カテゴリーアーカイブ:社会

日本人は座りすぎ

2025年8月7日   岡本全勝

7月26日の日経新聞に「日本人は座りすぎ がんや認知症のリスク増大」が載っていました。

・・・あなたは1日何時間座っているだろうか。運動不足は気にしても、自分の座位時間を意識する人は多くない。座位時間の長さは様々な病気や不調のリスクをもたらす。座りすぎの健康への影響と改善策を紹介する。
スポーツ庁の調査によると、運動不足を感じている人は約78%に及ぶ。「健康のためには運動」と考える人は多いが、実は「座位行動」も健康を大きく左右する。座位行動とは、覚醒時に座ったり寝転んだりしているときのエネルギー消費量が1.5METs(メッツ、運動強度の国際指標)以下の行動を指す。
日本人は世界と比べ総座位時間が長い。2013年の国民健康・栄養調査によると、男性の38%、女性の33%が1日8時間以上座っていた・・・

ついている図では、1日当たり座っている時間は、日本とサウジアラビアは400分を超えます。スウェーデンやカナダは300分、アメリカやインドは200分くらいです。アメリカの倍ですね。
という私も、仕事は椅子に座ってパソコンを使っていることが多いので、日中はほとんど座りっぱなしです。

・・・座位と健康はどのように関係するのか。早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授は「様々なメタ解析で、座位行動により心血管疾患やうつ病、2型糖尿病、がん、認知症などのリスクが高まると報告されている」と指摘する。
座位リスクを下げるには、フィットネスクラブなどで運動するとよいと考えがちだが、そうでもないようだ。一般に運動はやや早歩きや軽い筋トレなど、3METs以上の中高強度の身体活動を指す。一方「1日の覚醒時間の行動割合をみた研究によると、中高強度の身体活動は3〜8%に過ぎず、大半は座位行動と3METs未満の低強度の身体活動の時間だとわかった」と東京医科大学公衆衛生学分野の井上茂主任教授は説明する・・・

・・・面白いデータもある。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の天笠志保さんの研究によると「地域や年代にかかわらず、女性は低強度の身体活動が多く、その結果1日に占める座位行動の時間が男性より1割も少なかった」。井上さんは「女性の方が家事などでこまめに動く機会が多いためではないか」と推察する・・・
・・・在宅ワークの普及も、座位時間が増える要因だ。「通勤や通学では意識せずに低強度身体活動を増やす効用がある」(岡さん)。通勤中は立つ、買い物は車を使わず歩く、食後はすぐに後片付けに立つなど、日常生活で立ったり歩いたりのルーティンを組み込むことが大切だという・・・

「的」と「の」、日本語と中国語での使い方

2025年8月6日   岡本全勝

日経新聞土曜日連載、阿辻哲次さんの「漢字そぞろ歩き」、7月26日は「中国語に交じる平仮名「の」の謎」でした。

・・・1990年代半ば、とある業務で何人かと中国へ出かけ、最初の用務先である河南省の省都鄭州についた時のことである。
夕方ホテルにつき、荷物を置いて、夕食にいい店を物色しながら大きな通りを歩いていると、同行の一人が大声で叫んだ。
「ほら、あそこ! 『大阪の夜』って書いてある!」
彼が指さす方を眺めると、大きな看板に金文字の行書体で「大阪の夜」と書かれていた。
鄭州でなぜ「大阪」なのかも不思議だったが、もっと驚いたのは、その看板にひらがなの「の」が書かれていたことである・・・

現在の中国、香港、台湾では、街中の看板やポスターにひらがなの「の」が氾濫しているそうです。
なぜ「の」が使われるか。日本語が格好良いと思われていること、「的」より書きやすいようです。発音は「的」を使うとのこと。

もう一つ勉強になったのは、日本語での「的」、現実的とか社会的の「的」です。
これは、英語のromanticなどにある-ticを音訳したのだそうで、中国にはない使い方とのこと。へえ。

日本人女性と韓国人男性の結婚

2025年8月2日   岡本全勝

7月15日の日経新聞に「「日本女性×韓国男性」に結婚熱 韓流文化で接近、ネットで出会い」が載っていました。

・・・日本人女性と韓国人男性の結婚が増えている。日本人女性を引き寄せるのは高まった韓国の経済力とK-POPアイドルなどの韓流文化だ。日韓カップルの日常をつづるSNS投稿があふれ、専用の結婚相談所も登場した。歴史認識を巡り国家間の関係は不安定になりがちだが、日韓カップルは草の根で愛を深めている・・・

韓国統計庁によると、2024年の日本人女性と韓国人男性の婚姻件数は前年比40%増の1176件。韓国人女性と日本人男性の組み合わせは147件で、10年前の5分の1だそうです。
日本人女性は「韓国人男性は家庭的で愛情表現が豊か」と言い、韓国人男性は「日本人女性は礼儀正しいし料理好きが多い」と言っています。

コミュニティの再生を

2025年7月29日   岡本全勝

7月12日の朝日新聞読書欄、饗庭伸・東京都立大学教授の「コミュニティの再生 豊かで魅力的な資源へ生かす道」から。

・・・コミュニティは呪文のような言葉である。社会学の専門用語だったこの言葉が人々の口に上るようになってから約50年たつが、「~センター」や「~デザイン」など、色々な言葉とくっつきながら、この言葉はちょっとよい世界に人々を導いてきた。そしてそこに「再生」がつくと、「なんかやってみようか」と人々の背中を押す実践的な言葉になる。
人々が豊かな暮らしを送るために必要な資源を調達する場が都市である。そこで発達した調達の仕組みが政府や市場であり、コミュニティもその一つ。それは資源が政府や市場では調達できないときに期待されて登場する。
その現状は、はっきり言ってぼろぼろである。コロナ禍の時にも役に立たなかった。アベノマスクはコミュニティではなく郵便を使って分配されたし、怪しい自警団に成り果てたコミュニティもある。しかし、まだ使える骨組みは残っており、何よりもこの言葉には、人々を明るく前に向かわせる力がある。だから「コミュニティの再生」なのだ・・・

続いて、関係図書の紹介が載っています。原文をお読みください。

標準世帯は「親子3人+1匹」

2025年7月25日   岡本全勝

7月7日の日経新聞に「標準世帯は「親子3人+1匹」」が載っていました。

・・・犬と猫の存在感がかつてないほど高まっている。飼育数は子どもの人口を上回り、人工知能(AI)を活用した交流ツールや、体調管理のための高級サプリメントが登場。社会保障費の削減に資するとの研究もあり、2050年の家族像はペット抜きには語れないかもしれない・・・

・・・一般社団法人ペットフード協会によると、24年の犬と猫の飼育数は計約1595万匹。数だけでいえば、15歳未満の子ども(約1383万人)を上回る。住環境の関係で犬は減少傾向だが、猫人気は底堅いという。
国立社会保障・人口問題研究所の推計で、50年の子どもは約1040万人。世帯数などの推計をベースに、世帯あたりの平均飼育頭数や飼育率が現在のままと試算すると、犬と猫は約1390万匹。現在よりさらに差が広がる・・・
・・・矢野経済研究所(東京・中野)によると、23年度のペット関連市場は1兆8629億円と、過去10年間で約1.3倍に。阿部保奈美研究員は「1匹あたりにかける金額の増加や健康志向の高まりが要因」と話し、このまま成長が続けば、27年ごろに市場規模は2兆円を超える。

犬や猫のライバル候補も登場している。ロボットだ。
GROOVE X社(東京・中央)が開発したLOVOT(らぼっと)は、オフィスや介護施設など1000法人超に導入された。体温は犬や猫に近い38度前後。人を識別し、抱っこをせがむ姿は生き物のようだ。
故障すれば"専用病院"で治療し、壊れても記録を新しいモデルに移植できる。住環境やアレルギーの関係で動物を飼えない人から歓迎されるほか、犬や猫との死別を経験し「もうつらい思いはしたくない」とLOVOTを選ぶ人も多いという。

新たな家族となりつつあるペットが社会に与える影響について、研究も緒に就いている。
25年、国際学術誌で発表された英国の研究では、犬や猫の飼育はウェルビーイング(心身の健康と幸福)にプラスと指摘。金銭換算すると年収約1300万円増に匹敵し、結婚と同等の価値があるという。
東京都健康長寿医療センターによると、犬を飼う高齢者は認知症の発症リスクが約4割、心身の機能が衰えるフレイル(虚弱)のリスクが約2割低かった。犬や猫などペットの飼い主の介護保険サービス利用費は、飼っていない人の約半分だった。
研究を主導した同センターの谷口優協力研究員は、「ペットを飼う人は社会とのつながりを持ちやすい。ペットを介した家族や近所との交流が続けば、見守りや家事手伝いなど公的サービスに頼らない援助が期待できる」と分析する。
「かわいい」だけではないペットの潜在力は、人間中心の社会のあり方の見直しを迫るかもしれない・・・

山田昌弘・中央大教授の発言
・・・日本でペットが「家族の一員」として扱われ始めたのは1990年代ごろからだ。家畜の一種だったペットが、固有名を持ったかけがえのない存在としてみなされるようになった。
背景には社会構造の変化がある。離婚や単身世帯、高齢者の一人暮らしが珍しくなくなり、家族がいない人や、いたとしても不満を感じる人が増えた。家族が取り換え可能になった今、ペットが「理想の家族」の投影先になっている。
人は家族に「かけがえのなさ」と「自分らしさ」を求めている。両方を与えてくれるのがペットだ。人間は裏切るが、ペットは裏切らない。自分が世話をしなければ死んでしまうペットとは、損得勘定を超えた絆で結ばれていると信じることができる。友達や家族の前では気を使って言えないことも、ペットの前では素の自分でいられる・・・