カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

日本の中間層

日本の経済発展によって生み出され、そして経済発展を支え、社会の安定をもたらした中間層。かつては「一億層中流」という言葉もありました。それが、この30年の間に崩れました。簡単にいうと、非正規労働者の増加によって、中間層が二分化されたのです。
それは、さまざまな問題を経済、社会、政治に引き起こしています。でも、中間層の重要性は、経済学の標準的な教科書には載っていないようです。

3月9日から日経新聞「やさしい経済学」で、田中聡一郎・駒沢大学准教授の「衰退する日本の中間層」が始まっています。第1回「分厚い中間層が重要な理由

経団連の存在感の低下

1月27日の日経新聞「私の履歴書」古賀信行・野村ホールディングス名誉顧問の「財界総本山」から。

・・・結局、副会長と審議員会議長をあわせ8年も経団連と関わった。改めて、経団連とは何だろうと思う。官僚組織がしっかりしている時代は、政策を実現する産業界のカウンターパートとして機能していた。個別業界ではなく、広く産業界の代表だった。

今は官の枠組みが大きく揺らぎ、相手側の経団連も存在意義を問われている。政策をきちんと提言できる組織になることが今こそ求められている、私はそう思う・・・

官庁エコノミストの縮小

1月18日の朝日新聞オピニオン欄、原真人・編集委員の「岸田政権の巨額予算 司令塔なき政策の矛盾と欺瞞」から。

・・・財政や金融政策は本来は理論やデータ分析の規律が働く分野だ。にもかかわらず、これほど矛盾や欺瞞に満ちた政策がまかり通るのはなぜか。政策決定に最低限の良識とまともな論理を回復させる必要がある。
かつてマクロ政策の総合司令塔として政府内や日銀との調整役を担ったのは経済企画庁(現内閣府)だった。官庁エコノミストと呼ばれる学者顔負けの専門家たちが集い、経済白書(現在の経済財政白書)に大きな国家構想を描いた。1947年に出た初の経済白書の筆者である都留重人、池田内閣の所得倍増計画にかかわった宮崎勇、のちに外相を務めた大来佐武郎。さらに金森久雄、香西泰、吉冨勝ら戦後を代表する著名エコノミストたちがひしめいていた。
経企庁は22年前、省庁再編で総理府などと統合し内閣府になる。男女共同参画や沖縄振興など諸部門を抱える巨大組織のなかでマクロ経済調整は一部門にすぎなくなった。次第に官庁エコノミストは重きをおかれなくなり、今や絶滅危惧種だ。
経企庁の物価局には50人規模が配置されていたが、再び物価に焦点があたる現在、内閣府の物価担当はわずか2人である。

旧経企庁OBで経済白書の執筆者だった小峰隆夫・大正大教授(75)は「官庁エコノミストの重要性は今も変わらない」と言う。「ビッグデータや行動経済学など最新の道具が増え、これを政策立案のために使いこなすスペシャリストが必要です」
とはいえ、それも結局は政権に都合のいいデータ集めに利用されるだけではないのか。小峰氏にその疑問をぶつけてみた。

――あなたがいま官庁エコノミストだったらおかしな政権方針を批判できますか?
「いや無理でしょう。私も財政はいつか破綻するのではないかと心配だし日銀の政策もどうかと思う点が多い。でも官僚は表だって時の政権の方針を批判できません」
どうやら問題の本質は官庁エコノミストの減少だけにあらず。政権が都合のいい結論を持ち出す意思決定のブラックボックス化、官僚たちが率直な意見をあげにくい風通しの悪さにこそ、理が通らぬ政策が横行する原因がある。ならば政権の良識に期待するより抜本的な制度改革が必要だろう。

小峰氏が提案するのは省庁再編に伴って廃止された「経済審議会」の復活である。学界や産業界、労組、消費者団体などから分科会も含め100人超の識者を集めた首相の諮問機関だ。首相が示す政策理念に沿って、計量モデルにも整合的で、かつ現実的な経済計画を4~5年ごとにまとめた。
「全会一致が原則だからかんかんがくがくの議論の末、結論はマイルドになった。でも、論理的に説明できない結論にはなりません」。これも一案かもしれない・・・

この記事は、朝日新聞デジタル版では「「決める岸田政権」政策迷走の裏に 官庁エコノミストの絶滅危惧状態」という題です。こちらの方が、わかりやすいですね。

安い日本の給料、管理職の給料

1月11日の日経新聞1面に「ファストリ、国内人件費15%増へ 年収最大4割上げ」が載っていました。記事に、外国比較が載っています。

・・・「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げる。パートやアルバイトの時給の引き上げも既に実施しており、国内の人件費は約15%増える見込み。ファストリは現在、欧米を中心に海外従業員のほうが年収が高い。国内で大幅に賃金を見直すことで、グローバルな水準に近づける狙いがある。国際的な人材獲得競争で劣後する日本企業の賃金制度に影響を与えそうだ。
ァストリ本社やユニクロなどで働く国内約8400人を対象に、年収を数%から約40%引き上げる。新入社員の初任給は月25万5千円から30万円に、入社1~2年目で就任することが多い新人店長は29万円から39万円になる・・・

・・・東京商工リサーチによると、上場企業3213社の21年度の平均年間給与は605万円で、そのうち900万円以上は110社にとどまる。ファストリの国内で働く従業員平均給与は959万円と国内小売業でも最高水準にある。ただ、国内の総合商社や外資系企業などに比べ見劣りは否めない。海外企業の賃金と比較しても低水準にある。
日本企業の賃金は国際的に低い。人材コンサルティングの米マーサーによると、マネジャー級の年収は22年7~9月期の平均レートの1ドル=135円で算出した場合、日本は22年12月時点で9万6374ドルで前年比10%減った。米国(21万9976ドル)に比べ約半分の水準で、中国に比べても低い・・・

1月13日の朝日新聞には「日本の社長、給料低すぎ?」が載っていました。
・・・日本の社長報酬は、米欧と比べるとかなり低い。
コンサルティングのHRガバナンス・リーダーズが、時価総額の大きい100社を対象に21年の実績を調べたところ、日本の社長の報酬(中央値)は1億8千万円だったのに対し、トップの米国は27億1千万円。日米の差は15倍と、前年の10倍から広がった。欧州は日米の中間で、ドイツで6億2千万円だった。
 差を生んでいる要因の一つが、報酬の決め方の違いだ。日本は経営実績などに応じて変動する報酬が50%にとどまり、米国(94%)やドイツ(72%)より低い・・・

工作機械大手、DMG森精機の森雅彦社長の話が載っています。
・・・上場企業は年間報酬が1億円以上の役員の氏名と金額を公表しなければならないが、このルールをなくし、「多くても少なくても明らかにした方がいい」と言う。
公表されるのをいやがり、報酬を1億円未満にとどめる社長が少なくない、とみるからだ。かつての自身もそうだった。報酬を9千万円台に抑えていた時期がある。横並びを重んじる日本社会で、目立つのは得策ではなかった。
37歳の時に父親から会社を受け継いだオーナー経営者。当時は東証1部上場で最年少の社長だった。
2016年のドイツ企業との経営統合が転機となった。報酬が高いドイツ側の幹部から「自分だけ突出した額をもらうのは格好がつかない」として、日本側の役員の報酬も引き上げるよう求められたという。
森氏は17年度に初めて報酬を公表した。1億4800万円だった。21年度は2億9800万円を手にした。報酬を上げると、有能な外国人経営者を迎え入れやすくなった。部長職など幹部の給与も上げた。
「その人の責任やがんばりを、もっと報酬に反映した方がいい。メリハリのない公平性が、この30年間の日本経済の停滞を招いたのではないか」・・・

アメリカの高級すし店、10万円も

12月25日の朝日新聞に「米国で高級すし店「OMAKASE」ブーム 客単価10万円も」が載っていました。詳しくは、記事を読んでいただくとして。

・・・米国で客単価が10万円を超える高級すし店が増えている。人気のカギを握るのが、あらかじめ決められたメニューが提供される「OMAKASE(おまかせ)」というシステム。近年、多くの店がこのシステムを採り入れ、人気を集めている。

12月上旬の金曜午後8時すぎ。中国・深圳出身のシンシアさん(27)はニューヨーク・マンハッタンにあるすし店「icca(一花)」を1人で訪れた。8人席のカウンターに座り、すし職人の鈴木一成さん(33)と向き合う。全員が席に着いた午後8時半、一斉に「おまかせ」の提供が始まった。
iccaには、食事のメニューは2種類のおまかせしかなく、アラカルトの料理はない。価格は400ドルと210ドル。シンシアさんは400ドル(約5万4千円)を選んだ。アワビや毛ガニ、十勝ハーブ牛などを使った一品料理のあと10貫の握り、そしてデザートへと続く。魚介類はすべて日本から輸入されたもの。開店してまだ約1年だが、10月にはミシュランの一つ星を獲得した・・・
・・・「おまかせ」は、以前から米国でも一部の店が採り入れていた。だが、本格的に普及したのはこの5年ほど。特に、400ドル~500ドルほどの店が乱立し、店によっては1千ドル近い価格まで高騰したのは最近だ。酒や消費税、チップを加えれば、日本円で10万円を超えることも。ここまで高級化した背景には、店側のメリットと、客側の理解がある・・・

・・・米民間調査会社IBISワールドによると、米国のすし店は13年の約1万6千軒から、22年に約2万4千軒と5割増加。28年には2万8千軒を超える見込みだ。市場規模は約20年で2・2倍に拡大した。松井教授は「カリフォルニアロールのようにのりを内側に巻いたり、マグロやアボカドをスパイシーな味付けで出したり、巻きずしを揚げたりするなど火を入れるアレンジも多い。さまざまなかたちのすしがあり、自分の入りやすいところからすしを覚える環境がある。その最高峰に『おまかせ』がある。米国の大都市には多くの富裕層がいて、高級化にもつながった」と指摘する・・・
・・・数十年前まではすしを提供する店の9割以上が日本人オーナーだったが、いまは1割以下とされる。米国ですしを学んだ職人も増えており、松井教授は「いまや日本食の中のすしではない。日本食とは別の独立したジャンルとしてすしが認識されている。経済的な理由、つまりもうかるので、投資家も目をつけ、高級すし店に積極的に投資している。高級路線は今後も進むだろう」と話す・・・