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社会

ムスリムも日本で快適

12月12日の朝日新聞夕刊に「ムスリムも、日本で快食 ハラル対応・モスク掲載、アプリ人気」が載っていました。

・・・東南アジアや中東のムスリムの間で、急速に広まっているアプリがある。ハラルフード(イスラム教の教えで食べることが許された食べ物)に対応した飲食店やモスクの情報を掲載する「ハラルナビ」。運営するのは日本人で、SNS発信を通じて急速に認知度が高まっている。来日するムスリムの情報交換の場としても使われている。

 今年はじめ、インスタグラムに投稿された、日本の和牛料理店を紹介するショート動画が、1カ月あまりで100万回以上表示された。反応したのはムスリムたち。動画は、アプリの紹介を兼ねてハラルナビ代表取締役の本宮郁士さん(25)が投稿したものだった。
ハラルナビは、地図上にハラル対応の飲食店やモスクなどの情報を掲載する無料アプリ。ユーザー自身が食材情報などを登録することもできる。
2014年にマレーシアで飲食店などの事業を手がけていた実業家の恵島良太郎さん(48)が開発し、現在の登録数は13カ国で8千件ほど。うち日本では約3千件が登録されている・・・

・・・生活情報のプラットフォームとしての役割が強みだと、本宮さんは分析する。アプリにはモスクや百貨店内などにある祈祷施設も掲載。祈祷室を一度に利用できる人数や「実際には閉まっていた」といった詳しい情報を、ユーザーが加えていく。
「ハラルや祈りはムスリムの重要な生活情報なのに、これまでは多言語・国内横断のツールがなかった」と、本宮さんは話す。「電車で何駅も離れた遠くにしかないと思っていた祈祷室が近場で見つけられるようになった」といった反応も寄せられたという。

大学時代、本宮さんもマレーシアに1年間留学した経験がある。ムスリムの友人は「食事に困るから」と、日本への旅行をためらっていた。「日本に行ったのに、(ハラル表記のある)ケバブばかり食べていた」という体験も聞いた。旅行先としての日本は人気が高いのに、ハラル対応が妨げになっていた。
SNSのフォロワーは160万人を超え、本宮さん自身がハラルに関する「インフルエンサー」のような存在になった。

ムスリムの多いマレーシアとインドネシアからの23年の訪日客数は約84万人で10年前から倍増した(日本政府観光局)。店田廣文・早稲田大学名誉教授らの調査によると、23年末現在、日本に住むムスリム人口は35万人と推計される・・・

胃がんは臓器別で第4位に

12月11日の日経新聞夕刊連載、中川恵一・東京大学特任教授の「がん社会を診る」は「膵臓がん死亡、胃がん抜く」でした。
体の病気は、社会の変化によって変化するのですね。

・・・これまで日本のがんの代表は胃がんでした。私が生まれた1960年当時、男性のがん死亡の実に6割以上が胃がんによるものでした。しかし今、胃がんは減少の一途をたどっています。
胃がんの原因のほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)の感染です。ピロリ菌は免疫力が完成する前の5歳くらいまでに感染し、その後生涯にわたり胃のなかに住み続けます・・・

・・・欧米では日本に先立ち冷蔵庫や上水道が普及したことで、ピロリ菌の感染率が低下、胃がんは「希少がん」になっています。かつて日本人のピロリ菌感染率は8割以上でしたが、20〜30代で1割、10代では5%程度まで下がっています。欧米には遅れましたが、わが国でも胃がんは「絶滅危惧種」になっています。
臓器別の死亡数でも、かつて首位だった胃がんは第4位にまで順位を下げています。最新の「人口動態統計」によると、2023年のがん死亡のトップは肺がん(約7万6千人)、2位は大腸がん(約5万3千人、罹患数は約14万8千人で最多)、第3位が膵臓がん(4万人強)です。
膵臓がんと胃がんの順位が入れ替わったのは印象的です。がんは時代や社会とともに姿を変える病気です・・・

携帯電話2億2千万回線

11月28日の読売新聞に「岐路NTT 全国一律 負担重く 固定電話 膨らむ赤字」が載っていました。

・・・日本で電話サービスが始まったのは1890年。米国の科学者グラハム・ベルが電話を発明してから14年後だった。通話区間は東京―横浜間のみで当初の加入数は197回線だった。99年に東京―大阪間の長距離通話が可能となった。
電話の種類も変遷を遂げた。1933年にダイヤル式の黒電話が、69年にプッシュ式のプッシュホンが登場した。その後、留守番電話やファクスの機能が加わり性能が向上。総務省によると、固定電話の契約数は1997年度に6285万回線でピークを迎えた。

携帯電話サービスが1987年に始まると急速に普及し、2000年には携帯電話の契約数が固定電話を上回った。23年度の携帯電話の契約数は2億2192万回線で、固定電話の16倍にあたる。固定電話は減少し続けており、NTTは35年頃に500万回線になると見込む・・・

街頭アンケートで個人情報を入手

11月21日の朝日新聞社会面に「街頭アンケート、個人情報入手 6600人分、契約者探しに悪用か 住宅ローン不正申請させ詐取容疑、逮捕」が載っていました。

・・・金融機関から住宅ローンの融資金約2900万円をだまし取ったとして、警視庁は、自営業の高根沢直人容疑者(42)=東京都杉並区=ら男3人を詐欺容疑で逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。
警視庁は3人が2019年4月~24年5月、約120人に住宅ローンを契約させ、計約33億8千万円をだまし取ったとみている。捜査関係者によると、3人は他の者と共謀して22年12月~23年2月、不動産投資目的なのに居住目的と偽り、20代男性に住宅ローンを申請させ、神奈川県内の金融機関から2890万円をだまし取った疑いがある。

3人は約120人に住宅ローンを契約させたとされる。なぜ、ここまで多くの契約者を募ることができたのか。捜査関係者によると、警視庁が押収した「名簿」には、約6600人分の個人情報が記載されていた。名簿の個人情報は、街頭アンケートで集められていたという。
「税金は高いと感じますか」「年金対策はしていますか」――。
そんな内容の街頭アンケートが2020~24年、東京・秋葉原や台場であった。声をかけられた人はその場で名前や住所、連絡先のほか、勤務先や収入、持ち家の有無まで記入するよう求められたという。
その後、3人は電話や面会で「みんなやっているから大丈夫」などと住宅ローン契約を持ちかけていた。拒否されると、「何度も説明しているのに、業務妨害だ」などと言ったという。契約者の中には、警視庁の調べに「押しが強くて断れなかった」と話す人もいたという・・・

幸福度の底は48.3歳

11月2日の日経新聞に「「幸福度の底」は48.3歳 日本も」が載っていました。いろいろな要因が分析されています。ここでは、その一部を紹介します。

・・・「48.3歳」が近年注目されている。世界各国で年齢と幸福度の関係を調べた研究で、48歳前後が幸福の底になることが分かった。日本では就職氷河期世代に当たるが、幸福度はやはり低いのだろうか。

米ダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授が145カ国のデータから幸福度と年齢の関係を分析したところ、幸福度はU字型の曲線で推移し谷底の平均年齢は48.3歳だった。
内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書2024」からも、40〜64歳のミドル層の生活満足度の低さが明らかだ。20年は40〜64歳と39歳以下の差は0.03だったが、24年には0.32に広がった。ミドル男性は「家計と資産」「子育てのしやすさ」の満足度が23年から低下した。

子育てが大変なのだろうか。「残酷すぎる幸せとお金の経済学」を書いた拓殖大学教授の佐藤一磨さんによれば、13歳以上の子がいると既婚女性の生活満足度は低くなる。子宝とはいえ、子どもも数が多いと負に作用する。お金がかかることや夫婦関係の不満が背景にある。
20年国勢調査では当時40代だった夫婦の8割が子持ちだ。人口動態調査を遡って父母の平均第1子出産年齢を調べると、現在48歳の女性は2005年前後に29歳で、男性は07年前後に31歳で、第1子が産まれていた。子どもはいま17〜19歳で、母親の幸福度が下がる年代と重なる。
この分析では父親のデータはないが、一般に男性の方が幸福度は低く出る。中でも35〜49歳の子持ち男性の幸福度は2000〜10年代に低下したという。「共働き増加で家事・育児負担が男性にものしかかるようになった。男性が大黒柱という考えもまだあり板挟みになっている」と佐藤さんは分析する。
一方で、配偶者の有無別で見ると最も幸福度が低いのは独身男性だ。20年の国勢調査によれば現在48歳の男性の未婚率は調査時点で27%。10歳上の21%から増加していることも見逃せない・・・

・・・苦労を重ねてきた世代に希望はないのだろうか。
幸福学を研究する慶応義塾大学教授の前野隆司さんによれば、勉強のように自分を成長させる活動は幸福度を上げる。意外なことに、学ぶ人の幸福度は旅行や芸術鑑賞に熱中する人と同じくらい高いという。前野さんはさらに高齢期に向けた幸福の条件として、複数の人間的なつながりを持っていることも挙げた。
内閣府の20年度の国際比較調査では、日本の単身高齢者は調査した4カ国中「人との会話がほとんどない」が最多の25%だった。生きがいを「あまり感じていない」「まったく感じていない」も計29%で最も多く、孤独・孤立対策が政策課題にもなっている・・・