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経済

アルファベットの会社名

アルファベット単語」の続きです。アルファベット単語は、どの程度答えられましたか。
アルファベットは、会社の名前にも増えました。それも、名称と言うより、略称のような名前です。それぞれ知恵を絞って考えられたのでしょうが、一般の人にどこまで覚えてもらっているでしょうか。次の会社名を答えてください。

AGC
DIC

JA
JT
JF

JR(これは、意外と難問です。説明してみて下さい)
回答は次回に

外国人労働者の就労手続き代行会社

8月26日の日経新聞「挑戦者たち」は、ジョバティカルCEOのカロリ・ヒンドリクスさん「旅と働くは両立できる 国境越えて自由に」でした。
ジョバティカルは、外国人が企業で働く際の橋渡しをします。求人サイトではなく、移民局などへの手続きを代行するのです。ベルリンでの例では、労働許可を得るのに90日かかったのが、3~5日でできるそうです。初めての人にはわからないことばかりでしょうからね。
ヒンドリクスさんは、エストニア出身、1983年生まれで37歳です。20代後半はアメリカのシリコンバレーで、起業を学んでいました。

・・・そこはグーグル、アップル、ネットフリックスといった名だたるIT企業が本社を置く、世界のスタートアップの聖地。ある朝のこと、海辺をランニングしながら「こんなにも成長企業が集積しているのはなぜだろうか」と考えた。たどり着いたシンプルな答えがそのままジョバティカルの構想になる。「世界中から人材が集まっているからだ。企業と人材の国境を越えた結びつきが、きっと新しい時代を動かしていく」
外国を旅しながらIT職などで働きたい「デジタルノマド」と、国籍を問わず優秀な人材を獲得したい企業をつなぐ求人サイト「ジョバティカル」はブームを巻き起こした。米国、インド、ブラジル、ロシアなど世界の好奇心旺盛な若者らがエストニア、シンガポール、マレーシアなどに渡っていった。

ところが、ヒンドリクスはある疑問を抱えるようになる。「求人サイトよりも、雇用手続きの支援に集中すべきではないか」。企業が採用を決めても手続きが滞るケースが相次いでいたからだ。大使館や移民局に書類を提出し、国籍によっては審査で延々と待たされる。「働きたい人がいて、雇いたい企業があるのに」。ソ連崩壊前後のあの行列が脳裏をかすめた。
そして19年、求人サイトを畳み、雇用支援サービスに大きくかじを切った。エストニアはもちろん、独ベルリン移民局とも提携。ジョバティカルのシステムにパスポート情報などを登録するとシステム接続する移民局に電子申請され、わずか3~5日で労働許可が下りる。スペイン当局とも提携関係にあり、英、仏、フィンランドとも交渉中だ。将来的には日本を含むアジアにも広げる・・・

フランス、使命を果たす会社制度

8月9日の日経新聞、ファベール・仏ダノン会長兼CEOへのインタビュー「人・自然重視の資本主義に」から。
・・・フランスは2019年に新法を制定し、利益以外の目標を達成する責任を負う「使命を果たす会社」を新たな会社形態に取り入れた。上場企業で第1号となったのが仏食品大手ダノンだ。エマニュエル・ファベール会長兼最高経営責任者(CEO)に、目指す会社像やウィズコロナの時代の経営について聞いた・・・

―6月の株主総会で定款変更が認められ、「使命を果たす会社」になりました。どういった点が変わるのでしょうか。
「定款にESG(環境・社会・企業統治)に関する新たな4つの目標を盛り込んだ。①製品を介した健康の改善②地球資源の保護③将来を社員と形成すること④包摂的な成長
―だ。取締役のメンバーはこれらの目標に対して責任を負う。」
「外部の有識者や従業員の代表からなる10人の独立した『ミッション委員会』が取締役会を監督し、目標を達成できていなければ改善を迫る。株主とそれ以外の利害関係者に対する価値創造のバランスをどう取るか指針を示す役割を担う」

―長年、環境や社会面に配慮した経営をしています。なぜですか。
「ビジネスは現金で始まり、現金で終わる今の経済モデルは間違えている。近代経済は金融資本で語る癖があるが、人的資本や自然資本も経済活動に活用している。それらを資本と捉え、お返ししないといけないという概念が乏しい」
「実際、現金がなく事業が赤字でも、卓越したアイデアがあれば会社は資金を集められる。企業が破綻するのも資金が尽きるからではない。リーダーが生態系への自信をなくすからだ。ビジネスは人で始まり、人で終わる」

フランスでは、このような試みが始まっているのですね。大賛成です。フランスは近年、非営利団体についても力を入れ、非営利活動を包括する「社会的連帯経済に関する2014年7月31日法」をつくりました。連載「公共を創る」第28回注3で紹介しました。参考「廣田裕之の社会的連帯経済ウォッチ
また、こうなると、企業とNPOとの違いは、小さくなります。経済学の教科書は、どのようにこのような要素を取り入れるのでしょうか。

社会変革ができない日本

8月6日の日経新聞経済教室「アフターコロナを探る」、星岳雄・東京大学教授の「未来先取りの改革、今度こそ」から。
・・・7月17日、2020年の骨太方針が閣議決定された。「世界が今、大きな変化に直面する中で、我が国は新たな時代を見据え未来を先取りする社会変革に取り組まねばならない」と指摘し、「『新たな日常』を通じた『質』の高い経済社会の実現を目指す」としている。
「大きな変化に直面」しているのは確かであり、これを機会に「質の高い経済社会の実現を目指す」という姿勢は大きく評価したい。しかし、ここ30年ほどの日本経済を振り返ると、大きな変化が「未来を先取りする社会変革」につながったことはない・・・

・・・日本経済は多くの変化に見舞われてきた。バブルの崩壊に始まり、1990年代終盤には金融危機を経験した。その10年後には世界金融危機の打撃を受け、その後東日本大震災も含めて数々のショックがあった。
このような大きなショックに襲われるたびに、見られたのは「新たな日常」のための変革を促す政策ではなく、「いままでの日常」を守るための政策だった。その特徴は雇用を維持するための政策に特によく表れた。それは、新しい状況に適するように、産業の再編や労働の移動を促進する政策ではなく、変化に抵抗して現存の企業を守ることによってその雇用を維持しようという政策だった。

一番わかりやすい政策は雇用調整助成金の制度だろう。75年に遡るこの制度は、変化に対応するための雇用調整を助成するのではなく、抜本的な雇用調整を行わずに休業などにより切り抜けようとする企業のための給付金である。
このような雇用維持の政策から、変化に対応するための労働者の移動を助けるような政策への転換の必要性が訴えられたこともあった。だが実際にはリーマン・ショックなどの大きなショックが起きるたびに、企業保護を通した雇用維持の政策へと逆戻りしてしまった・・・

・・・雇用を維持するために現存の企業を守るという政策は、2つの大きな問題を引き起こす。
一つは、本来は退出して新しい企業にとって代わられるべき企業までも保護してしまうことだ。その結果、先進国の経済成長にとって重要な新陳代謝のプロセスが妨げられる・・・
企業を守ることを通して雇用を守る政策のもう一つの問題は、守られるのが雇用の一部に限られてしまうことである。これは、雇用維持の政策が、終身雇用制度に代表される日本の雇用システムと結びついた結果だ。大企業に働く、多くは男性の正社員の雇用は守られるものの、終身雇用の対象から外れている非正規労働者や中小企業の労働者は守られない。男性と女性で分けると、守られない労働者は女性の方が多い。
さらに、現存する一部の雇用が守られる一方で、まだ雇用されていない若年層の就職機会が失われてしまうという問題もある。玄田有史・東大教授の研究などにより、90年代の日本の経済停滞が始まった時に、守るべき中高年の構成比が高かった事業所ほど、新規採用を止めるところが多かったことが明らかにされた・・・

コロナ経済危機、雇用調整助成金と失業保険

7月22日の日経新聞経済教室、八代尚宏・昭和女子大学副学長の「休業手当より失業給付重視を あるべき雇用政策」から。

・・・今回のコロナ危機では、2008年のリーマン・ショック時と比べ、失業者の増加が著しく抑制されていることが特徴だ。政府の自粛要請に基づくサービス業主体の中小企業の休業増加に対応して、従業員への休業手当を補助し、解雇を防ぐ雇用調整助成金が大幅に拡充された要因が大きい。
具体的には対象事業主の拡大や受給要件の緩和と、中小企業への休業手当の助成率を100%近くまで引き上げたことなどだ。この結果、コロナ不況の影響が最初に表れた20年4月の失業率は前年同月比0.2ポイントの上昇にとどまった。
代わりに休業者数が前年比420万人も増えるという異常な状況が生じた(図参照)。仮に19年平均を上回る休業者の増加数がすべて失業者になっていれば、失業率(図の修正失業率)は9%台に達していた・・・

・・・もっとも、これは雇用調整助成金内での整合性にすぎず、肝心の職を失った労働者が直接申請する失業給付との間には大きな不均衡がある。現行の失業給付は、低賃金労働者を除けば、ほぼ賃金の5割で日額8330円(月額18万円)が上限と、休業者への直接給付の半分程度だ。
つまり類似の生活保障給付なのに、政府の自粛要請で休業中の従業員と、企業の倒産・廃業で失業した従業員との間には、2倍もの格差がある。もともと雇用調整助成金による休業手当と失業給付の上限額は同じだったが、失業率に影響しない休業者の増加を優先するという政治判断によって新たな不均衡が生じた。
また企業に代わり、その従業員が政府に休業手当を申請できることは、事業主にとって、休業手当を支払わなくてもよいというモラルハザード(倫理の欠如)を誘発する・・・

・・・今回、雇用調整助成金の対象範囲を拡大し、本来の雇用保険の被保険者でない短時間労働者の休業も対象にしたことは注目される。これは現行の雇用保険の枠組みを用いて、より多くの非正規労働者を救済し、その費用は国庫から補填するという現実的な工夫だ。
もっとも、外的な経済ショックに現行の雇用保険だけで対応するには限界がある。コロナ危機で所得水準が前年より大きく落ち込んだ個人を対象とした当初の30万円の給付金は、補完的な所得補償を目的としたものだった。だが全国民を対象とした一律10万円の定額給付金に置き換えられたため、膨大な財政コストと不毛な行政事務を招いた。
こうした財政の浪費を繰り返さないためにも、欧州の動向に倣い、フリーランスや学生アルバイトなどにも幅広く失業給付の対象を拡大することで、より普遍的な雇用維持策の機能拡大を図る必要がある。
コロナ危機は継続する可能性が高い。一方で、企業に依存しない働き方の多様化も広がっている。今後は「企業が雇用を守り、その企業を政府が守る」という労働者保護と企業保護が混在した雇用調整助成金の政策目的を、本来の労働者保護に徹底させるべきだ・・・

詳しくは原文をお読みください。