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経済

産業支援のジレンマ

11月14日の日経新聞に「中小支援拡充、もろ刃の剣 倒産少なく、革新には足かせ 専門人材の育成課題に」が載っていました。

・・・中小企業の経営が正念場を迎えている。倒産件数は50年ぶりの低水準で推移するが、長引く新型コロナウイルス禍で稼ぐ力が衰えている。政府が19日にまとめる経済対策にも3兆円程度の給付金が盛り込まれる見通し。手厚い支援策はイノベーション(革新)を阻害する副作用もあるだけに、コロナ後を見据えて中小支援のあり方も軌道修正する時期に来ている。
「給付金はないよりはありがたいが、経営を浮上させる効果は期待できない」。富士国際旅行社(横浜市)の太田正一社長は話す・・・

コロナの影響で大幅な減収となった事業者に、政府は給付金を配って支援をしています。これによって、企業の倒産、失業者の増加を抑制しています。企業倒産件数は、1972年以来最小です。
ところが、このような支援は、競争に生き残ることができない企業を存続させる、革新や新陳代謝を阻害する場合もあります。すると、平時に戻った際に、これらの企業は生き残ることができません。難しいところです。

追加就労希望就業者

11月11日の日経新聞「漂う雇用 下」は「若者苦境「もっと働きたい」」に、追加就労希望就業者という言葉が載っていました。
追加就労希望就業者とは、もっと長時間働きたいという人たちです。日本の直近の失業者は3%ですが、追加就労希望者も同程度います。
コロナ対策による緊急事態宣言で、飲食・サービス業が休業し、従業員が働くことができなかったからです。アメリカでは、追加就労希望者は広義の失業率に含まれるそうです。

記事には、職種間の求人倍率の差も出ています。一般事務職は低く、建築・土木技術者は5倍を超え、医療や福祉も高いです。資格や経験を必要とする専門職、さらに言うと体を動かす現場の仕事で、人手不足が目立ちます。
失業者がいる一方で、人手不足の業種があるのです。事務室内での事務職を憧れる人が多いのでしょうか、専門職の処遇が悪いのでしょうか、専門職を育てない教育が悪いのでしょうか。

高齢化先進国日本の経験を輸出

10月31日の朝日新聞に「老いる中国、挑む日本式介護 保険や人材の壁、進出に苦戦も」という記事が載っていました。

・・・高齢化が急速に進む中国で65歳以上の人口が1・9億人となり、日本の総人口を超えた。介護需要はますます高まる見通しだが、課題は未整備の介護保険と人材不足。一足先に日本でノウハウを蓄積した日系企業も進出するが、苦戦している・・・

詳しくは、原文を読んでいただくとして。アジア各国に先駆けて経済発展し、高齢化した日本の経験は、他国の見本となります。産業として輸出することも考えられます。

地方の物産を世界に売り込む

奥山雅之ほか著『グローカルビジネスのすすめ 地域の宝を世界80億人に届ける』(2021年、紫洲書院)を紹介します。概要は、アマゾンでの紹介、特に読者の書評(レビュー)をお読みいただくとして。

「海外に産品を売る」と聞くと、大企業が行っている商売と思いがちです。この本は、地方の物産、農産物や中小企業の製品を海外に売り込むことを書いた本です。
諸外国では地方の物産を海外に輸出しているのに、日本では国内市場が大きかったので、やってこなかったと指摘されています。
そうですね。明治時代からの戦前、そして戦後は、日本の産品を海外に輸出して儲けようという意識が国全体にあったようです。国内市場が大きくなかったからです。経済成長に成功する過程で、大企業や商社が輸出する構造が確立しました。他方で、地方の農産物や中小企業は国内市場で満足したようです。
「和僑会」、華僑の日本人版を作ろうという提言には、なるほどと思います。
インターネットや物流が発展して、海外から物を買うことも簡単になりました。ならば、日本各地の小さな企業も、海外に売り込むことは容易です。

近年の日本経済の停滞は、かつて以上に経済の国際化が進んでいるのに、日本がそれに乗り遅れていることが、一因です。経済成長に成功し、満足してしまったのです。日本人の留学生が減少していることも、「内向き」になったことを表しています。日本は、大学院教育と医学教育を、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など国際的な主要言語でなく、自国語でできる数少ない国です。それは喜ばしいことですが、外国に「他流試合」に行かない内弁慶をつくっているようです。
文化や政治の分野でも、国際社会で存在感を示せていません。日本の行政と官僚も、その一つでしょう。

個人で賃上げを求めない日本の社員

経済停滞の30年」の続きです。10月20日の朝日新聞13面の「置き去り、米と339万円差 424万円、日本の平均賃金」には、次のような指摘もあります。

・・・そもそも、春闘による団体交渉と関係ない労働者は、ちゃんと賃上げ交渉ができているのだろうか。
リクルートワークス研究所の調査では、入社後に個人で賃上げを求めたことがある人は日本では3割だが、米国では7割だった。「日本には忍耐を美徳とする企業風土がある。個人が賃上げを主張すると『空気を読まない強欲なやつ』とみられがち」と話すのは、連合総研の中村天江主幹研究員。だが、労組が弱体化し、個人の賃金交渉が根付かない現状では、労働者は賃金の決定に関与できず、受け身の姿勢から抜け出せない。「働き方が多様になるなか、個人のボイス(声)を届ける環境づくりが重要だ」と訴える・・・

日本人の忍耐という美徳、企業に処遇を委ねる「会社人間」、転職しにくい労働慣行が、負の機能を果たしています。