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経済

最低賃金

中央最低賃金審議会は5日、地域別の最低賃金(時給)の引き上げ額の目安を15~7円と決めました。読売新聞は、次のように伝えています。
・・生活保護の水準まで最低賃金を引き上げることを目指した改正最低賃金法が7月に施行されたことを受け、生活保護の水準を下回る12都道府県については、目安を上回る引き上げを求めた。・・引き上げ額の目安は例年通り、全都道府県を4ブロックに分けて示された。さらに今年度は、生活保護水準を下回る12都道府県について、生活保護と最低賃金の「乖離額」が初めて提示された。乖離分は原則2年以内、最長5年程度で解消することを求めた。何年で解消するかは各都道府県の審議会に委ねる・・
かつて、このHPで「生活保護が国民としての最低限度の基準とすれば、それを下回る賃金は、憲法違反といえないでしょうか」と書き(2007年9月9日の項)、ドーア先生のコラムに引用してもらいました(2007年10月22日の項)。

「骨太の方針」主な内容

 

 年度
    主な内容
2001
小泉内閣
竹中平蔵大臣
不良債権問題の2~3年内解決
2002年度の国債発行を30兆円以下に(公共事業、社会保障、地方財政の削減)
首相公選制の検討
2002
広く薄く簡素な税制構築
2010年代初頭に基礎的財政収支黒字化
1年以内に三位一体改革工程表作成
構造改革特区導入
2003
政府・日銀でデフレ克服
社会保障給付費の伸び抑制など持続可能な社会保障制度に
三位一体改革で国庫補助金4兆円削減
2004
2005年に郵政民営化法案提出
三位一体改革で地方へ3兆円の税源移譲
2005
政策金融改革で基本方針
公務員総人件費改革で純減目標
市場化テスト導入
2006
与謝野馨大臣
2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化
(歳出歳入一体改革。分野別削減目標提示、不足分は歳入改革で)
再チャレンジ支援
2007
安倍内閣
大田弘子大臣
成長力底上げ戦略
2008
福田内閣
「骨太2006」(歳出歳入一体改革)の堅持
道路特定財源一般財源化の方針
低炭素社会の構築
 2009
麻生内閣
与謝野馨大臣
「経済の危機」と「社会の危機」を一体的にとらえ、「安心・活力・責任」の3つの目標を同時に達成するための道筋を示す
活力: 当面及び構造的な「経済の危機」を克服
安心: 少子高齢化、格差の拡大傾向等の「社会の危機」を克服
責任: 「短期は大胆、中期は責任」との観点から、財政健全化を推進

 

歳出歳入一体改革

22日の経済財政諮問会議で、2011年度までの財政収支見通しの内閣府試算が公表されました。経済成長率を下方修正したので、2011年度での収支は悪化しています。
骨太の方針2006」(最終ページ)で決められた、14.3兆円の歳出削減を行った場合、名目成長率が3%以上で、国と地方を合わせた基礎的財政収支は、3.9兆円の赤字になります。すなわち、目標である基礎的財政収支を黒字にするためには、3.9兆円の増税が必要になります。「骨太の方針2006」のもう一つの案である11.4兆円を削減した場合は、3%成長でも6兆円、名目成長率が1%代半ばでは7.9兆円の増税が必要です。
「これで大幅な増税が必要になった」と読めるような新聞報道もありましたが、「骨太の方針2006」でも、2~5兆円の増税が必要でした。昨年の試算では、経済成長が見込まれたため、赤字幅=増税必要額は小さくなっていました。それが大きくなった、と言うことです。

増税についての世論調査

21日の東京新聞が、時事通信社の世論調査結果を載せています。消費税引き上げについて、賛成が42%、反対が54%です。2006年調査では、賛成31%、反対65%でしたから、かなり差が縮小しています。
しかし、「あなたは増税に賛成ですか」と聞かれれば、大概の人は「反対です」と答えるでしょう。「増税しないと、大きな借金を毎年、子や孫に残しています」という説明付きで、「それでもあなたは、増税に反対ですか」と聞いて欲しいです。
22日の朝日新聞は、「にっぽんの争点」で、「一からわかる消費税」を特集していました。わかりやすい解説ですが、ここでも、現在の財政が大幅な赤字で、将来世代に大きな負担を残していることを書いていませんでした。

新前川リポート

経済財政諮問会議に置かれた「構造変化と日本経済」専門調査会が、2日に報告書「グローバル経済に生きる -日本経済の「若返り」を」を発表しました。これは、いわゆる新前川リポートです。
4日の日経新聞経済教室に、会長である植田和男教授の解説「新前川リポートとグローバル化対応」「開国なくして成長なし」が載っています。
元祖「前川リポート」は、1986年に発表された「国際協調のための経済構造調整研究会」(座長・前川春雄元日銀総裁)です。標題からわかるように、日本の大幅な経常収支黒字を、縮小させるためのものでした。そこでの具体的提言は、内需拡大、市場開放などでした。
今回の「新前川リポート」を、植田教授は「グローバル化の波に乗りきれなかった日本経済を再び軌道に乗せるための提言である」と位置付けておられます。そして、次のようなことを指摘しておられます。
新興国が世界経済に参加して資源高騰が起き、一方で金融不安が起きている。世界経済はグローバル化を進め、成長のためにはこれに乗らざるを得ない。また、日本のような非資源国こそ、グローバル化の利益を享受できる。一層の市場メカニズム活用と、他方での所得再分配機能強化が必要である。改革に躊躇すると、日本の衰退は必至である。
6日の日経新聞社説は、「経済若返り、問われる実現力」として、新前川リポートを取り上げていました。
・・かつて日本銀行総裁を務めた前川春雄氏が1986年に中曽根康弘首相に提出した経済構造報告書になぞらえて、21世紀版の前川リポートと位置づけられている。
この20年間に日本の経済構造は一変した。高齢化率は11%から21%へ上がり、出生率は1.7から1.3へ低下した。実質成長率(5年平均値)は4.8%から2.1%へ下がり、国と自治体が抱える長期債務残高の国内総生産(GDP)比は66%から150%に膨れた。
世界での地位低下も進んだ。93年に経済協力開発機構(OECD)で2位だった1人あたりGDPは18位へ後退し、世界競争力ランキングも22位に下がった。そこに資源高・食糧高という新たな制約がのしかかっている。まさに経済を若返らせなければ、日本はじり貧の道を歩まざるを得なくなる状況だ・・