カテゴリーアーカイブ:経済

景気回復の終わり

2008年8月30日   岡本全勝
29日の日経新聞が、今回の景気回復を解説していました。
2002年2月から約6年間続いた景気回復がとぎれ、後退局面に入ったことが確実になったのです。景気の山(拡大のピーク)と谷(下げ止まりの底)の判定は、内閣府が行いますが、しばらく時間がかかります。谷から山への期間が、回復局面です。
仮に2007年12月が山だったとすると、拡大期間は71か月になり、戦後最長だった「いざなぎ景気」(1965年11月から70年7月)の57か月を上まります。戦後の平均期間は33か月なので、その倍になります。
もっとも、今回の景気回復は、力強くありません。平均実質成長率では2.1%。いざなぎ景気の11.5%や、バブル景気の5.4%に比べ、はるかに低いです。
戦後最長だけれど、実感のない景気回復でした。エコノミストも、どう命名するか悩んでいるようです。
成長寄与度を見ると、輸出が61%に対し、個人消費は38%です。グローバル化で成長したけれど、内需は盛り上がらず、ということです。名目成長率も上がらず、給与が上がらなかったので、個人には実感できませんでした。
しかし、もう、かつてのような大きな成長は、見込めないでしょう。そして、世界経済との関係が、大きくなります。すなわち、世界経済の変動に影響されることと、新興国の経済成長をどう日本が取り込むかです。前者は受動的影響、後者は能動的影響です。

高齢者医療費の負担の仕組み方

2008年8月23日   岡本全勝
西濃運輸(株)の健康保険組合が解散したことが、大きく取り上げられています。22日の読売新聞石崎浩記者、日経新聞大林尚編集委員の解説がわかりやすいので、それを基に説明します。
健康保険組合は、各企業がつくり、従業員と家族の医療費を支えます。このほかに、中小企業の従業員と家族を対象とした社会保険庁が運営する「政府管掌保険」、公務員を対象とした「共済」、そのほかの人(自営業や勤めていない人)の「国民健康保険」(市町村が運営)があります。
ここで問題は、高齢者です。高齢者は医療費がかさみます。しかし、ほとんどの高齢者は働いていませんから、国民健康保険になります。企業の健康保険組合や公務員共済は現役世代ですから、必ず国民健康保険が苦しくなります。そこで、高齢者の医療費を、健康保険組合などから支援する制度があります。
それを、2008年度から、さらに変えたです。その一つが、春に問題になった「後期高齢者(75歳以上)医療制度」です。もう一つが、前期高齢者(65~75歳)なのです。健康保険組合などからの支援額(拠出金)を増やしたため、各組合は加入者からの保険料を引き上げたのです。
これまで政管健保より低い保険料だと、健康保険組合は、企業と従業員の負担は少なくてすむので、メリットがありました。しかし、拠出金が増えて政管健保より高くなると、企業が独自に健康保険を運営するメリットはなくなります。政管健保に乗り換えるのです。
「・・健保制度は、民間が自主性に基づいて運営するのが原則。従業員のために独自の病気予防事業をしたり、腕が立つ医師の多い病院と個別に受診契約を結んだりするなど、企業経営に近い感覚が求められる。その自主性を活かす条件は、従業員と経営者が折半する保険料負担と、その見返りとしての医療給付との関係が対になっていることだ。
にもかかわらず、高齢者医療費として召し上げられる拠出金負担には、健保組合の経営努力がおよびにくい問題がある・・」(大林編集委員)。
仕組み、問題点、改革方向について、詳しくは記事をお読みください。

グローバル化時代の経済対策

2008年8月22日   岡本全勝
21日の朝日新聞「私の視点・景気拡大の終わり」から。
水野和夫さん
・・グローバル化のもとでは、企業は簡単に国境を越える。つまり国境を持った国民国家の力が衰える一方、米国やロシア、中国などの新しい「帝国」とグローバル企業が台頭した。グローバル企業をつかさどる資本は、16世紀の絶対君主をしのぐような権力を手に入れ、圧倒的に優位になった時代といえる。国民国家として、資本と国家・国民が一体化していたのが近代だったが、資本と国家の結婚・共存関係が終わったのだ。
・・資本の力が国民の力を上回ったので、世界で戦える資本家はこれからも事業の拡大を期待できる。一方、国家は規制などによって働く人を守ることができなくなった。
・・国境を前提にした「近代」の仕組みによる総合経済対策はナンセンスだ・・
飯田泰之准教授
2002年2月から続いた景気拡大が終わろうとしている。戦後最長の拡大局面だったが、回復を実感したという人は少ないだろう。それもそのはずで、景気拡大と好況・好景気は本来別物だのだ。
経済状態が「方向として」改善しているのが景気拡大である。一方、好況は、実際の経済活動がその国の潜在的な経済水準、つまりその経済の本来の実力を超えた状態を指す。
目安としては、景気の拡大により生産力が追いつかなくなる。またはその予兆として賃金の上昇が始まると、好況といえる。逆に、どれだけ長期の景気拡大が続いても、経済の本来の実力を発揮できていないなら、好況ではない・・

増税時期を失した日本

2008年8月19日   岡本全勝
16日の読売新聞「失速、最長景気」インタビュー、石弘光元政府税制調査会長の発言から。
・・景気拡大が続いているうちに、消費税を引き上げて財政再建の糸口を作るべきだった。日本経済は(雇用、設備、債務という)3つの過剰を解消し、増税に耐えうるだけの力がついていました。
小泉政権で消費税率引き上げを封印したのは、政治的には正解だったかもしれませんが、マクロ経済的には非常にまずかった。財政の構造改革をしなかった・・

経済成長が解決する問題、低成長が顕在化させる問題

2008年8月13日   岡本全勝
13日の日経新聞経済教室は、大田弘子前経済財政担当大臣の「弱み克服、たゆまぬ成長で」でした。
・・地方経済の低迷や、正規と非正規雇用の格差など、分配をめぐる問題の多くは、実は高度成長期から存在し、これまで覆い隠されてきたものであると、私は考えている・・