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経済

ネクタイの消費量半減

5月2日の毎日新聞に、「消える?ネクタイ」という記事が載っていました。
業界の調べでは、ネクタイの生産・輸入量は、1991年の5,600万本に対し、2011年は2,900万本です。半減です。うち国内生産は570万本で、1988年の4,700万本から8分の1に減っています。
私にとって、驚きの事実は次の通り。
・20年間で、消費量が半減したこと。成人男性の数は、そんなに減っていません。
・減った理由として、クールビズが挙げられています。でも、それだけでしょうか。もう一つの大きな理由は、贈答品が減ったことではないでしょうか。ネクタイは、自分で買うより、奥さんや恋人からもらうもの、取引先や飲み屋のママからもらうものが多かったのだと思います。
輸入先は、イタリアとフランスだと思っていたのですが。2011年では、中国が2,140万本、イタリアが165万本、フランスが108万本、韓国が137万本です。
・輸入に比べ、輸出はどうなっているのでしょうか。

先進諸国若者の失業

日経新聞4月14日「初歩からの世界経済」、3月23日と24日の「働けない若者の危機」から。
OECD調べでは、2013年2月の各国の失業率と若者(24歳以下)の失業率は、次の通りです。スペイン26%(若者56%)、イタリア12%(38%)、フランス11%(26%)、ドイツ5.4%(7.7%)、アメリカ7.7%(16%)。日本は4.3%(6.6%)です。スペインでは全年齢で4人に1人、若者は2人に1人が失業者です。フランスでも、若者は4人に1人が失業です。
他方で、スペインでは2012年の1月から9月までの間に、5万5千人が外国に職を求めて出ています。ドイツに移り住んだ外国人は、2012年1月から6月までの間に50万人います。
職もなく教育も受けていないニートの割合が、ドイツ9.5%、フランス12%、アメリカ14.8%です。
これでは若者は希望が持てず、社会は不安定になります。

人材は作るもの。買えばいいものではない

古くなって恐縮です(いつものことですが)。3月24日の読売新聞特集「NIPPON蘇れ」から。
パート、派遣、契約社員など非正社員が雇用者に占める割合が、1990年の20%から、2012年には35%に増加したこと。非正社員の年収が、正社員に対して3割にとどまるほか、教育訓練を受ける機会が乏しく、結婚もできないこと。非正社員から正社員に転職した割合は27%にとどまることを指摘しています。
清家篤慶應義塾長の発言から。
・・国際競争の激化や少子高齢化で労働力が不足する中、日本が活力を向上させるには、一にも二にも、付加価値の高い商品やサービスを生み出せる人材を育てることが欠かせない。
だが、現状では課題も多い。若者の間では、新卒での就職に失敗し、身分が不安定で十分な職業能力を身につけにくい非正社員として働く人も増えている・・
経済成長戦略の観点から、正社員雇用規制を緩和して労働市場の流動化を進めようという議論が、最近強まりつつある。産業構造を転換することに加え、安定した正社員と不安定な非正社員、といった二極化している現状の打開策につながるとの期待感もあるのだろう。
確かに、流動化が進めば、既に能力を身につけている人にとっては、より能力を活かせる職場に転職できるプラスの面もある。だが、能力は安定した雇用のもとで蓄積される。若者などまだ能力を身につけていない人には、マイナスになることを忘れてはいけない・・
流動化の議論の底流には、人材は「作る」のではなく、「買えばいい」という考え方があるのかもしれない・・
人材は買えばいいとの風潮が蔓延すれば、企業は自社で育てるのは損と考え、付加価値の高いモノやサービスの生産に貢献できる人材を育てる環境が失われてしまう。人の育成こそが、活力向上のカギを握ることを忘れてはならない・・

消費の変化、モノから人間関係へ

読売新聞3月21日朝刊第1面「Nippon 蘇れ、活力2」は「モノ欲しがらぬ若者」でした・
・・・例えばクルマだ。かつてマイカー購入はカローラなど大衆車に始まり、経済力がつくにつれて、高級車に買い換えていった。「いつかはクラウン」というCMは、モノから豊かさを実感できた時代の象徴でもある・・
(10年ほど前に、私が講演の際に使っていたエピソードがこれでした)。
・・総務省の全国消費実態調査では、30歳未満の単身会社社員男性の自動車普及率が、1999年の63.1%から2009年には49.6%に減った。
・・電通総研が今月5日に発表した調査によると、15~29歳の消費の特徴は「メリハリ化」と「総”交際費”化」。無料や安価なモノやサービスを楽しむ一方で、気に入ったものへは高額な出費をいとわない。仲間と交流を深め、盛り上がるためにもお金をかける・・・
(「モノから関係へ」も、私が『新地方自治入門』で指摘したことでした)。
ここでは、若者が、従来の常識にとらわれていないことがわかります。製造業や小売業の思惑通りには、行きません。それは、良いことだと思います。売り手に振り回されず、自分で考えて金を使うのですから。使いたいだけの金がないというのも、事実です。もっとも、次のような分析もあります。
記事の続き(p12)、久我尚子ニッセイ基礎研究所研究員の発言から。
・・総務省の2009年の全国消費実態調査で、30歳未満の勤労単身世帯の1か月の可処分所得を見ると、男女とも21万円余り。1999年より男性は約1万円減ったが、女性は2万円以上増えている。
非正規雇用者の所得はこれより低いが、余裕がないわけではない。未婚・晩婚化が進んで自分のために使えるお金が増えている上、家賃や食費のかからない親元で生活する人も多いからだ。お金がないのではなく、若者の価値観の変化が消費に大きく影響している。
自由に使えるお金が減ったのは、むしろ40~50代。厚生労働省の賃金構造基本統計調査から50代後半男性で大卒正規雇用者の年収を推計すると、2001年は1,040万円だが、2011年は791万円。年収も40代後半をピークに下がっていく・・

経済ルール、守るから作るへ

3月16日の日経新聞社説「TPP交渉 「守る」から「築く」へ」から。
・・人口が減る日本が将来にわたり経済成長を続けるためには、世界に打って出なければならない。米国と連携を深め、世界の成長の中心となった東アジアと結合を強めてこそ、日本は本来の力を発揮できるようになる・・
日本経済の発展を真剣に考えるなら、外に向かい目を開かなければならない。工業製品だけでなく農産物を含む日本の産品と、日本の人材、投資資金が自由に動ける舞台をつくることこそが国益である。発想を「守る」から「築く」に切り替えるときではないか・・
交渉の焦点は、モノの関税撤廃だけではない。知的財産権、技術の基準・認証、投資、国有企業の改革、サービス貿易、競争政策、環境、労働など、さまざまな分野がある。いずれも、現在の通商秩序の土台である世界貿易機関(WTO)の協定に、十分に盛り込まれていない領域だ・・
日本は駆け足で追いつき、これらのルール策定の作業に一日も早く参画しなければならない。日本にとって関税撤廃による輸出拡大の経済効果は大きいが、新領域のルールづくりには、それ以上の大局的な意味があるからだ・・

日経新聞「私の履歴書」、カーラ・ヒルズ元アメリカ通商代表、3月16日「車の輸出制限」から。日本が、経済摩擦を回避するために、自動車の輸出自主規制をしたことについて。
・・これは経済的な観点に立てば、大きな誤りだった。輸出を制限すれば競争も制限され、それだけ価格は上昇してしまうからである。
実際、日本による対米乗用車輸出自主規制は、米国の自動車産業を怠惰にしただけだった。ビッグスリーの経営者たちは競争力に何の心配もしないまま、市場によって正当化されない高禄をはみ、年金の増額も許してしまった。そうした意思決定は後に、米国の自動車産業が壊滅的状態に陥るという形で跳ね返ってきたことは、歴史が証明している・・