高齢者が増え、年金の給付額が増えています。一般論としてはわかっていたのですが、どれくらいになっているのか。改めて、教えてもらいました。
まず、受給者数は約4,000万人で、これは全人口の約3分の1に当たります。高齢者世帯の収入に占める割合は、約7割です。また、年金だけで生活している高齢世帯は、約6割です。
給付額は、平成26年度予算額で、54兆円です。GDPが約500兆円ですから、その1割です。さらに、県別にその占める割合を見ると、驚きます。島根県は、高齢化率が30%、年金受給額は県民所得の約20%になります。高知県も高齢化率は30%、年金は県民所得比で19%です。農業所得より、はるかに大きいです。これを、市町村別に見ると、もっと年金に依存している村があるでしょうね。村民の最大の収入源になっていると思われます。
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社会革命、コンビニ
日経新聞連載「シリーズ検証、流通革命50年の興亡」4月27日は、「コンビニ市場、10兆円目前」でした。コンビニは、中小商店が多い日本での定着は難しいと、いわれていたのだそうです。それが社会に溶け込み、日本中どこに行っても、見慣れた看板を見つけることができます。私たちの暮らしに、なくてはならないものになりました。
食べ物や飲み物、それも新鮮でいろんな種類があります。小売り以外のサービスも、すごいです。コピーにファックス、公共料金の支払い、チケットの予約、宅急便の発送と受け取り。各種サービスの「端末」であり、社会インフラです。店員の多くはアルバイトでしょうが、仕事を覚えるのは大変だと思います。
1999年、ダイエーが経営不振のため、子会社のローソンを売り出しました。複数の総合商社が経営権獲得に動き、三菱商事が勝ちました。当時、三菱商事で買収後の事業計画を策定した、新浪剛史、後のローソン社長は、「事業計画書の青写真はバラ色だった。魅力ある約7千店のネットワークを金融、IT(情報技術)の拠点に使う。あの時のコンビニ株はIT銘柄だった」と語っておられます。しかし、新浪社長がローソンで最初に手がけたのは、おにぎりをおいしくすることだったそうです。「コンビニの原点は、毎日お客さんが手に取ってくれる食べ物。ITのような仕掛けではなかった」。
人間の予想は、研究者でもその道のプロでも、当たらないことも多いようです。後から見ると、当たった場合も外れた場合も、それなりの理由があります。
記事には、次のような記述があります。
・・非効率な中小商店を生産性の高いコンビニに転換させたセブン・イレブンに対して、経営学者ピーター・ドラッカーは「社会革命」と称した・・
わずか100平方メートルほどの売り場、一つひとつは100円とか200円ほどの商品。それを、商社が経営する。結びつかないですよね。40年前に伊藤忠商事も、商社ビジネスの間尺に合わないと判断したのだそうです。
しかし、個人商店では難しい、大量・他品種の仕入れ、POSによる売り上げと在庫管理、途切れない商品の補給、進化し続ける仕組みを、商社の力で成し遂げたのでしょうね。各店舗、各商品、各サービスの後ろにある「支える仕組み」があって、初めてできることです。個店では、できないのです。ある地方に出店をお願いしたら、「その地域までシステムが伸びていない(中継拠点がない)」ことを理由に、断られたという話を聞きました。
鷲巣力著『公共空間としてのコンビニ―進化するシステム24時間365日』 (2007年、朝日選書)は、少し古くなりましたが、勉強になりました。
新4大工業地帯
「新4大工業地帯」という記事を、教えてもらいました(日経新聞5月1日、国内生産再生で脚光 「新4大工業地帯」はココ )。どこだと思いますか。私は、全く外れました。詳しくは、本文を読んでください。
4大工業地帯だけでなく、新しい工業集積地、発展可能性の地ができつつあります。これまで、政府は何度も、自治体もそれぞれに、企業誘致や工業団地を作ろうと試みました。古くは新産・工特地域、後にはテクノポリス、近年では特区です。かつては、国土庁という役所があり、地方振興局という部署もありました。経済産業省には、地域経済産業グループがあります。
政府の思ったようにはなりませんが、このようにして、できてくるものなのですね。
経済成長を支えた工業高校卒業生
加藤忠一さんから、御著書『高度経済成長を支えた昭和30年代の工業高校卒業生』(2014年、ブイツーソリューション)をいただきました。著者の加藤さんは、昭和35年に福井工業高校を卒業されました。大学を経て、富士製鉄(後の新日鉄。現在の新日鉄住金)に勤められ、鉄鋼研究所長などを歴任された技術者です。
ある日、加藤さんから、「岡本のホームページの記述を引用したいので、許可を得たい」という趣旨の電子メールが届きました。引用か所は、「戦後日本の経済成長、GDPの軌跡と諸外国比較」の図です。本の第1章1の書き出しで、高度経済成長を説明する際に、私のこの図を使ってくださったのです。光栄なことなので、喜んで使っていただきました。
全く存じ上げない方です。「ところで、どのようにして、私のホームページの記述を見つけられましたか?」とうかがうと、「インターネットで探した」とのことでした。
ご本は大部なもので、かつユニークです。第1部では、高度経済成長期に、工業高校教育が果たした役割、そして卒業生がどこに就職しどのような貢献をしたかの分析です。第2部は、78人の方が寄稿された「自分史」です。第3部は、大卒の人から見た工業高校卒業生の評価です。単なる回顧録ではありません。
昭和30年代の工業高校卒業生は、総数120万人と推計されるそうです。この方々の活躍なくしては、戦後の工業化、そして高度経済成長はなかったのでしょう。産業史、社会史論です。まさにその時代を生きた方々でなくては、書くことのできなかった研究書でしょう。
全国の工業高校や県立図書館寄贈されたとのことです。600ページを超える大部の本なのに、2,160円で買うことができます。ご関心ある方は、どうぞお買い求めください。
統計数字の錯覚、都道府県別有効求人倍率
日経新聞4月21日の「地方の雇用、本当は元気。求人倍率、働く場所で集計すると都市部は減少」が、興味深かったです。都道府県ごとの有効求人倍率ですが、その算定方法を探ると、公表数値と違う結果が出てくるのです。
・・厚生労働省が公表するのは、本社所在地ごとの有効求人倍率。東京都に本社があるスーパーが青森県内の店の求人を出すと、原則として東京都の求人として計算するため都市部が上昇しやすい。これを就業地別に青森県の求人として数え直すと、地域雇用の実態がみえやすくなる。
2013年の実績を本社地別でみると東京都が1.33倍で首位。就業地別で計算すると1.00倍と大きく下がり、15位にまで転落する・・
そうだったのですか。これでは、都道府県別の数字をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。
松尾洋平記者、良い記事を書いていますねえ。彼は、2010年10月4日にもこのホームページに登場しています。