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経済

クレジットカードが使えない

サイゼリヤ」ってご存じですか。イタリア料理のファミリーレストランです。全国に千店以上があるようです。

先日、利用しました。お手軽で、高校生も使っているようでした。
問題は、食事を終えて支払いをするときです。なんと、クレジットカードも電子マネーも使えません。
いまどき、全国展開しているこれだけのレストランで、現金が必要とは。驚きました。

最近は、スイカがあれば、ほとんどの支払いができます。よかった、その日は現金を持っていて。若い人には、笑われますかね。
現金を持っていなかったら、どうするのでしょう。皿洗いをして、労働で返すのかな。

消費増税は経済成長停滞とは別

10月20日の読売新聞1面[地球を読む]、吉川洋・立正大学長の「消費税上げ 経済停滞の犯人にあらず」から。

・・・消費税と景気の関係については、問題をきちんと整理する必要がある。
まず、税率が上がる前に買っておこうという「駆け込み需要」と、その後の落ち込みである「反動減」がある。今回は駆け込み需要が比較的小さかったといわれるが、9月末に駅で定期券を買う人の行列ができているのを見た人もいるだろう。しかし、消費のタイミングを増税前に移動させるだけだから、1年を通してみれば総額は変わらず、大きな問題ではない。

消費税率引き上げの影響は、駆け込み需要と反動減にとどまらない。これはまさに増税である以上、家計が自由に使える所得は増税分だけ減少し、結果として消費が減る。
ただし、これは消費の「水準」を落とすだけで、消費の「成長」とは関係ない。もし増税後、落ちた消費が長らく回復しないようなことがあるとしたら、それは消費税に原因があるのではなく、他に理由があると考えなければならない。
消費税(付加価値税)によって景気が長期間低迷し、成長が阻害されるというなら、税率がおおむね20%ほどである欧州連合(EU)諸国の経済は、はるか昔に壊滅しているはずである。しかし、EU諸国は、多くの悩みを抱えながらも、世界を代表する「先進国」であり続けている。

1997年4月、橋本内閣により消費税率は3%から5%に引き上げられた。その後、日本経済は99年にかけて深刻な不況に陥った。主因は大型の金融機関が次々に破綻した金融危機だったが、今でもその時の記憶が一部の人々の間では「消費税のトラウマ」として残っている。2014年4月に安倍政権の下で税率が5%から8%に上がった後も、消費が長く低迷したことから、またもや消費税が犯人とされ、それが今回の過剰ともいえる「対策」を生み出した。だが、消費の伸び悩みは、主に賃金が十分に上がらないことや社会保障の将来不安によって生み出されたものだ。

実際、長期的にみると、消費税率が上がっても実質ベースの消費が増えたことが分かる。税率が3%だった96年度の258兆円から、8%だった昨年度は300兆円と、16%増加した。この間に国内総生産(GDP)は2割近く増えている。長期的に国全体の消費を増大させるのは、経済成長なのである・・・

消費税アレルギー

10月9日の朝日新聞、原真人編集委員の「価格を科学する 消費税コミコミの新発想」から。
・・・企業も合理的な行動をとった。マクドナルドや牛丼のすき家、松屋は店内飲食と持ち帰りの税込み価格をそろえた。レジで会計のたびに税率を振りわけるのでは手間がかかりすぎる。だから本体価格を変えることで、税込み価格を一本化した。
ここからくみ取れること。それは消費税も「価格」の一要素にすぎないということだ。日本ではあまりにも消費税アレルギーが強すぎて、増税の影響を過大に見る傾向がある。ここは発想の転換が必要だろう・・・

・・・たとえば消費税廃止にともなう代替財源の一つとして、山本氏は法人税の大増税をあげた。だが実は消費税だって事業者がまとめて税務署に納める一種の法人税だ。仮に消費税廃止で生じる財源の穴をすべて法人税増税で埋めたとしても、理屈の上では全事業者が納める税総額は変わらない。
事業者が払うあらゆる税は最終的に何らかの形で消費者に転嫁される。消費者だけが得をする、ということにはならない。
いま、消費の現場では消費税率アップさえ多くの価格変動要因の一つにすぎなくしてしまう画期的な価格革命が起きている。
「ダイナミックプライシング」。人工知能を活用し、需要にあわせてアルゴリズムで弾力的に価格を変えていく手法だ・・・

・・・興味深いのは、ダイナミックプライシングが導入されているチケット販売は、消費増税に影響されにくいことだ。いま最適な最終価格をまず決めるから、販売したあとに消費税額を逆算する。だから消費税率の変更をあまり意識しなくてすむらしい。
いわば「消費税後決め方式」。これが広く普及すれば「消費増税は景気に影響する」などと決めつけられなくなるだろう。消費者物価指数ひとつでインフレだデフレだと一喜一憂しなくなるかもしれない・・・

全文をお読みください。

松元崇著『日本経済 低成長からの脱却』

松元崇著『日本経済 低成長からの脱却 縮み続けた平成を超えて』(2019年、NTT出版)が、勉強になりました。お勧めです。詳しくは本書を読んでいただくとして、私なりの理解を書いておきます。

バブル崩壊後、平成時代の30年間に、日本の産業は地位を落とし、経済は停滞しました。驚異的な経済成長を続けた日本は、いまや先進国の中で低い成長率を続けています。著者は、経済の「景気」と「成長」は別物であり、日本経済の停滞は景気問題ではなく、成長問題だと指摘します。三つの過剰を解消しても、金利を下げても、日本の生産性は向上していません。そして、日本の産業と経済の低下の原因を、2つ挙げます。

1つは、世界の生産構造の変化です。
グローバル化とIT化によって、世界中どこでも(ある程度の水準の労働者と社会インフラがあれば。岡本の補足です)、何でも生産できるようになりました。日本企業も、日本国内だけでなく、海外でも投資をするようになりました。というか、日本国内に投資せず、海外に投資しているのです。日本企業が日本に投資しないことが、経済の停滞の原因だと指摘します。
日本は、企業に選ばれない国になりました。それは、次に挙げる日本の労働慣行が、新しい投資に足かせになるからです。

もう1つは、日本の雇用慣行です。
日本の強みだった終身雇用制度が、生産性向上の足を引っ張っているのです。日本の政策は、解雇をさせない、企業もなるべく倒産させないと言うものです。すると、企業は生産性の低い事業を続け、新しい分野に投資しません。生産性が低いままでは、世界で戦えません。企業が元気になり、労働者がより高い賃金を得るためには、企業も労働者も新しい分野への転換が必要です。ところが、失業させないことと終身雇用制度が、それをさせません。

対比として、スウェーデンが上げられています。かつて高福祉高負担の代表だった国です。公的支出は7割を超えていました。その後下がり、現在は5割です。ドイツやフランスより低くなっています。そして経済成長を続けています。
日本との違いは、労働者の保護のしかたです。スウェーデンでは、不振な企業は倒産に任せ、失業した労働者を再訓練して再就職させます。日本では、生産性の低い(世界で戦えない)企業が生き残り、スウェーデンでは企業の新陳代謝が進みます。

日本社会の意識と慣行が、かつては日本を世界一に押し上げ、現在はそれによって停滞している。この指摘に、我が意を得たりです。現在執筆している連載「公共を創る」で、世界最高の豊かで安心な社会をつくった日本人の意識と社会慣行が、現在の社会の不安に答えていないことを書いています。同じ構図が、経済に出ているのです。平成時代は、その曲がり角でした。そして、国民の意識も行政も、その転換に遅れています。

著者は、大蔵省出身、内閣府で経済財政担当統括官(私の上司でした)や事務次官を務めました。その際に考えられたことが、本書の基礎になっているようです。

参考
日経新聞5月25日、小関広洋・帝京平成大学教授の書評
財務省広報誌「ファイナンス」2019年8月号、荒巻健二さんの書評

東京の大企業の病理

9月3日の日経新聞オピニオン欄、梶原誠さんの「東京銘柄埋没は訴える 京都企業を超えろ」から。

・・・本社の所在地別に株価を点検すると、興味深い事実が浮かび上がる。「東京銘柄」の値動きが、「地方銘柄」に劣るのだ・・・
・・・人口も行政機能も東京に集中しているが、株価は逆だ。20年前との比較では、東日本大震災の被害を受けた東北と、北海道を除く全ての地域に東京は見劣りし、「首都埋没」が鮮明になる。
今年も米国など多くの国で株価が史上最高値を更新したが、日本株は停滞している。原因は時価総額の62%を占める東京銘柄、なかでも大企業にある。東京の大企業の象徴である経団連正副会長の出身企業の時価総額は、5年前から5%しか増えていない・・・

・・・まずは経営コンサルタントである経営共創基盤の代表取締役、村岡隆史氏。東京の大手企業にM&A(合併・買収)を提案した際、法務、財務、グループ会社の管理を担当する部署などから2人ずつも集まって話を聞いてくれた。だが、議論は前に進まない。
決定権を持つのはそれらの部署を統括する別の部署であり、その上にいる重役だからだ。「東京の企業はバブル期に間接部門が肥大化したままだ」という。
次に、昨年まで国際協力銀行の総裁だった近藤章氏。国際競争入札の内幕に接し、下馬評に反して入札で敗れる「経団連銘柄」を見てきた。「IT(情報技術)化ひとつ取っても遅れ、膨大な量の紙を社内で使っている。安い価格で入札できるはずがない」という。

2人が共に指摘するのが「東京の大企業には霞が関とのしがらみがある」という点だ。大きな決定の前に官僚に根回しをする担当者も置く必要があるし、政府への報告は今も紙が主流だ。役所と深く交流する分、官僚的な文化が伝染した面もある。
バブルが崩壊した1991年以降の時価総額の変化率を見ると、最も減らした企業は銀行、電力、建設の3業種に集中する。政府は護送船団方式で銀行を、地域独占体制で電力を、公共工事で建設業界を守ってきた。政府と密接なあまり稼ぐ力を高められなかった点で、東京銘柄の不振と重なる・・・