カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

高齢者医療費の負担の仕組み方

西濃運輸(株)の健康保険組合が解散したことが、大きく取り上げられています。22日の読売新聞石崎浩記者、日経新聞大林尚編集委員の解説がわかりやすいので、それを基に説明します。
健康保険組合は、各企業がつくり、従業員と家族の医療費を支えます。このほかに、中小企業の従業員と家族を対象とした社会保険庁が運営する「政府管掌保険」、公務員を対象とした「共済」、そのほかの人(自営業や勤めていない人)の「国民健康保険」(市町村が運営)があります。
ここで問題は、高齢者です。高齢者は医療費がかさみます。しかし、ほとんどの高齢者は働いていませんから、国民健康保険になります。企業の健康保険組合や公務員共済は現役世代ですから、必ず国民健康保険が苦しくなります。そこで、高齢者の医療費を、健康保険組合などから支援する制度があります。
それを、2008年度から、さらに変えたです。その一つが、春に問題になった「後期高齢者(75歳以上)医療制度」です。もう一つが、前期高齢者(65~75歳)なのです。健康保険組合などからの支援額(拠出金)を増やしたため、各組合は加入者からの保険料を引き上げたのです。
これまで政管健保より低い保険料だと、健康保険組合は、企業と従業員の負担は少なくてすむので、メリットがありました。しかし、拠出金が増えて政管健保より高くなると、企業が独自に健康保険を運営するメリットはなくなります。政管健保に乗り換えるのです。
「・・健保制度は、民間が自主性に基づいて運営するのが原則。従業員のために独自の病気予防事業をしたり、腕が立つ医師の多い病院と個別に受診契約を結んだりするなど、企業経営に近い感覚が求められる。その自主性を活かす条件は、従業員と経営者が折半する保険料負担と、その見返りとしての医療給付との関係が対になっていることだ。
にもかかわらず、高齢者医療費として召し上げられる拠出金負担には、健保組合の経営努力がおよびにくい問題がある・・」(大林編集委員)。
仕組み、問題点、改革方向について、詳しくは記事をお読みください。

グローバル化時代の経済対策

21日の朝日新聞「私の視点・景気拡大の終わり」から。
水野和夫さん
・・グローバル化のもとでは、企業は簡単に国境を越える。つまり国境を持った国民国家の力が衰える一方、米国やロシア、中国などの新しい「帝国」とグローバル企業が台頭した。グローバル企業をつかさどる資本は、16世紀の絶対君主をしのぐような権力を手に入れ、圧倒的に優位になった時代といえる。国民国家として、資本と国家・国民が一体化していたのが近代だったが、資本と国家の結婚・共存関係が終わったのだ。
・・資本の力が国民の力を上回ったので、世界で戦える資本家はこれからも事業の拡大を期待できる。一方、国家は規制などによって働く人を守ることができなくなった。
・・国境を前提にした「近代」の仕組みによる総合経済対策はナンセンスだ・・
飯田泰之准教授
2002年2月から続いた景気拡大が終わろうとしている。戦後最長の拡大局面だったが、回復を実感したという人は少ないだろう。それもそのはずで、景気拡大と好況・好景気は本来別物だのだ。
経済状態が「方向として」改善しているのが景気拡大である。一方、好況は、実際の経済活動がその国の潜在的な経済水準、つまりその経済の本来の実力を超えた状態を指す。
目安としては、景気の拡大により生産力が追いつかなくなる。またはその予兆として賃金の上昇が始まると、好況といえる。逆に、どれだけ長期の景気拡大が続いても、経済の本来の実力を発揮できていないなら、好況ではない・・

増税時期を失した日本

16日の読売新聞「失速、最長景気」インタビュー、石弘光元政府税制調査会長の発言から。
・・景気拡大が続いているうちに、消費税を引き上げて財政再建の糸口を作るべきだった。日本経済は(雇用、設備、債務という)3つの過剰を解消し、増税に耐えうるだけの力がついていました。
小泉政権で消費税率引き上げを封印したのは、政治的には正解だったかもしれませんが、マクロ経済的には非常にまずかった。財政の構造改革をしなかった・・

人口減少がもたらす可能性

11日の日経新聞経済教室は、西水美恵子さんの「逆境バネに人口減克服」でした。日本の人口減少に関し、将来を悲観的にみる論調が多いが、そうした負の影響を克服した未来を想像し、その実現に何をすべきか考えるべきだという主張です。
第1は、労働者不足に直面した生産者が、一人ひとりの働きぶりを高める努力をし、生産性が高まる可能性です。
第2は、高齢者が活用される可能性、第3は、女性の活躍が広がる可能性です。