カテゴリー別アーカイブ: 自然科学

都心のカラスが減っている

4月12日の朝日新聞に「都心のカラス、なぜ減るの 20年で7分の1、駆除進み生ごみも減り」が載っていました。

・・・東京都心のカラスが減っている。ねぐらに集まるカラスの調査では、20年前のピーク時に比べ、7分の1に減っていた。都が進めるカラス駆除の取り組みに加えて、新型コロナウイルスの影響で、エサとなる繁華街の生ごみが減ったことも拍車をかけている・・・
・・・都心に多いハシブトガラスは、冬場の夜、ねぐらとなる緑地に集まる習性がある。研究者らでつくる「都市鳥研究会」は、明治神宮(渋谷区)、豊島岡墓地(文京区)、国立科学博物館付属自然教育園(港区)の3カ所で、1985年から追跡調査を続けてきた。
2021年12月に調べると、前回15年の4816羽より4割少ない計2785羽に。ピークだった00年と比べると、85%も減っていた。
東京都が毎年都内40カ所で行っている調査でも、減少傾向にある。最も多かった01年度の3万6400羽から、20年度には1万1千羽まで減った。
カラスが都心で増えたのは、70年代以降のことだ。都心は天敵の猛禽(もうきん)類が少なく、針金など巣作りの材料も得やすい。特に家庭や繁華街から出る生ごみをエサとすることで、環境に適応していった・・・

そのカラスが減ったのは、ゴミを荒らされないようにカラスよけのネットやボックスを使うようになったこと、コロナ禍で飲食店が休業して生ゴミが減ったことによるのだそうです。我が家の近所では、毎朝カラスがうるさいのですが。「賢いカラスとの闘い

「さらに、近年は都心でもオオタカやハヤブサなどカラスを襲う猛禽類が観察されている。オオタカが都内の緑地で繁殖し、カラスをつかまえることで、減った場所もあるという」とのことですが、私が善福寺川公園で見たオオタカはカラスと同じくらい大きさで、カラスを襲うようには見えませんでした。「善福寺川公園のオオタカ

『一生モノの物理学』

鎌田浩毅、 米田 誠著『一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養』 (2022年、祥伝社)が、分かりやすく勉強になります。光、電子、磁力などを、身近な医療や機械、気象などから説明してくれます。××の法則を覚えるより、分かりやすい説明です。

出版社の宣伝文が的を射ているので、転載します。
「大学受験で文系を選択した人にとって理解が難しい世界――「物理」。
しかし、家電が動くのも、飛行機が飛ぶのも病気を発見できるのも、部屋の明かりがともるのもすべて根底には物理学が存在しています。
それだけ社会の根底理論となっている「物理」を知らないことはビジネスパーソンにとって大きな損失ではないでしょうか?..
そこで、「京大名誉教授」×「関西大手予備校・研伸館講師」という教えるプロがタッグを組み、”「物理が苦手」な人のための物理の本”を制作しました。
日常の中にある技術に活用されている物理の世界をわかりやすくお伝えします!」

胃がんは絶滅危惧種

3月23日日経新聞夕刊「がん社会を診る」は、中川恵一・東京大学特任教授の「ピロリ菌感染は激減、胃がんは「絶滅危惧種」に」でした。読むと、「へえ」です。

・・・長引くコロナ禍でストレスがたまっている方も多いはずです。かつて、このストレスが胃潰瘍の原因と言われた時代がありました。しかし、ストレスだけでは胃潰瘍はまず発症しません。
27年前の阪神大震災の直後、胃潰瘍の患者が増えました。避難生活のストレスが原因と考えられましたが、患者の8割以上がヘリコバクター・ピロリ菌の感染者でした。逆に、ピロリ菌に感染していない人にはほとんど胃潰瘍は発生していませんでした・・・
・・・胃がん患者のほとんどがピロリ菌に感染していますが、ピロリ菌の感染者のうち胃がんになる人は1%以下。ピロリ菌に感染しても胃がんになるわけではありません・・・

ただし、ピロリ菌に感染している人が塩分過多になると、胃粘膜の炎症が進み、胃がんを発症しやすくなるのだそうです。
アメリカでは、胃がんは白血病や膵臓ガンより珍しい「稀少がん」になっているとのこと。時代は変わるものですね。
ちなみに私も、40代にピロリ菌の除去を受けました。一安心かな。

感情と意識はどのようにして生まれるか

アントニオ・ダマシオ著『意識と自己』(2018年、講談社学術文庫)をようやく読み終えました。『デカルトの誤り』を読んで、興味が広がったからです。その間にほかの本にも手を出したとはいえ、半月以上かかりました。寝る前に布団で読むには難しく、毎晩10ページあまりで落ちてしまいました。

私が紹介するより、訳者の解説の方がわかりやすいので、引用します。
・・・ダマシオの言う「情動」とは、動物や人間のような有機体が何かを見る、聞く、触る、想像するなどしたとき、なにがしかの心の評価的プロセスが起こり、それが、同時にもたらされた身体的反応と組み合わされたもの。
一方、こうした情動的身体状態は神経信号や化学信号によって有機体の脳に報告され、脳の中で神経的に表される。これが「感情」。しかし、表象が脳の中に形成されること、すなわち有機体が感情を持つことと、有機体が「感情を感じること」とは違うというのがダマシオの議論の重要なポイントです。
生存のために働いているのが情動ですが、情動は意識されることなく、いわば自律的に働いています。暑いときに汗を流すのが情動の役割だとすれば、もっと涼しいところへ移動するという行為を取らせるための仕組みがfeeling感情だというのがダマシオの言葉の意味するところです。
そして、その「感情を感じること」「感情を認識すること」のために決定的な役割を果たすのが「意識」であるというのがダマシオの議論の構造となります・・・

神経細胞(ニューロン)がどのようにして、外部と内部の信号を受け、それを処理するか、その過程でどのようにして感情や意識が生まれるのか。不思議ですよね。
心身は別のものでなく、身からしか心は生まれません。発生学からみれば、生物が生命を維持することから始まり、外界を認識して生存に勝ち抜く能力を身につけてきました。その過程で、食べる、見る、感じる、逃げる、考えると発展してきたのでしょう。
脳の働きは、まだまだ分からないことだらけです。化学や物理の研究もよいことですが、この身近な問題の研究にもっと力を入れて良いと思うのですが。参考「脳の働きと仕組み、推理の能力

『デカルトの誤り』

アントニオ・R・ダマシオ 著『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 』(2010年、ちくま学芸文庫) が、勉強になりました。

宣伝の文章には、次のように書かれています(一部略)。
「著者自身が携わってきた症例や歴史的症例をもとに、著者は、日常生活の折々の場面で求められる合理的な意思決定には、そのときの身体状態と不可分に結びついている情動と感情の作用が不可欠であることを明らかにした(「ソマティック・マーカー仮説」)。神経科学の第一人者が、いまもさまざまな形で社会に浸透しているデカルト的心身二元論を強く批判しつつ、有機体としての心‐脳‐身体の関係を解くベストセラー」

私たちの脳は、理性的に物事を判断する前に、感情や情動で判断しているようです。人類が生物として進化する過程で、理性より先に身体的反応が発達し、それで生き残ってきたのです。怖いものに遭遇したら、あなたはどのように行動しますか。あらゆる場合を想定して、安全な方法を計算するより、まずは逃げろです。
子供の発育を見ても、最初に感情や欲求があって、理性はその後に身につくものですよね。そして、私たちは他人を外見で判断します。理性で確認する前に、見た目で好き嫌いを感じます。
情動や感情があって理性がない症例はありますが、理性があって情動や感情がない症例はないのだそうです。理性は、情動や感情につながっています。まずは、私たちにとって有用か害か、好きか嫌いかで判断するようです。納得しますわ。
「デカルトの誤り」とは、心身を分けて考えた(心身二元論)デカルトへの批判です。

そして、理性は感情を完全には制御できません。知らずと涙が出て、顔が赤くなり青くなり、鳥肌が立ち、手が汗をかき、心臓がばくばくします。ほとんどの場合、止めようと思っても止まりません。この問題は、先日の記事「心は放っておくと暴走する」につながります。
そして、私たちの職場でも有用です。瞬間湯沸かし器と呼ばれる人や、部下を怒鳴る上司がいます。理性だけでは止められないのですね。拙著『明るい公務員講座』202ページに、感情の暴走を止める方法を書いておきました。

門外漢には、読み通すこととすべてを理解することは難しかったですが、概要をつかめたら良しとしましょう。