「自然科学」カテゴリーアーカイブ

奄美大島でマングースを駆除

奄美大島で、マングースが駆除されました。
9月4日の朝日新聞「外来マングース、奄美大島で根絶 ハブ対策不発、捕獲30年
・・・鹿児島県奄美大島で駆除を進めてきた特定外来生物マングースについて、環境省は3日、「根絶宣言」を発表した。ハブ対策などの目的で持ち込まれて約半世紀。いったん定着したマングースがこれほど大きな島で根絶されたことはなく、「世界的に前例のない、生物多様性保全上の重要な成果」としている。
南アジアなどが原産のマングースはハワイなどにも持ち込まれたが、定着後に完全排除できたのは面積約1平方キロ以下の島だけ。奄美大島は712平方キロもある。奄美大島は21年、世界自然遺産に登録。その審査でも事業が評価されていた・・・

・・・マングースは1910年にまず、沖縄島に導入された。環境省によると79年ごろ、その子孫が奄美大島に放たれた。島民を悩ませた毒蛇ハブと、農作物を荒らす外来ネズミの対策が狙いだった。
だが、昼行性のマングースは、夜行性のハブではなく、アマミノクロウサギやケナガネズミなど島在来の希少種を襲った。自然保護関係者の危機感に押され、90年代前半に駆除が始まった。
2000年度からは環境庁(当時)と鹿児島県が取り組みを本格化。05年に外来生物法が施行され、マングースが「特定外来生物」に指定されると、同じ年度に「駆除のプロ」として専従12人の「奄美マングースバスターズ」が発足した。
「誰も経験がなく、手探りの連続だった」と発足時の隊員、山下亮さん(52)。おびき寄せるエサは何がよいか。魚肉ソーセージ、唐揚げ、ツナ缶、チーズなどを試し、たどり着いた一つが、豚の脂身の塩漬け。島の保存食を参考に森でも長持ちするようにした。
捕獲用には、塩化ビニール製パイプを使った小型の筒ワナを改良。中のエサをマングースが食べようとすると、首のあたりでひもが締まる。駆除が進んだ07年には、「切り札」として先進地ニュージーランドから探索犬を導入した。
張りめぐらせたワナは島全域に約3万個。マングースの推定生息数は、ピークの00年の1万匹から20年には10匹以下に。姿を見るのが難しいほど減っていた希少種も戻ってきた。環境省は、18年4月の最後の捕獲から6年がかりで慎重に確認し「根絶宣言」に踏み切った・・・

ハブ対策に導入したマングースですが、ハブを襲わず、黒ウサギなどを襲ったのです。人間の浅知恵でした。かつて、ハブとマングースを戦わせる見世物がありました。マングースは輸入品なので、負けないように、ハブを弱らせていたと聞いたことがあります。

沖縄県で、ウリミバエの根絶に成功したことがあります。農薬散布でなく、不妊の虫を大量に放って、子孫を残さないようにするのです。中公新書で読んで、感激したことを覚えています。今は絶版になっているようです。伊藤嘉昭著『虫を放して虫を滅ぼす―沖縄・ウリミバエ根絶作戦私記』(1980年)

タンポポの綿毛

タンポポの綿毛は、皆さんご存じですよね。軸の下に種がついていて、風に乗って飛んでいきます。子どもの頃、吹いて飛ばしました。
でも、あの花からは、想像もつかない形です。どのようにして、あの黄色い花びら(一枚が一つの花です)が、綿毛に変化するのか。綿毛が生育する姿など、見たことがありません。

先日から疑問に思って、道ばたの花を観察していました。花が終わった後、顎が閉じているように見えます。でも、よくわかりません。
インターネットで検索したら、よい映像がありました。NHKの教育素材です。「タンポポの花とたね
なるほど、こうなっていたのですね。黄色い花びらは、落ちてしまうようです。
植物の進化は素晴らしいです。神様でも、こんなことは思いつかないでしょう。

気象神社

3月17日の日経新聞日曜版に、天気予報が特集されていました。記事に、気象神社が出てきます。
次のようなことが、書かれています。
「現代では祈る内容も多種多様だ。結婚式当日の好天を祈るカップルが多いが、エアコン会社は猛暑を、タイヤメーカーやスキー場の運営会社は降雪を、使い捨てカイロの製造会社は厳冬を祈る」

稲作時代はみんなで、田植えの時期に雨を、それ以外は晴れと適度な雨を祈ったのでしょうが。これだけ多様な、かつ相反するお願いをされると、神様も大変でしょうね。

気象神社は高円寺駅前、氷川神社の境内にあります。氷川神社が我が家の氏神になるので、初詣などに行きます。説明によると、「気象神社は、1944年(昭和19年)4月、大日本帝国陸軍の陸軍気象部(杉並区馬橋地区)の構内に造営されました。軍にとって気象条件は戦略、作戦を講じるのに大事な要素であったため、科学的根拠に基づいた予報がされていましたが、予報的中を祈願するなど、気象観測員の心のよりどころとされていたそうです。
その後、戦後の神道指令で撤去されるはずの気象神社でしたが、調査漏れにより残存。先々代宮司の山本実が受入を決断して、高円寺氷川神社に遷座されることになりました」とのこと。

陸軍気象部は戦後、気象研究所となり、それが筑波に移転した跡地が馬橋公園になっています。孫と遊びに行く場所です。

『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』

鎌田浩毅先生の新著『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』(2024年、丸善出版)を紹介します。同社が出している「47都道府県百科シリーズ」の一つのようです。

地震や火山活動が活発になって、地学への関心が高まっています。宣伝文には、次のように書かれています。
「現代社会で関心の高い地震・火山についても言及し、また迫力ある図版も交えながら、全国の特徴的で珍しい地質景観/ジオサイトを興味深く解説する。
「地質と地質景観の基礎知識」を第I部に配置することで、誰でも抵抗なく読み通せる内容構成
各都道府県にどのような地質景観があるかがすぐ探せる都道府県別編集
知りたい地質景観がすぐに探せる充実した巻末索引
考古学、化石採掘、天文学、地震・火山、地球科学などの研究をこれから始めようとしている人にとっても知っておくと役立つ内容満載」

図鑑なので、調べやすく、読みやすいです。
参考「鎌田先生の解説、能登半島地震の仕組み

『行為主体性の進化』

マイケル・トマセロ著『行為主体性の進化 生物はいかに「意思」を獲得したのか』(2023年、白揚社)を読みました。

宣伝には、次のように書かれています。
「認知心理学の巨人トマセロが提唱する画期的な新理論!
何をするべきかを自分で意思決定し、能動的に行動する能力、それが「行為主体性」だ。生物はどのようにして、ただ刺激に反応して動くだけの存在から、人間のような複雑な行動ができるまでに進化したのか?
太古の爬虫類、哺乳類、大型類人猿、初期人類の四つの行為主体を取り上げ、意思決定の心理構造がどのように複雑化していったのかを読み解いていく」

主体性の進化に着目するとは、なかなか素晴らしい着眼点ですね。生物が生まれた時は、刺激に対し反応するだけでした。著者は、その後に4つの段階を経て、現在の人間のように考え行動できるようになったと説明します。
まず、太古の脊椎動物が、目標指向的行為主体となります。次に、太古の哺乳類が、意図的行為主体になります。そして、太古の類人猿が、合理的行為主体となり、太古の人類が、社会規範的行為主体になります。
それを生んだのは、それぞれの生物のおかれた生存環境です。そこで生きていくために、意図による行動が生まれ、集団での行動が生まれます。環境が主体性を生むのです。この説明はわかりやすいです。推測でしかありませんが。

もう一つ知りたいのは、そのような意識が、脳の中でどのようにして生まれているのかです。まだまだ、わからないことばかりですね。