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社会

料亭もレストラン

7月28日の朝日新聞に「老舗料亭なだ万、アサヒが売却へ 外食事業から撤退」という記事が載っていました。そこに、次のような文章があります。
・・・なだ万は1830年の創業。レストランを国内で25店舗、海外で4店舗運営するほか、総菜や弁当などを扱う店も経営している・・・

え~、料亭が出している店を「レストラン」と呼ぶのか。料亭らしく、料理店とか料亭とかほかの表現はないのかなあ。
でも、なだ万のホームページを見たら、自らレストランと名乗っていました。店主や女将が店先で「ようこそ、うちのレストランへ」と言わはると、違和感ありますわ。

ウィキペディアによると、「飲食店の一種であるが、統計上などでは専門料理店(料亭、ラーメン店、焼肉店など)はレストランに含まれず別の区分になっている」とあります。出典を当たると、日本標準産業分類です。

と書いていたら、なだ万の新聞広告を見つけました。そこには、レストランという言葉とともに「トップシェフ」という言葉が出てきます。料理長という言葉も使われていますが。

東大、後進国の表れ

7月20日の朝日新聞オピニオン欄「東大、イメージとリアル」、尾原宏之・甲南大学教授の発言から。

・・・明治時代から今に至るまで、「反・東大」の声が一部で上げられてきました。日本社会で東大がそれだけ特別な地位を占めてきたからです。ある意味で「後進国」性の表れといえます。
米国にはハーバードのようなトップレベルの大学が複数ある。高等教育に一定の多様性があるのです。一方で、東大出身のロシア・東欧研究者から「モスクワ大と東大は似ている」と聞いたことがあります。「後進国」が近代化のための人材育成機関として最高の大学をつくり、序列がつけられたということでしょう。

そこで重視されたのは外国語や数学などです。東大型の人材は、今でいえば5教科7科目が満遍なくできることが前提となっています。どんな分野でも結果を出せ、何にでもなれる万能型・バランス型の人間こそ、近代国家のエリートとしてふさわしいという価値観があったわけです・・・

・・・東大は官、中央、エリートを体現する存在でした。国家のために貢献する人材の育成という建前が、学歴の価値を維持してきたといえます。
東大は日本の近代化のためにつくられましたが、その役割は過去のものです。にもかかわらず、東大を頂点とする秩序は残っています。日本の高等教育が近代化モデルや「後進国」性から抜け出せなかった、ということでしょう。
現代社会の課題解決に必要なのは、ペーパーテストで満遍なく高得点が取れる人材だけではないはずです。「東大的なもの」とは異なる教育を模索した歴史にも学ぶ必要があると思います・・・

職種が分からない採用2

職種が分からない採用」の続きにもなります。「東京海上・残酷日記」を教えてもらいました。
京都大学経済学部を卒業し、2005年4月1日に東京海上日動火災保険へ入社した社員が出世に挫折し、再起を誓って転職するまでの記録です。実名ではないのですが、それに近いようなので、作り話ではないと思います。

世間からはうらやましがられる東京海上火災の社員ですが、実情を聞くと外から想像することとは異なるのですね。なるほどと思うことがあります。興味深い経験談、内部から見た大企業の実態がたくさん掲載されていますが、ここでは表題に関する2つを紹介します。すべてを読もうとすると、かなりの時間が必要です。
配属ガチャについては、「新入社員の配属に関する考察
3年で転職を考える、「損保社員の市場価値

「なにを考えられるか」問う大学入試

7月16日の日経新聞夕刊、後藤健夫さんの「海外有名大のタフな入試 「なにを考えられるか」問う」から。
・・・『東大生のジレンマ エリートと最高学府の変容』(中村正史著)が出版されて1年がたつ。この本では、東京大の学生の卒業後の進路を取り上げており、起業家が増えていることに注目している。そもそも東京大法学部などは官吏養成のための大学であったが、いまや官僚志望者は激減。外資や起業が増えている。いまの官僚の仕事や報酬は、優秀な人材に魅力的なものではないのかもしれない。
この10年以上にわたる大学入試改革は、こうした学生たちの将来を見据えた教育ニーズに合っているだろうか。

そういえば、10年前に子どもが中学受験の準備を始めた団塊ジュニアの保護者を取材したことがある。「小学校の高学年から良い私立中学に入るために受験勉強を始めて以来、就職するまでずっと競争のために躍起になって勉強してきたけれど、いま大企業で仕事に就くと、一連の受験勉強はほとんど役に立っていない感じがする」と嘆いていた。受験最適化の勉強を続けてきて、学ぶ楽しさや価値を見いだせなかったのだろう・・・

・・・この大学入試改革の過程で、学力試験以外の入試方式を導入したいと当時の京都大の総長から個人的に相談を受けていた。そんな折、いま一歩、入試を変える気になれない担当副学長があるところに呼ばれて、次のようなことを問われた。
「東大や京大の選抜試験は世界一難しいかもしれない。でも、米ハーバード大や米マサチューセッツ工科大(MIT)と比べて、卒業生の活躍が乏しいのではないか。なにかがおかしくないか」・・・

・・・海外の有名大学等の入試問題を見れば、知識や技能だけを問わない。「なにを知っているか」ではなく「なにを考えられるか」を問うている。そして、これまでに多くの経験から得た知識や自信を元に、無理難題を課されても粘り強く「問い」に向き合う耐性を求められている。さらに明解に論理的に、しかも創造性豊かに解答することが求められている。とてもタフな出題だ。
東大や京大など、難関大学と呼ばれる大学の選抜試験はタフな学生を育てられるだろうか。まだまだ変える余地があるのではないだろうか・・・

天野馨南子著『まちがいだらけの少子化対策』

天野馨南子著『まちがいだらけの少子化対策: 激減する婚姻数になぜ向き合わないのか』(2024年、金融財政事情研究会)を紹介します。

社会を維持できなくなるような少子化が進んでいます。政府は、子ども子育て支援に力を入れています。子どもを育てやすい社会をつくるためです。これはこれで必要なのですが、それでは少子化は止まらないというのが、著者の主張です。それを、数字で説明します。
「夫婦が子どもを持たなくなっている」と言われますが、夫婦当たりの出生数は微減です。主たる原因は、婚姻数が激減していることです。では、若者は結婚したくないのか。いえ、若い男女の結婚願望は昔とそれほど変わらないのです。子どもの数を増やすには、未婚対策が必要です。

題名にあるように「まちがいだらけの」政策を、事実を基に説明しています。お勧めです。天野先生には、市町村アカデミーの研修動画にも、登場してもらっています。