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経済

負担と受益の将来推計

今日17日の経済財政諮問会議は、「社会保障制度と財源のあり方(社会保障と税)について」でした。民間議員から、給付と負担の選択肢」についての試算が示されています。
試算Ⅰ(p2)は、2011年度に向けた試算です。①14.3兆円の歳出削減を行ったケース、 ②11.4兆円の歳出削減を行ったケース、③は①に比べ、2008年度から2011年度にかけて毎年度1兆円の歳出を積み増すとしたケースの、3つです。
新成長経済移行シナリオ(名目成長率3.0%、実質成長率2.4%)の場合、③では増税必要額は3.2兆円です。成長制約シナリオ(名目成長率2.2%、実質成長率1.6%)の場合は、増税必要額 6.6兆円です。
試算Ⅱ(p6)は、中長期の社会保障の選択肢です。2011年から2025年までを、試算してあります。
給付維持・負担上昇ケース(一人当たり給付を維持する場合、国民の負担はどの程度増えるのか)と、給付削減・負担維持ケース(一人当たり負担を維持する場合、給付をどの程度削減する必要があるのか)です。
成長ケース(名目3.2%、実質1.7%成長)と、制約ケース(名目2.1%、実質0.9%成長)の2通りで試算してあります。
給付維持の場合は、税と保険料をあわせた国民の負担は11~12兆円程度増加。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で14~29兆円程度の増税が必要です。
給付削減の場合は、給付を3割程度削減することが必要。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で8~24兆円程度の増税が必要です。
18日以降の新聞で詳しく解説されるでしょうから、お読みください。

日本はガラパゴス諸島

23日の日経新聞「電機再編」に、次のような記述があります。
・・隔絶した環境で、生物が世界と異なる進化の経路をたどったガラパゴス諸島。内向き志向が強い国内電機業界は、そんなガラパゴスに似る。典型が携帯電話機だ。昨年で9億7800万台の世界市場のうち、日本はわずか約5%の4800万台弱。限られた市場に大手電機9社のすべてが参入し、独自の世界で競い合う・・
「日本の産業界はガラパゴス諸島」説は、先日、ある学者から教えてもらいました。その名付けの卓抜さに、脱帽しました。
もちろん、日本が独自の商業文化を発展させることは、悪いことではありません。それが外国と勝負でき、勝てるものならば。しかし、隔絶した条件でのみ進化できるのなら、それは世界では勝てないでしょう。

農業政策

23日の朝日新聞耕論は、「農業再生への道は」でした。生源寺真一教授の発言から。
・・約8万ある水田集落の半数以上には、主業農家(総所得の半分以上を農業所得が占める農家)が1戸もない。
・・「今の農政は小規模農家の切り捨てだ」という批判があるが、小規模農家が弱者であるかのような議論は実態と違う。規模が小さい兼業農家は自治体や企業の勤め人も多く、専業や主業農家よりも経済的には恵まれている。農業を副業にしている農家の場合、総所得に占める農業所得は3%前後にすぎない。兼業農家を無理に排除する必要はないが、厳しい財政事情の下で、サラリーマン農家の小遣いを多少増やして終わるだけの財源の使い方では、都市の人々の支持は得られない・・
私も、農家を一律に議論する曖昧さに、疑問を感じています。専業農家とサラリーマン兼業農家、稲作農家とそれ以外の農家、じいちゃんばあちゃんの農家と壮年の農家、業としての農家と自家消費の農家を、区別して議論すべきだと思います。
そして、農家と農業を分けて議論すべきです。農業を振興することは必要です。しかし、それと農家を守ることとは、別です。
サラリーマン兼業農家は、土地を持っていないサラリーマンからすれば、資産を持った恵まれた人なのです。そして、通常はその人たちは、稲作です。米は余っています。その人たちの「何を」、公費で支援・保障しようというのでしょうか。野菜や果物は、兼業の片手間では、できません。
これに関しては、日経新聞経済教室8月27日の本間正義教授の解説「日本の農家は零細ではあるが、決して弱者でも困窮者でもない。農家の総所得は勤労者世帯より2割以上多い。ただし、農業所得は総所得の14%に過ぎない。日本の農家は零細ではあるが、農地という資産を保有し、勤労者世帯よりはるかに豊かである」や、29日の神門善久教授の解説「農家が農地の農外転用で手にする収入は年間4.8兆円で、毎年の作物生産額5.8兆円の8割に相当する。零細農家の多くは兼業農家で、土地持ちサラリーマンか土地持ち高齢者と言って過言でない。農外転用はまたとない錬金術で、農地は宝くじである」も参考になります(書くのを忘れていました)。

挑戦

22日の朝日新聞変転経済は、「シャープの挑戦、テレビをすべて液晶に」でした。
10年前、テレビもパソコンもブラウン管でした。画面の幅と同じくらいの奥行きがありました。今や、そんな大きな箱は、見なくなりました。若い人は知らないでしょう。
しかし、それには、厳しい企業間の競争があったのです。もちろん、かつてのNHKテレビ「プロジェクトX」のような成功例の影に、それよりはるかに多くの失敗「プロジェクト×(バツ)」があったのでしょう。私は、成功例も教科書になるけど、失敗例の方がもっとためになると考えています。
記事の中でも紹介されていますが、かつて日本の半導体メモリやDRAMは、他国の追随を許しませんでした。しかし、今や、後塵を拝しています。
これらの教訓は、挑戦しない限り、置いて行かれること。しかも、一度成功しても安泰なのは、数年しか続かないこと、などです。
先日、地方行政制度も、大きく変化をし続けていることを書きました(9月17日の記事)。制度以上に、現場では大きな競争にさらされています。国際競争・近隣団体との競争だけでなく、サービスなどでは民間との競争もです。市場化テストが、その手法です。

最低賃金

最低賃金の引き上げが、ニュースになっています。中央最低賃金審議会が目安額を示し、各県の審議会がそれに沿って県ごとの金額を決めます。毎年のことが、今年特に話題になったのは、ワーキング・プア問題からです。一部の地域では、最低賃金が生活保護費を下回っているのです。これでは、何のための最低賃金か、わかりません。
平均額は687円です。これは先進諸国では、突出して低いのです。イギリスフランスは1,200円程度だそうです。ちなみに、私の近所のアルバイト募集は、時給800円とか、850円です。
5日の産経新聞「明解要解」が、わかりやすく解説していました。昭和34年に、日本の最低賃金法が制定された際に、18歳の単身者の賃金を基準にしたそうです。親と同居していることが多く、一人で自活する金額ではなかったとのこと。さらに、企業の支払い能力を、考慮しているからです。
ここが議論になります。企業からすれば、最低賃金を引き上げると、会社がつぶれて、ひいては雇用を守れないことになります。一方、ヨーロッパ流では、最低賃金を支払えない企業は、市場から退出してもらうという考え方です。
短期的には、最低賃金を払えない企業が困りますが、長期的には高い賃金を払える企業だけが残ります。そして、給与水準が上がります。良く似たものに、円高があります。円高になると、その水準でかろうじてやっている輸出企業は困ります。しかし、長期的には、国際競争力のある企業が残ります。日本の国力も、上がります。いずれも、短期的困難と長期的好結果があるのです。
ところで、生活保護が国民としての最低限度の基準とすれば、それを下回る賃金は、憲法違反といえないでしょうか。生活保護費との差を公費で補填すべし、という議論が出てこないのでしょうか。
しかし、一番の課題は、退出した企業の代わりに、労働者を受け入れる職場をどう作るかです。地方では、それがなくて困っています。長期的には、市場経済が解決してくれるのでしょうが、今働いている人たちが、困るのです。