カテゴリーアーカイブ:経済

ピンチをチャンスに、アイリスオーヤマ

2020年5月11日   岡本全勝

NHKウエッブニュースが、「“コロナ後”の消費者ニーズは アイリスオーヤマ 大山晃弘社長」を載せています。
・・・新型コロナウイルスで大きな危機に直面する日本経済。しかしその危機をチャンスととらえ、新たなビジネスを模索する動きもある。生活用品メーカー「アイリスオーヤマ」。大山晃弘社長は深刻な品不足が続くマスクの国内生産をいち早く決めたほか、“アフターコロナ”を見据えた商品開発を次々と進めようとしている。未曾有のコロナ危機をどう捉え、その先にどんな世界を見据えるのか、奇抜な発想で成長を続ける会社のトップに話を聞く・・・

大山社長
「いまコロナの影響で、売り上げは非常に伸びています。特にマスクを中心とした衛生用品が伸びています。また巣ごもり消費によって、保存のきく食料品、テレワークに使う液晶モニターやシュレッダー、それにパソコン用デスクといったものが非常に伸びています」

新型コロナウイルスの感染拡大で大きく注目されたニュースがある。品不足が続くマスクを国内の工場で生産するという発表だ。
もともと中国の自社工場で生産していたが、6月から宮城県の工場でも生産を始め、7月には月1億5000万枚を供給する。価格が高騰する不織布などの原材料から国内で一貫生産する計画だ。
思い切った決断の背景には、9年前の東日本大震災の経験がある。
大山社長
「東日本大震災のときに企業として大きなダメージを受けました。地域社会も影響を受け、消費構造が大きく変わりました。そのときにわれわれは一気にLEDや食品事業に進出し、個人消費の変動を捉える経営に踏み切りました。その経験が今回生きたと思っています。中国・武漢でコロナウイルスが流行したときに、いち早く中国でマスクの増産を決定し、春節という中国のお休みを全部つぶして一気にマスクの増産を図りました」
大山社長は、中国の工場から寄せられる情報をもとに、国内でもマスクの需要が高まると予測し、増産に必要な行動を直ちに起こした。未曾有の危機では経営判断のスピードが何よりも重要になると強調する。

アイリスオーヤマは中国に9つの自社工場を持ち、家電製品や家具など幅広い商品を生産している。人件費が安いだけでなく、部品の供給などが受けやすいからだ。
しかし大山社長は、その中国にも変化が現れ始めていると指摘。世界のもの作りは徐々に国内回帰が進むとみている。
大山社長
「中国の意味合いは変わってくると思います。もちろん、中国が世界の工場であることは変わらないと思いますが、今回のマスクのように自動化しやすく、生産性が高い商品については、それぞれの国に生産拠点が戻っていくのではないでしょうか。中国は毎年のように人件費などのコストが上がっています。今回のような政策の大きな変更があれば、輸出の規制が大きく変わってしまうリスクもあります。生産設備の効率が非常に上がっているので、中国で製造する意味が薄くなっています。日本やアメリカ、ヨーロッパなどの一大消費地に向けて工場が一部戻っていくと思います」

振り返る「失われた20年」

2020年4月18日   岡本全勝

朝日新聞「変転経済」取材班編「失われた〈20年〉」(2009年、岩波書店)を読みました。
小峰隆夫著『平成の経済』に続いてです。改めて「失われた20年」を勉強しようと有識者に聞いたら、この本を推薦してくれました。この本も、優れものです。

経済復活のために取られた、いくつかの政策や企業の判断が取り上げられ、その経緯と日本社会に及ぼした影響が具体的に描かれています。
朝日新聞の記事を、加筆編集したものです。そのような本は、しばしば記事を集めただけで、筋が通っていないことが多いのですが。この本は、かなり編集しているようです。わかりやすいです。

2009年と10年前のものですが、失われた20年の雰囲気がよく伝わってきます。当時を知っている人は、思い出すために。当時を知らない人は、勉強のために。お勧めします。

小峰隆夫著『平成の経済』

2020年4月14日   岡本全勝

小峰隆夫著『平成の経済』(2019年、東洋経済新報社)を読みました。連載「公共を創る」の執筆に当たって、平成時代の経済をもう一度確認するためにです。読まなければと思いつつ、先延ばししていました。専門家に「どの本がよいですか」と聞いたら、何人かの人が、この本を推薦してくれました。

確かに、よくできています。平成30年間の経済の動きを、いくつかの時期に区切って、その特徴を切り出します。そしてなにより、当時の関係者(政治、行政、産業界、エコノミスト、マスコミ)の意識、取られた政策、その評価が書かれています。これは、官庁エコノミストであった小峰先生でなければ、書くことができなかったでしょう。

平成時代の経済は、バブルで幕を開け、その崩壊、不良債権処理、長引くデフレ、金融危機(金融機関の倒産)、回復、そして世界金融危機(リーマンショック)と、大きな波に翻弄された時代でした。政府も、手をこまねいていたわけではありません。次々と大型の経済対策や、不良債権処理対策、金融危機対策を打ちました。そこには、新しい政治過程も生まれました(与野党協議、財金分離、経済財政諮問会議などなど)。
政策の評価は、なぜそのようなものが採用されたか、なぜその時期になったか、なぜある政策は実行できず、効果が疑問視された政策が実行されたのか。極めて、客観的な評価になっています。

終章は「平成経済から何を学ぶか」と題して、平成の経済政策の失敗から学ぶべき教訓が整理されています。
1 認知が遅れること(バブル、デフレの例)
2 経済学的にあいまいな政策を避けること
3 経済政策を遂行するには、政策立案の分析力とともに実行していく政治力が必要なこと
他に7つの項目が挙げられています。
また、第15章では「これからの経済的課題」として、これまで十分取り組まれなかった課題なども議論されています。

昭和30年(1955年)生まれの私にとって、平成時代は34歳から64歳で、官僚として活動した時代に当たります。ついこの間のことと思えます。しかし、若い人たちにとっては、子供のころのことが多いでしょう。平成元年に20歳だった人は、現在51歳ですから。体験していないこと、学校で教えてもらっていないことが多いと思います。この本は、お勧めです。

近年の経済危機の歴史

2020年3月28日   岡本全勝

3月24日の日経新聞経済教室は、伊藤隆敏・コロンビア大学教授の「コロナ対応で再度強化必要 異次元緩和、8年目へ」でした。
詳しくは原文を読んでいただくとして、そこに、「経済ショック時の株式相場下落率と回復期間」の表がついています。分かりやすいです。
発生年、アメリカでの下落率とその期間、回復に要した期間が載っています。そこを抜粋します。

ブラックマンデー(1987年)、33.5%、3か月。1年11か月
ITバブル崩壊(2000~2002年)、49.1%、2年6か月。7年2か月
世界金融危機(2007~2009年)、56.8%、1年5か月。5年6か月
コロナ・ショック(2020年)、31.9%、1か月。?

イオンとセブンイレブン、勝利の後に

2020年2月20日   岡本全勝

2月13日の日経新聞オピニオン欄、中村直文・編集委員の「流通0強の時代に セブン・イオン、拡大の大義薄れる」から。イオンがスーパー業界で、セブンイレブンがコンビニで、拡大路線で勝利したことを紹介した後で。

・・・流通2強の競合時代を振り返れば、安さだったり、便利さだったり、消費者が望む"大義"が成長の原動力となってきた。2強は平成の三十数年の間、ショッピングセンター(SC)とフランチャイズ(FC)に金融を絡めたモデルでのしあがった。物量の規模で他社を圧倒、生活インフラとしての価値を生み出した。
ところが、追いすがる敵のいない頂上で、予想もしなかった逆風にさらされている。新しいデジタル消費の現実、アマゾンなど外資の攻勢に対して、足元を固めるのに精いっぱい。勢いが感じられない。業界内、消費者に対して大義を示せないのであれば、それは強者とは呼べない。その意味で、流通は「0強」の時代に突入した。

恐らくこの先、イオンとセブンを中心とした再編劇は見られなくなる。撤退した小売りや店舗の買い手はつかず、各地に荒涼とした風景が広がりそうだ。
1月に突如営業を終了した山形市の百貨店、大沼はその最たる例といえる。00年代、地方中心都市の百貨店なら必ず買い手がついた。三越伊勢丹ホールディングスが系列化を進めた札幌の丸井今井、福岡の岩田屋などがそうだ。これからは単に空き店舗になるだけ。山形県に続き、百貨店の空白県が生まれるだろう・・・

・・・日本経済の本質は海外のコンセプトやアイデアを企業がうまく取り込み、日本人の感覚に合う形にかみ砕き、市場を広げたところにある。流通だけでなく、メーカーも同じだ。島国であることも奏功し、外資からの攻勢を免れた。
だが、デジタル時代で風景が変わった。実物に頼らない経済のソフト化はアイデアなど知的資産がものを言うし、リアルタイムの勝負になる。産業界はこのことを理解しながら手を打てていない。かつての強者が苦しむ姿は流通だけではない。電機、情報機器など様々な分野で、業界をけん引してきた巨人企業が方向感を見失っている。ネット産業も強者は海外。国内に世界企業はいない。

もっとも消費者は楽しんでいる。アマゾンやフェイスブック、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオを。だがこれでは国力があがるとはいえない。インバウンドであれ、アウトバウンドであれ、世界で売れるグローバルコンテンツがない限り、どんどん国民の消費の棚は海外で埋め尽くされる。令和の時代、自立性なき未来を楽しんでばかりもいられない・・・