カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

アジアで負ける最低賃金

10月17日の朝日新聞に、大倉忠司・鳥貴族HD社長の話「外国人労働者来てもらわないと」が載っていました。
焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」は、昨春以降、2度の値上げに踏み切りました。

――値上げの理由は原材料高やエネルギーコストの上昇?
「一番の目的は従業員の給料アップのためです。諸外国に比べて日本の給料は安すぎます。海外の方が稼げると、すし職人など人材が流出しています。物価上昇が進む外国にあわせて、日本もモノの値段を上げていくべきです。もちろん賃上げとセットで」
「外国人労働者にもそっぽを向かれかねません。鳥貴族では、パート・アルバイト従業員の2割が外国籍ですが、もっと時給を上げないと日本に来てくれなくなるでしょう。日本は外国人の雇用を積極的に受け入れていかなければ成り立っていかない。このままでは『失われた30年』が40年、50年になっていくと思います」

外国との経済格差

この30年間、日本の経済が発展せず、所得が上がりませんでした。その間に、欧米は先に行き、アジア各国が追い上げ追い越していきました。日本は、安い国になりました。

9月25日の日経新聞、石鍋仁美・編集委員の「JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国」に次のような話が載っています。
・・・10月1日、JRグループが大幅値上げを実施する。購入方法によるが、上昇率は普通車で49〜69%、グリーン車56〜77%になる。ただし一般の日本人はほぼ関係ない。対象は訪日観光客が買える全国乗り放題の「ジャパン・レール・パス」。売れ筋の7日間用だとこの上げ幅になる。
今の7日券の店頭価格は東京・大阪間の新幹線往復と大体同じ・・・

これまで安くしていた外国人観光客用料金を、日本人並みに上げたのです。それでも、一人あたり所得が日本を超える諸外国観光客からは、まだ安い価格です。
「松竹梅3段階の価格を用意すると、日本人は竹、外国人は松を選ぶ」という業者の話も紹介されています。
都市の高層ホテル、地方の古民家改装宿など外国人狙いの宿泊施設も、高級物件が多いとのこと。東京六本木には、1杯1万円のラーメン店ができたそうです。

一つの国土に、二つの経済圏ができています。
でも、かつて途上国に仕事や観光に行ったとき、同じことを経験しましたよね。悲しいのは今回は状況が逆転して、豊かな訪日外国人に対して、貧しい日本人がサービスを売ることです。

9月29日の日経新聞「経済教室」、吉田二郎・ペンシルベニア州立大学教授「世界一の大都市形成に寄与 住宅市場の特質と課題」には、安い日本の住宅が取り上げられていました。
ワンルームおよび1LDKアパートの家賃は、東京都心では平均約14万円ですが、ロンドンでは約39万円、ニューヨークでは約56万円です。
住民にとってうれしいですが、他の条件の違いがあるとしても、それだけの経済格差があるということでもあるのでしょう。

預金金利と配当利回りの比較

川北英隆先生のブログ、10月2日は「預金金利と配当利回りの比較」でした。
定期預金と普通預金と株式配当利回りが1985年以降折れ線グラフで図示されています。わかりやすいです。

・・・定期預金金利として1000万円以上の定期預金のデータを用いた。大雑把には、高度成長期から1985年頃にかけ、1年定期で4%から7%の間で推移している。
預金金利の現状は、周知のように限りなくゼロに近い。7月末現在、1000万円以上定期預金でさえ0.059%である。
一方の株式配当利回りはといえば、足元で2%を超えている。定期預金金利と逆転したのが1995年頃である。それ以前は、普通預金金利を下回っていたこともある・・・

私の年代は、子どもの頃に貯金を教えられました。株式投資は、危ないと聞いていました。社会人になったときに、生命保険を勧められました。その後、個人年金もできましたが、あまり関心はありませんでした。
この図を見ると、かつては預金で持っていても正しかったのです。しかし、今は状況が大きく変わりました。

日本社会の大企業志向

8月14日の朝日新聞夕刊「大企業志向――技術あるのにスタートアップ低調な日本 起業ノウハウ学ぶ場、もっと」から。

革新的な技術やビジネスモデルを伴って起業し、短期間で急成長するスタートアップ(新興企業)が、日本では育ちにくいとされる。かつては「ものづくり大国」と言われた日本で、何が問題となっているのか。日本通のベンチャーキャピタリスト、アニス・ウッザマン氏(47)に聞いた。

――日本のスタートアップを取り巻く現状は、世界各国と比べてどんな課題がありますか。
日本政府によると、日本には現在、約1万社のスタートアップがありますが、世界のスタートアップのうち、1割以下という少なさです。数年前に比べれば増えていますし、人々の認知も広がったと思いますが、グローバル水準で見たとき、スタートアップやイノベーションのハブになれるかというと、あと一歩足りない。シリコンバレーやイスラエルのような地位をアジアの中で築いて欲しいです。

――そうはいっても数年前と比べて日本でスタートアップが増えてきた背景には何があるのでしょうか。
政府の政策だと思います。日本経済復活のため、イノベーションが大事ということを政府が悟り、シリコンバレーの状況を研究するなどしてきたからだと思います。それに合わせて一部の大学も活発に動き始め、イノベーションやアントレプレナーシップ(起業家精神)関連のプログラムが行われたり、大学発のファンドができたりしています。

――政府が支援に力を入れ始めたのは日本経済に対する危機感の表れなのでしょうか。
そうでしょうし、国が支援する方向性は正しいと思います。日本の技術者には十分ポテンシャルがあります。私も東工大にいたことがあるので、日本の研究や技術のレベルの高さは知っています。ただし、そうした深い研究などが実用化されたり、法人の設立まで至らなかったりしているのが課題です。実用化や法人化にはビジネスのアイデアや知識が必要ですが、日本では技術者がそういったことに触れる機会が少なく、結局、大企業に就職する傾向があると思います。

株式投資

株価の変動は、円ドル相場とともに、社会人になってから仕事にも関係あるので、気にするようになりました。しかしそれは、経済の動きとしてであって、自分の財布とは縁遠い話と思っていました。知人には、「儲けた」「損をした」という人もいましたが。日経新聞の多数のページを占めている株価欄も、邪魔なだけでした。

子どもの時に学校でも、貯金の重要性は教えられました。貯金箱も、いろんなところでもらいました。郵便貯金もさせられました。他方で株については、「怖いものだ」と教えられました。「祖父が買った株や国債は、敗戦で紙切れになった」と父に教えられました。
どこでどのように買うかも知りませんでした。大きな街には証券会社の建物がありましたが、縁の遠い存在でした。そもそも、若いときは給料で生活することが精一杯で、その後は家を建てた借金を返済することが先決でした。

株式投資の専門家である川北英隆先生のブログに、しばしば株のすすめが書かれています。「株式投資は実践あるのみ-1」以下の連載が、わかりやすいです。