カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人を主語にした記事

2023年9月21日   岡本全勝

9月12日の朝日新聞「新聞記者の文章術 新聞を面白くするには」、大鹿靖明・編集委員の「人と、その言動 ストーリー際立つ」から。

・・・人間ほど興味深いものはない。愉快な人、すごい人、ざまあみろと言いたくなる人。新聞記事は「5W1H」が不可欠とされるが、実は「誰が」にあたる「Who」があいまいだったり、「幹部」「関係者」と匿名だったりすることが少なくない。「財務省は」などと役所や企業を主語にした記事も多い。人物紹介欄も「人間」を書き切るには小さなスペースだ。

読者をひきつけるのは「人」。それを実感したのは、新聞を離れてAERA編集部に在籍した9年半の雑誌経験だった。在籍中、省庁や大企業を書くときに、人物に着目して書く方法を編み出した。
東京電力の原発事故の記事では、勝俣恒久会長の生い立ちをさかのぼり、その言動を交えて書く。浮かび上がったのは「慢心」だった。日本航空の倒産を描くときには、財務部門出身者として再建役を期待されて登板したのに、会社更生法の適用の申請に追い込まれた西松遙社長を主人公に据えた。つまり「期待外れ」。こうすれば、官報みたいな経済記事がストーリーに変わる・・・

・・・「財務省は」ではなく「財務省の神田真人財務官は」と書き出せば、従来と違う記事に仕上がりそうである。Whoに着目すれば、新聞はもっと面白くなる・・・

葬祭扶助費の増加

2023年9月20日   岡本全勝

各紙が、生活保護費の葬祭扶助費の増加を伝えています、例えば、9月7日の読売新聞「葬祭扶助費 最多104億円 21年度 困窮者 独居や疎遠で」。

・・・生活困窮者が亡くなった際の火葬代などとして支給される葬祭扶助費の支給額が2021年度、過去最高の約104億円にのぼったことがわかった。生活に困窮する独居高齢者や故人の引き取りを拒否する親族の増加が背景にあり、多死社会における公的支援のあり方が問われている・・・

一人暮らしが増え、生活困窮費でなくても、身寄りがなくなくなった人の葬式をどのように社会が負担するかの問題になっています。

何もなくて当たり前

2023年9月19日   岡本全勝

9月10日の読売新聞、石浜友理・社会部主任の「「何かある」を探し「何もない」を敬う」が、考えさせる主張でした。

・・・新聞記者は「何かある」と忙しい。社会部の場合、大きな事件事故や災害が起きると、チームを組み、休日返上で取材に奔走する・・・
社会に伝えるべき情報はあるか。特ダネはどこに——。記者はいつも、「何かある」を追い求めている。

そうした心持ちで仕事を続けてきたため、皇室取材を担当した時、「何もない」ことに至上の価値を置く人たちと出会い、カルチャーショックを受けた。皇室の護衛や皇居の警備に当たる皇宮警察の護衛官である。
平成時代の2013年10月の園遊会は忘れられない。在位中の上皇ご夫妻の様子を取材していると、突然、招待されていた国会議員の一人が上皇さまに手紙を差し出した。「何か」が起き、前代未聞の事態に報道陣は騒然となった。手紙は原発事故の現状などを訴えるものだったとされ、この議員は国会で「天皇の政治利用」と批判を浴びた。
実はこの時、皇宮警察にも「そばにいた護衛官が阻止すべきだったのでは」と厳しい意見が寄せられていた。もし危険物だったら取り返しがつかなかったとの声も。「何もないこと、何も起こさせないことが我々の仕事だ」。そんな皇宮警察幹部らの自戒を込めた言葉を聞き、彼らの中に記者とは逆の行動原理があることに気付いた。

この原理は警察当局に限らないようだ。今夏、コロナ禍で4年ぶりに花火大会を開催した主催者からも同じような言葉を聞いた。
東京都足立区の花火大会は、雑踏警備の態勢を大幅に強化し、大過なく終了。区観光交流協会事務局長の坂田光穂(みつお)さん(62)に「100点満点でしたね」と水を向けると、こう返された。「いや、ゼロです。何か起きればマイナスに引き算されるが、何もなくて当たり前だからゼロ」・・・

弱者に徹底して優しい国

2023年9月18日   岡本全勝

9月7日の朝日新聞オピニオン欄、鈴木幸一・インターネットイニシアティブ会長の「ネット敗戦の理由」から、いくつか気になった部分を紹介します。私には、引用した最後の段落が最も気になります。ただし、「日本が弱者に徹底して優しい国」というのは、留保が必要です。声の大きな弱者には優しいのですが、このホームページ「再チャレンジ」の分類で取り上げる弱者にはとても冷たい国です。

・・・インターネットの時代が訪れて、はや30年。その間に創業したグーグルやアマゾンなどは、今や世界を席巻するガリバー企業だ。日本には、なぜそうしたビッグテックが育たなかったのか。「ネット敗戦」とも言われる我が国の現状について、「日本にネットを創った男」鈴木幸一さんは、いま何を思うのか。
――日本初のインターネット接続事業者(プロバイダー)としてIIJを設立してから、もう30年も経つのですね。
「ネットは20世紀最後の巨大な技術革新であり、世界を変える。その変化のイニシアティブ(主導権)を我々が取るのだ、と気負った思いを社名にこめました。当時の日本社会には、どこにもそんな認識はなかった。当局は通信事業者としての厳しい条件を課してくるし、民間企業の理解もなく、私は出資を求めて説得と金策の日々。1年以上も八方ふさがりの状況でした」
「そのころ米国では、すでにUUNETという世界初の商用プロバイダーがサービスに乗り出していました。日本もそれに遅れまいと、なんとか世界の2番手で本格的なサービスを始めたのは1994年の春でした」

――当時掲げた夢や目標は、実現できましたか。
「高い技術力で日本企業のネット化を先導し続け、売上高も3千億円近くになりました。ただ、設立後7年足らずで米ナスダック市場に株式公開し、世界企業をめざした勢いからすると、どうなのかなあ。アップルやグーグルなどGAFAと呼ばれる巨大IT企業の急成長を横目にすると、なぜ、という思いが頭から離れません」

――日本は米欧や中国に立ち遅れ「ネット敗戦」状態です。なぜこんなことに?
「ネットが国防予算で成長した軍事技術、国家戦略だという視点が、平和に慣れた日本では希薄でした。文化の違いも大きい。ネット事業というのは、法制度的にはグレーゾーンだらけです。検索ビジネスもユーチューブも、著作権法を厳密に考えたら微妙な点も多い。それでも米国の事業者たちは訴訟の山になることを覚悟し、乗り越えながら突き進んできました。それと対極なのが日本社会です」

――グレーゾーンの受け入れの可否が、日米の実力差につながったということですか。
「もっと深刻な問題があります。一つは日本ではプライバシーに神経質になりすぎること。さらに日本が弱者に徹底して優しい国だということです。IT化が進むと、まず使えない弱者に配慮し、IT化を遅らせたり昔ながらの仕組みを残したりする。二つの社会インフラが必要でコストが高くなり、遅れた仕組みもそのまま残ってしまう」・・・

自転車ヘルメット着用率の地域差

2023年9月15日   岡本全勝

NHKウエッブニュースが「自転車ヘルメット 着用率に地域差 愛媛は59.9% 新潟は2.4%」(9月14日掲載)を載せています。
・・・ことし4月に着用が努力義務化された自転車用のヘルメットについて、警察庁が都道府県ごとに「着用率」を調べたところ、最も高い県では60%近くに達していた一方、2%あまりにとどまっている県もあって、地域ごとの差が大きくなっています・・・

これだけも地域差があるとは。これは、なかなか興味深い現象です。日本人は、お上の言うことに従順だとか、世間の目を気にすると言いますが。年齢別、男女別ではどうなのでしょう。
昨日書いた「市民の行動変容」の重要な事例です。