カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

株式市場と経済

記者さんとの会話の続き
記:株が下がっていますが、経済は悪くないというのは、どういうことですか。
全:専門家に聞いてきたよ。株式市場で株価が下がるというのは、株を売りたい人が増えて、株価が下がっているということ。それと、生産・消費とは別なんだ。自動車会社が、これまでと同じだけの自動車を作って、消費者が同じだけの自動車を買うと、日本経済は悪くなっていない。株価の下落と実体経済とは、ひとまず別なんだね。
記:株が下がると、株の配当が減るので、株の保有者は所得が減りませんか。
全:それも違う。自動車会社の業績が同じなら、株の配当金額は同じ。株価の下落と配当とは別なんだね。しかし、持っている株が下がると、元気がなくなる。また、経済の先行きが悪くなると考える人が増えると、消費が落ち込む。
記:株価が下がると株式市場が縮小して、経済規模が縮小するのではないですか。
全:それも、株式市場の規模・総株価と、実体経済規模とは別ということやね。Aさんが100万円で株を買ったとする。1年後に株価が上がって、150万円になったとする。でも、その会社の売り上げ(日本全体の生産と消費)が変わっていなかったら、GDPは変わらないよね。
記:その値上がりの50万円分は、実体経済の裏打ちのない価値なんですね。
全:すごく単純化しよう。次に、Aさんが、弱気になって、株を売りたいと考える。でも、150万円では買う人がいない。120万円で買う人(Bさん)が出てくると、売買が成り立つ。売買前は、Aさんが株を150万円分持ち、Bさんが現金を120万円持っていた。売買後は、Aさんが売って得た金120万円を持ち、Bさんが120万円分の株を持つ。現金はどこにも消えていないけど、株価は下がったんだね。

経済対策

記者さんとの会話
記:株価が、大きく下がっていますね。
全:日本だけじゃなく、アメリカ発の全世界同時、という感じだね。
記:政府は、手を打たないのですか。
全:僕は担当でもないし、専門家でもないから、責任あることはいえないけど。まず、まだ景気は悪いわけではない。もちろん、株価が下がるのは、景気の先行きが悪くなるだろうという見通しだからだろうけど。
記:なぜ、こんなに下がるのでしょうね。
全:僕が聞きたいよ。日本は、個人金融資産は1,500兆円もある。優秀な企業、質の高い労働力もそろっている。それに、安全な社会。どこをとっても、悪くないんだけどね。円はドルに対して、値上がりしてるし。
記:そうなんですよ。だから、今は株の買い時だと思っているのです。なぜ、その1,500兆円をみんな使わないのかなあ。株式市場から引き上げたお金は、どこに行っているんでしょうね。
全:一部は石油とか、その他は預金かね。それでは景気はよくならない。お金は使ってこそ、リターンがあり、景気が良くなる。
記:そうなんですよ、そのお金を使うように、し向ける必要があるのです。それにしても、政府の対策はないのでしょうか。
全:考えられるのは、まず、金利の引き下げ。ただし、現在が超低金利なので、ほとんど下げる余地がない。次は、減税と公共事業の追加。これまた、現在が大幅な財政赤字なので、やるとさらに財政が悪化する。それと、1990年代にこの政策をやったけど、はかばかしくなかったので、小泉内閣でやめた手法や。逆に、財政健全化をすることが、経済をよくする長期的手法と考えられている。ここでぶれると、逆戻りになる。
記:財政を健全しておかないと、また金利を平常状態に戻しておかないと、いざというときに政策を発動できないのですね。
全:おっと、まだまだ景気が悪いから財政再建を急ぐなとか、金利引き上げを急ぐなと主張していたのは、誰だったかなあ。

財政投融資改革

19日の朝日新聞変転経済は、財政投融資改革の経緯をたどるものでした。1997年の省庁改革最終報告で、郵政事業改革は当初案から後退し、民営化せず公社になることが決まりました。しかしその際、郵便貯金の政府への預託制度が廃止されました。これが、財政投融資・政策金融改革の第一歩になりました。また、郵政民営化につながりました。

財政再建への道筋

17日の経済財政諮問会議で、「日本経済の進路と戦略」が了承され、18日の閣議で決定されました。これは、経済運営の中期指針です。期間は基本的には5年間で、小泉内閣では決定した後毎年改訂されました。2007年1月に安倍内閣が「進路と戦略」を定め、今回はその改定になります。よって、期間は2007年から5年間、2011年度までとなっています。今年から数えると、4年です。
本文とともに、そこに添付された参考試算(リンク先のp22)が、話題になります。ここには、これから4年間の経済の見通しと財政の見通しが試算されています。詳しくはそれをごらんいただくとして、ポイントを説明しましょう。
試算は、合計4つのケースでされています。経済については、成長シナリオとリスクシナリオの二つです。日本の持つ潜在成長力(産業の実力)が発揮される場合と、発揮されない場合です。後者は、簡単に言えば、機械や設備があるのに使われない場合と考えてください。
財政については、「骨太の方針2006」で決めた歳出削減の二つのケースです。すなわち、2011年度までに14.3兆円削減する場合と、11.4兆円削減する場合です。この組み合わせで、4通りになります。
一番良いのは、経済は成長シナリオで財政は14.3兆円の削減をする場合です。すると、2011年度では国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、GDP比0.1%(7,000億円)程度のマイナスになります。悪いのは、経済はリスクシナリオで財政は11.4兆円削減する場合です。これでは、GDP比1%のマイナスです。2011年度のGDPは、570~550兆円程度です。
政府は、2011年度でのプライマリーバランス黒字を、公約しています。そこで、新聞報道では、「増税必要に」と書いたのがありました。その報道は、やや不正確です。
まず、2011年度での黒字化の道筋を示したのは、「骨太の方針2006」(リンク先のp50)(2006年7月)です。そこでは、自然体では16.5兆円の赤字が生じると試算しました。そして、14.3~11.4兆円の削減を打ち出しました。この時点では、14.3兆円歳出を削減しても、その差の2.2兆円赤字だったのです。それについては、「歳入改革による増収措置で対応する」と書いてあります。それは、主に増税になります。
次に、2007年1月に、「進路と戦略」の参考試算を出しました。この時点では名目成長率が上がり税収が増えたので、成長シナリオで歳出削減を14.3兆円行うと、2011年度で黒字化するとなりました。そして、1年たって、今回の試算です。そこでは、2007年の名目成長率が低くなったので、2001年度で黒字化せず、赤字になりました。それでも、「骨太の方針2006」時点での良くて2.2兆円赤字より、赤字幅は小さいです。すなわち、この赤字幅は、経済の状況に左右されます。もちろん、歳出削減を、既定方針通り実施する必要もあります。
さらに、この目標は基礎的財政収支の黒字化であって、財政の黒字化ではありません。そのためには、さらなる歳出削減と増税が必要です。

主権国家を超える経済

17日の日経新聞「やさしい経済学ー21世紀と文明」、田中直毅さんの連載「多元化する世界と日本」から。
・・第二次大戦後の経済史は、主権国家とこの枠を超えようとするものとの対抗として描くことができる。通貨をめぐる経済政策の変遷は、明らかにその中心に位置する・・
ドル紙幣の半ば以上が米国以外で使われるという歴史的展開に伴い、米国の金融政策が米国経済の内部のみに焦点を当てて行われてよいわけではないとの認識が広まる・・この非居住者が保有するドルの発生に始まる、主権国家と自由を求めるカネの流れとの間の相克の中で、ついに主権国家の方が自由なカネの流れを前提として受け入れたうえで、自らの守備範囲を制限する方向に転じたのである・・
ユーロの創設の過程で、主権国家の内側の問題とされた金融と財政の枠組みが、主権国家を離れることになった。価値保蔵という機能を持たされる共通通貨の受容とは、金融と財政に関する主権の放棄につながらざるをえなかった・・欧州連合諸国では、景気刺激のための金融と財政の組み合わせという概念が消えた。
バブル崩壊後の日本では、不況ならば歳出増と金融面からの刺激という提言が、経済学者から相次いだ。前提は、主権国家の内部におけるマクロ経済の整合的な運営という「神学」であった。結果として、文明史の読み誤りであった・・