9日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅先生の「資源高騰と経済の舵取り」でした。
・・資源価格の高騰を背景にして資源を多く持つ国々が国家的ファンド(SWF)をつくり、先進国の市場に資金を大量に投入することが話題になっている。これを市場に対する「国家の復活」であるとする議論もあるが、こうした国家的ファンド自身が市場の産物であり、市場動向に基本的に依存した現象である。
・・注意すべき点は、われわれの歴史的体験と違うタイプの国家なるものが登場しつつあることである。近代化とは多くの国民が創意工夫をこらして営々と労働し、その成果を民主政治などを通して享受することであるというのが、この数世紀の人類の共通の理解であった。これに対して、富は生産されるものであるよりも、地面を「掘る」ことによって得られるというタイプの国々が台頭しつつある
・・先に述べた近代化モデルのような政治的民主化といったものへの社会的誘因は弱く、膨大な富の蓄積と権威主義体制との両立が起こりやすい
・・この資源価格高騰依存型の体制が、世界の新しいモデルになる可能性は少ない。しかし、その間、膨大な富の国際的移動が起こり、かつての先進国が相対的に富を失うことは避けられない・・そのダメージをなくすることはできないにしても、それを少なくするための賢明な方策を考えることは、今や政府の大きな課題である。