる「おせっかい」が多い時代でした。自分のことは自分で決めたいのに、周囲の人が介入してくる。どう抜け出すかが人々の悩みの中心でした。
しかし、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した1995年以降、社会から次第に余裕が失われていきました。人々のつながりが希薄になり、個人主義が強まった結果、「周りの人のことがよくわからない」のが今の社会です。他者に立ち入ることが難しくなり、自己責任の風潮も強まり、人々が孤立しやすくなった結果、心のケアが社会的に必要とされるようになったと認識しています。

僕はこれまで、学校のスクールカウンセラーや、精神科クリニックの心理士として働き、約10年前からは東京でカウンセリングルームを開業しています。子どもから高齢者までやって来ますが、悩みのメインはやはり「孤独」です。家族がいて仕事もあり、周りに人はたくさんいる。うまく生きているように見えるけれど、実は孤独を抱えている人たちがそれなりに多いと感じます。

心のケアには2種類あります。一つは国が福祉として対応するケアで、基本的に「いかに生き延びるか」という問題です。食事や住まい、当座のお金の確保に始まり、心に必要な手当てを行い、人権を保障し、生活を立て直すための支援が広く行われています。実際、行政には子育てや介護など様々な相談窓口があります。
一方で、「いかに生きるか」というとてもプライベートな苦悩については、僕のような民間のカウンセラーが向き合う仕事になるように思います。

心のケアは基本的に、普段の生活や人間関係のなかでなされているものです。子どもを駅まで送ってあげる、疲れている相手においしいものを作る、落ち込んでいる同僚に声をかける。これらも立派な心のケアです。カウンセリングのプロでなくとも、できることはたくさんあります。
ただ、時々それがうまくいかなくなる時があります。例えば、子どもに今までうまく接することができていたのに、ある日突然「うるせえ!」と拒否されてしまう。何かおかしなことが起きているけど、なぜかわからない。スマートフォンが原因かと思って取り上げると、余計に関係は悪化する。
こういう時、子どもの心はいつもと違っています。僕はこれを「雨の日」と呼んでいて、心理学的に対処するのが心理士の仕事です。アブノーマルな心の状態になった時、心がどう動くかといった心理学の知識を活用し、プロとしての専門性を発揮するのです。