カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

通貨と政治

最近のドル安を見つつ、買ったまま放ってあった、谷口智彦『通貨燃ゆ-円・元・ドル・ユーロの同時代史』(2005年、日本経済新聞社)を読みました。面白かったです。第二次大戦で、イギリス・ポンドからアメリカ・ドルに国際基軸通貨が交代したこと。それは単に経済財政力によるものでなく、政治によるものだったこと。日本・円をアジア共通通貨にしようとする試みと挫折など。著者の主張のうち、どこまでが通説なのか、門外漢の私にはわかりませんが。
国際政治・国際経済の場で、一国の主張を通すだけの「能力」と「意欲」が必要であり、二つは別物であることが、よくわかります。もっとも、この「能力」と「意欲」は、国内政治でも必要なのですが。状況に流されるのでなく、状況を把握しつつ目標と戦略を立てること。そのためには、長期的な視野と持続する意思も必要です。これらが、日本政治と官僚に、欠けているようです。

減税は不況の元?

今朝の新聞に、「ガソリン税値下げなら、GDP下振れ」という記事が載っていました。第一生命経済研究所の試算だそうです。
記者さんとの会話
記:これだと、増税して道路を造った方が、経済は良くなるのでしょうか。
全:う~ん。私には、にわかに理解できないね。不況の時は減税して需要を喚起すると、大学では習ったなあ。ケインズ経済学だったけど。
記:この試算が正しいのなら、なぜ1990年代に減税したのですかね。
全:いや、あのときは、減税しつつ、公共事業を積み増しした。
記:でも、それではダメだと学習したのでしょ。そんな財政運営は、持続不可能です・・
研究所の名誉のために、試算のアドレスを載せておきます。原文では、「家計1.6兆、企業1.1兆の減税効果により世帯当たり年3.2万円の負担減」という見出しなのですがね・・。

コンテンツ産業

17日の読売新聞が、日本の漫画や小説が韓国でヒットしている状況を伝えていました。ところで、その中で紹介されていますが、日本国内のコンテンツ産業は、約14兆円で世界ではアメリカに次いで第二位です。ところが、輸出の割合がアメリカは18%に対して、日本はたったの2%です。

オーダーメイドと汎用品

14日の日経新聞経済教室は、篠崎彰彦教授の「IT活用促進し低成長脱却」でした。
流通や金融などのサービスで、日本は早い時期からIT化に取り組んだのです。しかしその後、生産性の向上につながっていません。理由は、システムの技術問題というより、業務の手順や運用の仕組み、業界の取引慣行などの仕組みが制約なっているのです。企業ごとのしきたりにあわせて、システムが進化し、それに経費がかかるとともに、企業や業態を超えた情報のやりとりが進まないのです。
業界用語で「作り込み」と呼ばれる、オーダーメイドのシステム作りです。汎用品を使えば、安く早くできるのに。この原因は、オーダーメイドをほしがる発注主とともに、それぞれに作る方が儲かるIT業界に原因があるようです。
地方自治体でいえば、地方税や住民基本台帳など、基本は法令で決まっているのですから、全国で共通に使えるはずです。しかし、各団体がそれぞれに開発しました。しかも、他の人にはわからないブラックボックスになり、手直しのたびにいわれるだけの費用を取られます。最初に0円で入札するようなことが起こるのも、このテクニックに引っかかったのです。わかりやすい言葉で言えば、カモにされたのでしょうね。