カテゴリー別アーカイブ: 自然科学

まんが「寺田寅彦エッセイ集」

鎌田浩毅先生が監修された「これから科学者になる君へ 寺田寅彦エッセイ集」(2023年、KADOKAWA)を紹介します。
角川まんが学習シリーズ」は、小学生に向け、学習まんがです。
寺田寅彦は、「天災は忘れた頃にやってくる」で有名ですよね。
内容は、リンクを張ったホームページを見ていただくとして。大人でも楽しめます。小学生には少々難しいかな。

鎌田浩毅著『知っておきたい地球科学』

鎌田浩毅著『知っておきたい地球科学 ビッグバンから大地変動まで』(2022年11月、岩波新書)を紹介します。出版社の紹介文には、次のように書いてあります。
・・・宇宙や生命はどうやって生まれたのか。地球のエネルギー資源はどう作られているのか。気候変動や災害の原因は何か。ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問=地球科学は、未来を生きるための大切な知恵を教えてくれる。大人の学び直しにも最適な知的刺激に満ちた一冊・・・

私が半世紀前に高校で学んだ自然科学の物理、化学、生物、地学の4つのうち、当時は生物学と地学が「古くさく、つまらないもの」でした。ころが、その後の研究の発展で、生物と地学ががぜん面白いものになりました。
「はじめに」にも書いてありますが、数学は17世紀までに発達した微積分など、化学は19世紀までに発見された内容、物理学は20世紀初頭に展開された原子核物理学までが教えられます。
それに対し、生物学はその後、遺伝子や生物多様性の研究が進み、地学はプレートテクトニクスや地球温暖化という現在進行形の研究が教えられています。また日本列島は東日本大震災以来、活動期に入り、国民の関心も高まりました。

目次を見ていただくと、壮大な話と身近な話が載っています。鎌田先生のわかりやすい語り口で、最新の研究が書かれています。岩波新書にふさわしい内容で、これは売れるでしょう。

鎌田浩毅先生の最終講義が本になりました

鎌田浩毅著『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』(2022年、角川新書)を紹介します。副題にあるように、鎌田先生の最終講義を本にしたものです。YouTubeの最終講義は90万回再生されたそうです。

「はじめに」に、最終講義は通例、定年退職する教授が研究人生を振り返ることが多いのですが、鎌田先生の場合は「昔を振り返っている場合じゃないんです。これから日本列島は大変なんですからね!」から始まったのですと、書かれています。
「あとがき」には、京大で教壇に立った当初は、学生から「惨憺たる授業」と呼ばれていて、自らの講義を録画して見て反省し、改善することで、「京大で一番受けたい授業」になったと書かれています。この点は以前に教えてもらって、私も参考にさせてもらったのですが、なかなかその域には達しません。

鎌田先生は、9月に『池坊専好×鎌田浩毅 いけばなの美を世界へ 女性が受け継ぐ京都の伝統と文化』(2022年、ミネルヴァ書房)を出版しておられます(すみません、紹介が遅くなって)。
野田秀樹さん、山際寿一さんとの対談に続く第3弾ですが、今回は全く違った分野の方との対談です。火山学者から見ると、華道とその家元はどのように見えるか。こちらも興味深いですよ。

日本の研究力低下の原因

9月1日の日経新聞夕刊、私のリーダー論、橋本和仁・科学技術振興機構理事長の「政府と研究つなぐ」から。

ー科学技術政策に関わってきた経験から、日本の研究力の世界的な地位が低下した原因は何だと思いますか?

「国際競争力が低下しているのは事実でしょう。しかしちまたで言われているほどひどい状況ではないと思います・・・
・・・なぜ低下しているのか、いくつもの要因がありますが、根本的な原因はバブル経済が崩壊して以降、全体的な国家戦略が欠如していたことです。高度経済成長の時代が終わり、皆が努力すれば社会が良くなる時代が終わった段階で、科学技術も含め新たな戦略を描きませんでした。

英国やドイツは一度地位が低下して、それを食い止めるためにもがき苦しんだ結果、今があると思います。基本的にはずっと成長している米国や急成長している中国と日本を比較しても仕方ありません。欧州では科学技術予算はそれほど増えていませんが、努力や工夫で地位を維持しています・・・」

とても大きな量を表す言葉

8月5日の朝日新聞科学面に「10の30乗、ルーキー「クエタ」」という記事が載っていました。

・・・スマートフォンのデータ通信量の話題で、よく耳にする「ギガ」。数の桁を表す約束事「SI(国際単位系)接頭語」の一つだ。今年11月、ギガよりはるかに大きい「クエタ」など四つが、新たに加わる見込みとなった。「新規加入」は31年ぶり。「ルーキー」に期待される役割は?

「SI接頭語」は、十進数の桁数(主に3桁ごと)に名前を定めたものだ。「メートル」や「ヘルツ」といった単位の前に使うことで、とても大きな量やごく小さな量を簡潔に表すことができる。
例えば、「1000000000ヘルツ」と書かれていても、一瞬では読みにくい。でも、接頭語を使えば、10の9乗は「ギガ」なので、「1ギガヘルツ」とすっきり表せる。
いま接頭語で表せる最も大きな桁は10の24乗の「ヨタ」、小さな桁は10のマイナス24乗の「ヨクト」だ。そこに10の30乗を表す「クエタ」と27乗を表す「ロナ」、10のマイナス27乗を表す「ロント」とマイナス30乗を表す「クエクト」が加わる見込みとなった。

計60桁を接頭語がカバーするようになる意義を、長さの単位「メートル」で考えてみよう。地球から観測できる宇宙の果てまでの距離(約138億光年)は、10の26乗メートルのスケールで、「約0・1ロナメートル」と言いかえられる。
「プランク長(ちょう)」と呼ばれる現代の物理学で扱える最小の長さは、10のマイナス35乗メートルのスケールで「約0・00001クエクトメートル」と言える。つまり、人類が現時点で認識しうる世界の全スケールを接頭語でスカッと簡潔に表せるようになるのだ・・・
記事には、表がついています。
キロ=10の3乗、メガ=10の6乗、ギガ=10の9乗、テラ=10の12乗、
ペタ=10の15乗、エクサ10の18乗、ゼタ=10の21乗、ヨタ=10の24乗、
ロナ=10の27乗、クエタ=10の30乗
この逆に小さな数字についても、センチ、ミリ、マイクロ、ナノ、ピコ・・・と続きます。

8月14日の日経新聞も取り上げていました。「10の30乗、新呼称は「クエタ」