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経済

保育所に市場原理を

5月1日の日経新聞経済教室は、鈴木亘准教授の「待機児童対策、市場原理で。大幅な財政削減可能、質向上と効率化同時達成」でした。
・・厚生労働省は待機児童数は1.8万人とするが、全国的には100万人近い供給不足がある。8,000億円の財源が必要とされるが、厚労省は財源が確保できないと改革の議論はできないとして、改革をサボタージュしてきた。
しかし、その考え方は全くの間違いである。政府の規制改革会議が提案しているのは、直接契約・直接補助方式の導入と、保育に欠ける要件の見直しの2点である。これで、追加財源はいらず、供給量を増やし、質の向上もできる。
認可保育所入所者は運営費の4分の1程度しか保育料を払っておらず、残りが公費補助である。一方、認可外保育所への補助金はわずかで、これは官業の民業圧迫である。保育所に補助金を出すのではなく、利用者に利用券を与える方式にすれば、競争条件が均等になる・・
提案のように、施設補助から利用者補助に変え、措置から契約に変えた前例として、介護保険があります。詳しくは、原文をお読みください。

サービス業の生産性はなぜ伸びないか

これに関連して、朝日新聞が3日から、「成長戦略の足元」を連載しています。3日は「生産性、伸びぬサービス業」で、散髪屋さんが出ています。散髪屋さんは、生産性の上がらない代表例として、良く取り上げられます。でも、10分1000円の散髪屋さんが、はやっています。逆に、カリスマ美容師がいるのですから、理容もカリスマ理容師が、良いサービスと高い料金を取ればいいと思います。一律料金でカルテルを結ぶから、生産性が上がらないのです。
4日は、「商店街、進まぬ代謝」です。高松市の成功した商店街と、寂れた商店街を取り上げています。ここは、諮問会議が出張した場所です。成功した秘訣は、所有と利用の分離です。地権者は共同出資した会社に、土地を定期借地で貸します。そして、別の使いたい人が、商店を使うのです。寂れている商店街は、土地建物を持った商店主が、はやらない店を続けます。記事は、中小企業の延命策が起業家の参入を阻み、結果として商店街を衰退させていることを指摘しています。これは、農業も同じです。
わかりやすく、読み応えある連載です。

成長力強化への早期実施策

4月4日に、経済対策閣僚会議が「成長力強化への早期実施策」を決定しました。これは、新年度に実施される、経済対策関係の事業の一覧になっています。おおむね4月から6月に、実行される施策です。予算などで決まっているものからの抜粋ですから、ここで初めて出てくる事業はありません。
しかし、新年度に政府が取り組む政策(経済関係)の一覧って、これまでなかったのですよね。それで言うと、新年度になって政府が取り組む重点事業一覧も、公表されていません。新聞が「4月から暮らしはこう変わる」なんていうのを、一覧にすることはありますが。このような政策一覧を公表することは、意義があると思います。
とりまとめは、経済財政担当大臣(私の属している組織)です。国会議員に説明に行くと、「予算が増えるのはどれか」という質問があります。しかし今回の施策は、総理が「財政出動を伴わないこと」と、指示しておられます。1990年代までのように、公共事業の追加・減税といった、財政出動ではないのです。かつては、「真水がいくらの規模か」というのが、紙面を賑わせました。今は、「お金を追加すればすむ」という経済構造では、なくなったのです。

通貨と政治

最近のドル安を見つつ、買ったまま放ってあった、谷口智彦『通貨燃ゆ-円・元・ドル・ユーロの同時代史』(2005年、日本経済新聞社)を読みました。面白かったです。第二次大戦で、イギリス・ポンドからアメリカ・ドルに国際基軸通貨が交代したこと。それは単に経済財政力によるものでなく、政治によるものだったこと。日本・円をアジア共通通貨にしようとする試みと挫折など。著者の主張のうち、どこまでが通説なのか、門外漢の私にはわかりませんが。
国際政治・国際経済の場で、一国の主張を通すだけの「能力」と「意欲」が必要であり、二つは別物であることが、よくわかります。もっとも、この「能力」と「意欲」は、国内政治でも必要なのですが。状況に流されるのでなく、状況を把握しつつ目標と戦略を立てること。そのためには、長期的な視野と持続する意思も必要です。これらが、日本政治と官僚に、欠けているようです。

減税は不況の元?

今朝の新聞に、「ガソリン税値下げなら、GDP下振れ」という記事が載っていました。第一生命経済研究所の試算だそうです。
記者さんとの会話
記:これだと、増税して道路を造った方が、経済は良くなるのでしょうか。
全:う~ん。私には、にわかに理解できないね。不況の時は減税して需要を喚起すると、大学では習ったなあ。ケインズ経済学だったけど。
記:この試算が正しいのなら、なぜ1990年代に減税したのですかね。
全:いや、あのときは、減税しつつ、公共事業を積み増しした。
記:でも、それではダメだと学習したのでしょ。そんな財政運営は、持続不可能です・・
研究所の名誉のために、試算のアドレスを載せておきます。原文では、「家計1.6兆、企業1.1兆の減税効果により世帯当たり年3.2万円の負担減」という見出しなのですがね・・。